【ライブレポート】植田真梨恵、360度全方位のステージで“たったひとりのワンマン”

植田真梨恵がメジャーデビュー1周年を迎えた8月6日、“365日後の10のこと”と題して＜たったひとりのワンマンライブvol.2＞を東京･品川にあるCLUB eXで開催した。

◆植田真梨恵 画像

円形のステージ（これが回転することで全方位なステージに！）を囲むように、1階にイス付きの客席や、2階にバルコニー席がある会場は、いつものライブハウスとは一味違ったラグジュアリーな雰囲気。観客の間にわずかながら緊張感が漂っていて、静かに始まりの時を待っている。


今夜は、＜たったひとりのワンマンライブ＞ということで、ステージ上にはアコースティックギターが1台、ぽつんと据えられ、あとは譜面台と、ファンにおなじみのクマのぬいぐるみコッペリアが載った小さなテーブルというじつにシンプルなものだ。その物静かなステージがまた、ぴりっとした神聖な空気を生んでいるのかもしれない。

大きな拍手に迎えられて本人が花道から会場中央のステージへ登場し、「ハイリゲンシュタットの遺書」よりスタートしたライブ。ピアノを基調とした曲やバンドアレンジの曲が、シンプルな弾き語りへとリアレンジされ、凛としていて、かつぬくもりのあるアコースティックギターと、美しい歌声とで表現された。とてもシンプルだけれど、だからこそか、植田真梨恵ならではの躍動的なメロディラインや、繊細な弦楽器の音色にも似た伸びやかなヴォーカルがいちだんと冴える。のっけから、グッと惹きつけられるステージだ。


今回のライブはファンから楽曲リクエストを募り、そのベスト10を中心にプレイするスペシャルなライブとなったが、彼女自身の曲だけでなく、カヴァー曲も募集した。そして演奏されたのが、aikoの「花火」だ。夏の夜にぴったりで、会場のテンションをグッと高める曲にもなった。そしてここからはリクエストベスト10の曲を、カウントダウンではなく、カウントアップ方式で。まずは4位の「サファイア！」から5位、6位の曲へと披露していった。


「みなさん見事にピアノの曲を多く選んでくれて」と笑いながらも客席との至近距離のやりとりを楽しみ、ソリッドにギターをかき鳴らして、高らかに歌い上げる。リクエストには、「ザクロの実」や「彼に守ってほしい10のこと」といったシングル曲はもちろん、メジャー1stフルアルバム『はなしはそれからだ』から「プリーズプリーズ」、そしてインディーズ時代の名曲が並んだ。普段、ライブでおなじみのバンドサウンドの曲、あるいはピアノの西村広文氏とのライブ＜LAZWARD PIANO＞によるピアノ＆アコースティックギターバージョンにリアレンジされた曲ともまた違って、より生々しく、ダイレクトに心に触れるような声と歌。観客は、アグレッシヴな曲に手拍子をし、バラードではその鋭利な言葉に突き刺されるままに、歌に酔う。


後半はいよいよベスト3の曲、「愛おしい今日」、「変革の気、蜂蜜の夕陽」、そして第1位となった「心と体」をプレイ。

また、ギターのボディーをパーカッシブに叩いたトラック、コードストロークによるトラック、アルペジオによるトラック、コーラスを歌ったトラックなど、BOSSのループステーションを使って“ギターと歌のみ”で、ひとりアンサンブルを積み重ねて披露した「旋回呪文」など、実験的な趣向も。これらを交えながら、本編だけで16曲、アンコールの「よるのさんぽ」まで含めれば、気づけば約2時間のステージとなった。

メジャー・デビューから1年、アコースティックギター1本のみのサウンドながら、時間の感覚をマヒさせるような濃厚な歌の世界観を描いた植田真梨恵。この日感じたのは、ユニークでバラエティ豊かな曲のカラフルさと、なによりも彼女のアーティストとしてのタフさだった。

取材・文◎吉羽さおり







◆植田真梨恵 オフィシャルサイト
◆植田真梨恵 オフィシャルYouTubeチャンネル