【インタビュー】シャインダウン「俺ではなく、曲そのものに注目して欲しいんだ」
去る8月31日、東京は渋谷・TSUTAYA O-EASTにて、9mm Parabellum Bulletをサポート・アクトに迎えながらの一夜限りの来日公演を行なったシャインダウン。まだ発売前だった最新アルバム『THREAT TO SURVIVAL(スレット・トゥ・サヴァイヴァル)』からの先行披露となった「Asking For It」で幕を開けたライヴは、彼らの楽曲の良さとライヴ・バンドとしての屈強さを強烈に印象づけるものとなり、この機会を待ち焦がれてきたファンは、初めてライヴで耳にする愛着深い曲たちの応酬に、大合唱の連続で応えていた。このバンドが大切にプレイし続けてきたLYNYRD SKYNYRDの「Simple Man」のカヴァーが演奏された際にも、それは同じことだった。
◆シャインダウン画像
そんな素晴らしい場面を目撃することになる数時間前、サウンドチェックの合間を縫って、バンドのフロントマンであるブレント・スミスと、ドラマーのバリー・カーチがインタビューに応えてくれた。話の中心は、もちろんそれから半月と少々を経てリリースに至った最新アルバムに関すること。実はこのアルバムには、4人の異なったプロデューサーと、さらに多くのミキシング・エンジニアの名前がクレジットされている。そうしたレコーディング方法を選んだ理由について、ブレントは次のように語っている。
「俺たちは今回、4人のプロデューサー、さらには8人ものミキサーと作業をしてきた。過去の俺たちは、ひとつのスタジオに集合して1人のプロデューサーのもとで一緒に作業していたけども、今回はみんなで目的をもってバラけたんだ。たとえばバリーがあるスタジオであるプロデューサーと作業している時に、エリックは他のスタジオで別のプロデューサーと何かしている、というふうにね。結果、俺はふたたびこのバンドのファンになったよ。なにしろスタジオに戻ってプレイバックを聴くたびに、改めて各々のプレイヤーとしての素晴らしさに気付かされたからね。俺は世界一のメンバーたちと一緒にやっているんだ、と実感できたんだ。しかもエリックについては、ベーシストであるのみならずエンジニアとしても貢献してきたけど、今回はプロデューサーのひとりでもあるんだ」
饒舌なブレントの発言は、まだまだ終わらない。
「過去を振り返ると、1stアルバムに2人のプロデューサーが関わっていたのを除けば、これまでのアルバムでは、いつもプロデューサーは1人だけだった。ただ、曲を作っていくたびに“ああ、ひとりの人間がこれをすべてやるには無理がある”と感じていたところがあってね。もっと曲によって、相応しい人間がいるはずだ、という思いがあった。だから今回は、こうしたやり方をしようと計画立てたんだよ」
ブレントの発言を受けながら、バリーは次のように発言している。
「この種の曲にはこのプロデューサー、違ったタイプのこういう曲には別のプロデューサーというふうに、曲にとってベターな選択ができるようにしたんだ。それによって各々がより自由を得られたし、楽しく作ることができた。なにしろ同じスタジオで1人のプロデューサーの指揮のもとにみんな集まっていて、自分の作業が終わるのを他のみんなが見つめながら待ってるという状況は、なかなかプレッシャーがかかるもんじゃないか(笑)」
このバリーの発言に対してブレントが「主に俺なんだけどね、そうやってジーッと凝視してるのは」と言って笑うと、バリーもまた「スタジオでのブレントには、なかなか意地悪なところがあってね(笑)」と言い返す。とてもいいコンビだ。そして実際、そうして複数のスタジオでの同時進行作業をすることで、レコーディング期間そのものが短縮されることになった。しかもこのアルバムに収録されている楽曲のうち、4分を超えるのはわずか1曲だけ。従来も、いわゆるラジオ・フレンドリーな楽曲をたくさん世に送り出してきた彼らだが、今回はさらに楽曲が研ぎ澄まされているという印象だ。アイデアを詰め込むだけ詰め込むというのではなく、とても有効な引き算ができているのだ。そのことを指摘しながら「今回も、曲作りの勝利ですね」と告げると、2人は満足げに微笑み、「その言葉はとても嬉しい」と言ったブレントは、次のように言葉を続けていた。
「過去、俺たちがアルバムを作る時というのは、ある意味の劇的なクオリティ向上を求めて異なったアーティストの手を借りてみたり、シンセサイザーやら何やらを使って変化をつけてみたり、ということをしていた。でもこの作品では俺たち、それをしなかったんだよ。もっと焦点の絞られたアルバムだといえる。“俺のギターのためには27トラック必要だ!”みたいな作品ではないんだよ(笑)。各々が原曲を聴き込んでそこに集中して、どんなギターが、どんなベースラインが、どんなドラムスが、どんなヴォーカルと歌詞がそこに必要か、ということを突き詰めながら考えて、ピンポイントで絞り込んでいったんだ。それによって今作は、これまでのアルバム以上にビッグな響きを伴うアルバムになった。つまり、減らすことによってプラスの効果が得られたというわけだよ」
ブレントがさらに「各自、技術をひけらかすようなプレイだってやろうと思えばできる。だけどみんな、自分たちがどういうバンドの一員であるかをわかっているんだ。しかもそこに対して敬意を払っているし、この4人が一緒にやることでSHINEDOWNになるということを知っているんだ」と語ると、バリーもバリーで「俺たちはプレイではなく曲そのものに何かを語らせようとしている。全員がそういう考えなんだ。俺はそこで、その曲にいちばん相応しい、ベストなリズムを叩きたい。だけどそこで俺ではなく、曲そのものに注目して欲しいんだ」とまで言う。
こんな発言の数々からも裏付けられているように、彼らの通算5作目となるオリジナル最新アルバム『THREAT TO SURVIVAL』は、いつかクラシックと呼ばれることになるはずのグッド・ソングばかりが詰まった充実作であり、とにかく決して敷居の高い作品ではないから、これまでこのバンドを知らずにきた人たちにも是非手に取って欲しいものだ。
バンドはこれから長いワールド・ツアーの日常に突入することになるが、ここ日本への帰還も一日も早く果たして欲しいもの。そう伝えると、ブレントは「今回がファースト・タイムだったことは確かだけど、これがラスト・タイムになることは絶対にない」と言い切り、ふたたびこの国にやって来ることを約束してくれた。実はステージ上でもオーディエンスに対して同じことを言っていたのだが、そんな言葉が出てきたのは、初上陸したこの国の観衆の熱をしっかりと彼自身が受け止めていたであるからに違いない。
取材/文:増田勇一
ライヴ撮影:ほりたよしか