FUKI インタビュー「ありったけの“キミへ”の想い」

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インタビューの席に着いたFUKIは、すごくいい顔をしていた。その表情の明るさが、デビューから今日までの約4ヶ月が充実した時間だったことを物語っているようだった。

「『キミじゃなきゃ』のミュージックビデオを撮影したのが去年の夏が、もう遠い昔のようでもあって……。何だか不思議な気分です」

豊かな奥行き。繊細な表現力。そして何より、リスナーの耳にスッと入り込んでくるたおやかさと、いつもそばにいる友達のような親しみ易さがFUKIの歌声にはある。

それなのに「いまも昔も、人に想いを伝えるのが苦手なんです」と、彼女は苦笑を浮かべる。

「でもTwitterで『キミじゃなきゃ』を褒めてくれているツイートを見つけた時は、思わずリプを返しちゃいました(笑)。年下のリスナーさんも多いみたいだから、『私がしっかりとリードしなくちゃ』とか、ちょっとお姉さん気分にもなってみたりして(笑)。他にも『FUKIを聴きながら受験勉強を頑張っています』とか、いろいろな反応が届いてうれしいですね」

2015年10月、FUKIは「キミじゃなきゃ」でデビューした。誰よりも愛しい、しかしもう戻ってはこない“キミ”への想いを歌った「キミじゃなきゃ」に、彼女はいまデビューの時とはまた違った手応えを感じているという。

「最近になって、より一層、曲が自分のものになってきたような気がします。ライブで繰り返し歌ったいまの方が、より歌詞を咀嚼して、感情を込めて歌えるようになったから」

そんな「キミじゃなきゃ」、そして昨年12月にリリースされた「キミがスキ」のwinter versionに、新曲とカバー曲で構成されたコンセプトアルバム『キミへ ~LOVE SONG COLLECTION~』がリリースされる。

「日々いろいろなタイプの曲を書いているけれど、やっぱり自分にとって一番身近で、自然な気持ちで書けるのはラブソング。だから自然と恋愛の短編集みたいなアルバムになりました」

「キミへ」と「カタオモイ」の歌詞は、FUKIのある体験から生まれた。

「『カタオモイ』が生まれたのは去年の2月頃、つまりデビュー前のことでした。片思いに白黒つけられない想いから書いたのですが、そこから一年たった先日、その相手から連絡がきて。『いまさら遅いよ!』という悔しさから、号泣しながら書いたのが『キミへ』でした。レコーディングでも感情が入り過ぎて、泣きそうになりながら歌っていました」

明るくライトな曲を歌いたくて書いたという「LOVE SONG」には、FUKIからリスナーへの挨拶が込められている。

「リスナーと私の距離を付き合いはじめの恋人に見立てた、自己紹介みたいな歌。ライブでキーボードをお願いしているnawataさんがトラックを作ってくださって、私とEIGOさんで歌詞を書きました」

そしてカバー曲「はじめてのチュウ」は、FUKIが子供の頃から愛聴していたお気に入りの一曲である。

「アニメ『キテレツ大百科』で知りました。海辺で歌うようなイメージで、原曲の持つかわいさよりも、アレンジもボーカルも切ないテイストに寄せてみました」

これまでFUKIが歌詞やその断片を書き綴ったノートは、すでに20冊を超えているのだという。

「頭に浮かんだ言葉をワーッと書いて、後から整理します。街中や電車でメロディが浮かぶこともあるけれど、ふわっと浮かんだものは最後までふわっとしたまま。その逆に今回のアルバムは『どうしても書かずにはいられない』という、強いモチベーションから生まれた曲だけしか入っていません」

リアルな体験と、シンガーとしての決意とルーツが詰め込まれたこのコンセプトアルバムは、現時点までのFUKIの現在・過去・未来を編んだアンソロジーとも言える。

「インタビューだけじゃなく、好きな相手に想いを直接伝えるのもあまり得意じゃない。でも曲なら全部言えるし、全部歌える。私には音楽があってよかった。いま心からそう思っています」

ちょっと内気な彼女が歌う、ありったけの“キミへ”の想い。この“キミ”が指すのは、いつかの切なさであり、大切な音楽であり、これから出会うリスナー ── つまりあなたと、あなたの恋心 ── のことだ。

「今日はこの曲がフィットするけど、数ヶ月後にはまた違う曲がフィットする。そんな短編集になったと思います。寄り添うように、ずっと聴いてもらえたらうれしいですね」

文 / 内田正樹



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