【インタビュー】ポップのDNAを受け継ぐコレサワ「そばに行きたいけど、行くことはできないから──」
シンガー・ソングライターのコレサワが12月16日にリリースする2nd EP『女子、ジョーキョー。』をぜひ聴いてみて欲しい。恋をしたり、東京に夢をみたり、これからも続くらしい人生というものと真剣に向き合ってみたり── コロコロと変わりやすい女子の心模様がカラフルに描かれた5曲入りの作品だ。前作「君のバンド」で一部の音楽ファンに印象づけたあまりにもポップでキュートな曲調と、クマのキャラクター「れ子ちゃん」という不思議なヴィジュアルなのにミステリアスな雰囲気ではなく共感を与えてしまう、あくまで「いち女子目線」を持つ親近感のある歌詞は、ここで見事に開花した。
今回BARKSでは、初めてインタビューを行った。ポップ・ミュージックとは決して“人を選ばない”ことをもう熟知している彼女のまだ短い半生の音楽歴について、毎秒アーティストが現れては消えていく音楽シーンに向けた個性的かつ戦略的なアイデアのこと、そしてリスナーに寄せる純粋な願いを、愛嬌たっぷりに語ってくれたコレサワ。この語録と共に、何はともあれコレサワの音楽に触れて欲しい。その扉は驚くほど開かれている。
◆コレサワ 関連画像
取材・文・撮影=RYOKO SAKAI
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■「なんで伝わらないんだー! みんなのセンスが悪いんだ!」は、違う
コレサワ:あぁ、嬉しいです……。
── ポップミュージックが好きな人はもちろん、ロックやパンクが好きな人、もしくは音楽をあまり聴かない人も非常に入っていきやすい音楽を作られる方だと思っていて。ご自分の音楽的な趣味もポップなものですか?
コレサワ:そうですね。小さい頃はテレビで流れてるような、向こうから来てくれるくらいの音楽しか聴いてこなかったですね。モー娘さんが好きになった流れでミニモニが好きになり。次に中島美嘉さん、大塚愛さん、YUIさんを好きになって、そこからスピッツさんやBUMP OF CHICKENさんのようなバンドの音楽も聴くようになりました。
──じゃあ、ご家族のどなたかが音楽をしてたり、洋楽が流れてるような環境ではなかったんですね。
コレサワ:全然ですね。お母さんはカラオケが好きだったのでよく連れて行かれたくらいで。歌うのは好きだったけど音楽を追求しようっていう興味はなかったです。一応、ピアノとかダンスとか、音楽に関する習い事をさせてもらってたので、音と遊ぶみたいなことは身近にあったんですけど。だから音楽は特技と言うよりも、「ごはんを食べる」「お風呂に入る」「音楽をする」くらい日常の中で普通にすることでした。
── そこから、自分で曲を作るようになったのはなぜ? 高校の時にオーディション番組(テレビ朝日系『ストリートファイターズ』)に出てるんですよね?
コレサワ:高校に歌の上手なライバルの女の子がいたんですけど、その子がオリジナルを作ってきたことが悔しくって、ちょうどそのタイミングにオーディションのことを知ったんです。応募するために曲を初めて作ったんですよ、「未来なんて」っていうめっちゃダサい曲なんですけど(笑)。夜、大阪の茨木駅っていう駅で、横には友達がいるっていう環境でギターを弾きながら作りました。
── 横に友達がいる状態で? 私は、隣に友達がいたら原稿書けないですよ。
コレサワ:(笑)その場で作りました。小さい頃から歌うことは好きだったんですけど、歌いたい歌がなかったからいつも自分で適当にメロディを作ってたんです。そう言えば、それを家の洗面台の鏡の前で歌うことが日課でしたね。
── ということは、その頃から人に見られる自分の姿を意識してたのかな。
コレサワ:あ、そうかもしれないです。私は勉強もできなかったし、大人が褒めてくれたり友達に「すごい」って言われることが歌しかなかったから。
──その「未来なんて」をオーディションに応募したら、決勝戦まで進んだんですよね。凄い。
コレサワ:きっと運がよかったんですね。
──いや、むしろポップミュージックというものがとても身になってたんだと思いますよ。前作の「君のバンド」を初めて聴いた時から、人に聴かれるための音楽を作ってることが一発でわかった。ヴィジュアルにしてる「れ子ちゃん」もかわいいクマだし、ゆるい雰囲気を出してるけど、ポップミュージックを作ることに対してなんて肝が座ってるんだろう、ってめちゃくちゃカッコいいと思ったんですよ。
コレサワ:肝、座ってますかねぇ……(笑)。ありがとうございます。
── ウチボリシンペさんの「れ子ちゃん」のイラストも、いくらでも複雑に難しく描くこともできそうなのに、みんながとっつきやすいイラストに落とし込んでることは、コレサワさんの歌と共通してますよね。
── でも思うのが、れ子ちゃんのイメージが付き過ぎると怖くないですか?
コレサワ:今は本当にいろんな個性のアーティストがいるから、「あのクマの子ね~」くらい極端でもいいからとりあえず名前を広めたかったんです。それに、イメージは付けば付くほど壊した時が面白いと思ってるので、別に貼り付いてしまってもよくって。その結果みんなに知ってもらえれば、それ以上に有り難いことはないと思ってます。
── そうですね。ただ、今は実際のコレサワさんとシンクロしてるからいいけど、たとえば10年後に凄くシリアスな曲を書きたくなったらどうするんだろう……って、これも余計なお世話だな。
コレサワ:ははは(笑)。でも、シリアスなことはもうやってしまったんですよね。10代は、いかにもアーティスティックでちょっとツンツンしてる表現のほうがカッコいいと思って実際そういう音楽を作ったけど、なんか響いてないなって感じて。自分も疲れちゃったし、飾らないで素直にやろうと思うようになったのが「君のバンド」くらいからなんです。
── アーティスティックなものって、作り手にとっては楽しいけど、それよりも人に伝わることのほうに意味を見出したんですね。
コレサワ:そうですね。そういう曲ってひとりで歌ってる時は楽しいけど、みんなに伝わらない時に「なんで伝わらないんだー! みんなのセンスが悪いんだ!」みたいになるのは違うと思ったし、共感してもらえたほうが私は嬉しいです。
◆インタビュー(2)へ
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