【ライヴレポート】VAMPS、大阪城ホール公演で「そばに行きたかったから｣

VAMPSが2月28日、 大阪城ホールにてアリーナツアー＜VAMPS LIVE 2015 "BLOODSUCKERS"＞の3公演目を開催した。4年ぶりとなるオリジナルアルバム『BLOODSUCKERS』を携えて籠城型ライヴハウスツアーで全国のファンを魅了してきたVAMPSは、その滾った血が冷めないうち、今度はアリーナツアーでまたもオーディエンスたちを熱狂の渦に落とし込んでいった。

◆VAMPS 画像

ツアー幕開けとなった名古屋日本ガイシホールに続く、大阪城ホール公演の初日。会場に入ると、ステージ上のスクリーンにデジタル時計が写し出されていた。もちろん、この日の公演もスタートは6:66。時が進むたび、待ちきれないファンが次々と立ち上がりステージを凝視する。また、このアリーナツアーでは事前に携帯やスマホでの写真撮影や動画撮影が許可されていた。滅多にない撮影チャンスだけにメンバーが登場する姿を撮影しようと多くのファンがステージにカメラを向ける。携帯画面の眩い光さえも照明の演出かのように会場を美しく彩り、1曲目「ZERO」から幻想的な世界を作り出していく。

伸びやかに広がりを見せるHYDEの歌声に一瞬にして心を鷲掴みにされた。続く「AHEAD」ではK.A.Zのギターが鳴り響いた瞬間、会場の熱気がライヴハウス並みに高揚していく。多様な楽曲の世界観を見事な緩急を持って魅せつける彼らのステージングはさすがの一言だ。乱暴に足を蹴り上げ、HYDEは声を荒々しく歌い叫び、極太のバンドサウンドがさらに迫力を増していく。

会場の熱気が昂るたびにセットリストもどんどん過激になっていくようだ。｢大阪！　好きにしちゃっていいんだぜ～。楽しもうぜ！｣とHYDEが会場を煽ると、K.A.Zのギターが妖しげに鳴き、Ju-kenのベースが鼓動を早める「REPLAY」へ。妖艶に歌い上げるHYDEの姿がスクリーンに映るたび、歓喜の悲鳴が会場から沸き立つ。「GET AWAY」や｢DAMNED｣｢EVIL｣と、次々に披露される豪快かつ荘厳な楽曲陣のパワーが凄まじい。

以前のBARKSインタビューでHYDEは「アリーナツアーはもっと開放感のある演出をしたい」と語っていた。その独創的な演出やステージセットが話題になる籠城型ツアーだが、気になるのはやはりアリーナならではの演出だ。圧巻はLEDスクリーン。これは通常のようにステージ背後にセットさせるようなスクリーンではない。スロープ状にメンバーが立つ足元まで伸びたスクリーンに様々な映像が映し出されるのだ。さらには、特殊効果でHYDEの瞳だけが青く光ったり、オンタイムのライヴと緻密に作り込まれた映像をミックスしたり、スクリーンから飛び出るレーザーや火花など、見せ場を挙げたらきりがない。ただのライヴ体感だけでなく、視覚と聴覚を駆使したパフォーマンスにただただ圧倒される。より磨きのかかったステージセットが楽曲の世界観を高めていくようだ。

｢あぁ、気持ちいい。気持ちいい？　ねぇ、感じてんの?｣

HYDEが舌舐めずりし、オーディエンスにもっともっとと興奮を求める｢HUNTING｣。何度も繰り返されるサビにオーディエンスは拳を挙げ続ける。休むことなど許されないドＳっぷりを発揮したライヴも彼らならではのものだ。

ステージも後半へと差し掛かり、「ANGEL TRIP」｢LOVE ADDICT｣と豪気なナンバーが繰り出される。ARIMATSUのドラムサウンドはここが大きなアリーナ会場とは思えないほどに体の芯まで響き、JINの鍵盤によるメロディーがHYDEの声をより高みへと昇らせていく。K.A.ZとHYDE、向かい合って互いに煽り弾くギターもテンションが高い。

この日のステージは、いつも以上にメンバーとの距離が近く感じられたのも興味深い。「みんなのそばに行きたかったからステージを前に出しました。近くて嬉しい」とHYDEが語ったように、ステージは通常よりも前にせり出すように作られていた。さらにステージ左右に設けられた客席フロアがステージと客席との距離をなくす。アリーナだからこその大きな演出に加え、ライヴハウスの親密度もこのツアーでは実現されている。

本編も終わりへ近づくと、｢BLOODSUCKERS｣「MIDNIGHT CELEBRATION｣などのナンバーでは危険を感じるほどに会場のボルテージが急上昇。血を求めさまよう吸血鬼のように、険しい表情をしたHYDEがステージ上を練り歩く。屈強なリズムが体を揺らし、K.A.Zの弾くギターの旋律が容赦なく耳を貫く。幾度となく重ねたライヴで作り上げてきた屈強なパフォーマンスの真髄を垣間見た気がした。

インターバルを迎えた会場は、暴れ足りないオーディエンスがステージ前方に目を向けながら、今か今かとメンバーの登場を待っている。すると、悲鳴にも似た歓喜の声がフロア後方から響いた。フラッグやCO2弾を持ち、ゆっくりと歩きながらステージへ向かうメンバーの姿がそこにあったのだ。まさかの登場方法にファンの興奮が収まる気配がない。そこへ無邪気な表情でCO2弾をぶちまけるHYDEの小悪魔ぶりはさすが。

そしてアンコール1曲目の「THE JOLLY ROGER」では音圧の大きさはもとより、強い上昇感のあるサウンドで会場を一体にした。MCでは、K.A.Zが5年ぶりとなる大阪城ホールでの公演について、さらに次に待つ海外公演について、マイペースなコメントを。HYDEは｢残すところあと少し。悔いのないよう全部出してってね。　出さな!!｣と、こちらもいつものペースでオーディエンスとの掛け合いを楽しんでいる。演奏は｢INSIDE MYSELF｣でしっとりロマンティックな世界観に会場を浸したと思いきや、「DEVIL SIDE｣｢SEX BLOOD ROCK N’ ROLL｣で熱狂のフィナーレへ。オーディエンスとともに張り上げるようなスクリームをかまし、ぶっといロックンロールサウンドで会場を揺さぶった全19曲が終了した。

｢首洗って待ってろよ！｣とは翌日の公演に向けてHYDEが放った言葉だが、その言葉通り、3月1日の公演もこの日同様の盛り上がりを見せた。続く仙台、そして5月に決まったさいたまスーパーアリーナと、さらに期待が高まる。

取材・文◎黒田奈保子　撮影◎緒車寿一／田中和子





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