【インタビュー】Ken Yokoyama、ギターを語る「グレッチは僕の生き方を投影してくれる」

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Ken Yokoyamaが9月2日、ニューアルバム『Sentimental Trash』をリリースした。収録曲「One Last Time」には、“夢見る頃はとっくに過ぎたけど それでも生きていくのさ なにかまだ役目が残っているんじゃないかと探しながら オレはそれをもまた夢と呼ぼう”という一節がある。45歳の横山健が等身大を綴る歌。胸が締め付けられるようにセンチメンタルで、ときめく覚悟に溢れたこのアルバムは、だからこそ果てしなく重く、どこまでも輝かしい。

◆Ken Yokoyama 画像

サウンド&アレンジ面でみれば、アルバム制作には“箱モノ”と呼ばれるギターが一際大きな存在感を放っていたようだ。結果、『Sentimental Trash』にはロックンロールの原風景が描かれたと同時に、Ken Bandサウンドに新風をもたらした。実はこのギターに関する取材は、アルバムインタビューの補足程度に、という前置きのもと進行したものだが、蓋を開けてみれば自身の人生観まで飛び出すほど深く濃く、永遠のギターキッズの煌めきに溢れるものとなった。先ごろ公開したアルバムインタビューと併せてぜひご覧いただきたい。

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■だから本当にもう、家族を巻き込んでの大騒動です
■でも、僕が興奮していることは理解してくれているので

──ナビゲーターのHONEY KENやESPの助六をはじめとするオリジナルモデルなど、“横山健=レスポールシェイプ”というパブリックイメージはすでに確立されたものになっていると思うんです。ところが今回の『SENTIMENTAL TRASH』は“箱モノ”ギターの入手が、プレイ面やアレンジ面で今のKen Yokoyamaサウンドに大きく影響を及ぼしているということがアルバムインタビューからわかりました。箱モノの入手は今から1年半とか2年くらい前だったとのことですが?

横山:時期で言うと、前アルバム『BEST WISHES』のツアーが2013年2月に終わって、それから曲作りとしての手探りの時期があって。その年の暮れくらいにギブソンのES-335を入手したんだと思います。これが最初ですね。

──健さんはそれまで、ほどんと箱モノを使うことがなかったわけですよね。ES-335を入手する前に抱いていた箱モノのイメージとはどういうものでした?

横山:カタカナで“ロケンロー”ですね(笑)。

──いわゆる'50sとか'60sとか?

横山:そう。あとは日本のバンドでも、もちろんベンジー(浅井健一)さんやチバ(ユウスケ)くん、そういうロックンロールをやっている人とか、ロカビリーの人とか、ガレージロックをやっている人とか。クールなロケンローなイメージがありました。

──先ほどのアルバムインタビューでは“エルビス・プレスリー”という名前も挙がりましたけど、そういうイメージありきで入手したのが“箱モノだったんでしょうか?

▲Gibson ES-335

横山:それが本当は、そういうわけでもないんですよ。最初はES-335っていう箱モノでブルースロックを鳴らしたいなって、特に音楽的なことは考えずにね。僕は自分のことをブルースギターのプレイヤーだと思っているんです。リードプレイをするときはメタリックなものもあるけれど、やっぱり基本はブルーススケールで弾き倒すことが好きなんですよ。だから、速いブルースプレイヤーだと思っている。で、そういったものを箱モノでやってみたいと思ったんですね。

──箱モノ入手=ロックンロールスタイル、に直結していたわけではなかったんですね。

横山:そう。普通に考えて、それこそB.B.キング、フレディー・キングに代表されるようなあのスタイルが頭にあった。でも手元から鳴る音は、僕の想像を超えてもっと広がりがあったんですね。

──ギターから新たなインスピレーションを受けるような。

横山:その可能性をどう嗅ぎ取っていったか、あんまりはっきりとは覚えていないんですけど。ただ、ギブソンのESシリーズとグレッチというのは、自分のなかで“箱モノの二大巨頭”だっていうイメージを持っていたんです。で、ESシリーズがこれだったら、グレッチを弾いてみたらどうなるんだろうっていう興味が湧いてしまったんですね。

▲with Gibson ES-355 <The Rags To Riches Tour V>2015.1.21@豊洲PIT

──グレッチの前には、ES-335に続いてES-355(ES-335の上位機種でラージヘッドに積層バインディング、エボニー指板を採用しているほか、初期モデルにはアームユニットを搭載)を入手していますね。

横山:そうなんです。ES-355も素晴らしいギターで。となると、ますますグレッチがどういうものか、すぐに1本買いに行って。そこからですね、ロックンロールに向かったのは。

──なるほど。ロカビリーやカントリー、ロックンロールのイメージが強いグレッチが、今の健さんのギタースタイルを呼んだということにはすごく合点が行くんです。それにしても、次から次へと箱モノを入手していく、そのスピード感と旺盛な好奇心には凄まじいものがありますよね。健さんのブログを読んでいても、この短い期間に一体何本の箱モノを入手したんだろう?ということに驚いているんですが、実際、現在までに何本くらい所有しているんですか?

横山:箱モノだけだったら、13~14本は新しく手に入れましたね。

──2年弱で13~14本って、そんなこと今までありました?

横山:なかったですよ(笑)。だから本当にもう、家族を巻き込んでの大騒動ですね。ギターの置き場所に困る!とか。

──結構、真顔じゃないですか。

横山:ははは。いやだって、そんなに大きな家に住んでるわけじゃないのでギター部屋があるわけでもないし、もちろん自宅スタジオなんてない。毎回毎回、かみさんと悩むわけですよ。「そこにギターを置かれると掃除機かけるとき、怖い」とかね(笑)。でも、僕が興奮していることは家族も理解してくれているので、一家の応援を受けてわっしょいわっしょいです。

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