【倉木麻衣×BARKS連載対談】第九回(2013~2014年)「まさに一期一会だと思います」
倉木麻衣が2014年12月、デビュー15周年を迎える。BARKSでは15年の歴史を振り返るべく、倉木麻衣、BARKS編集長の烏丸哲也、デビュー当時からのディレクター西室斗紀子を迎え、約1年間にわたって大型連載企画を展開中だ。前回は、東日本大震災が自身に与えた影響と、その後の精力的な活動を語ってもらった。そして、第九回目となる今回は2013~2014年。スランプからの脱出と、“一期一会”という15年周年イヤーのキーワードに迫る。
◆倉木麻衣 画像
2013年の倉木麻衣は、『-瓦礫を活かす-森の長城プロジェクト』に参加したほか、全12公演の<MAI KURAKI LIVE PROJECT 2013 "Re:">を開催するなど、Reborn(生まれ変わる)、Restart(再始動)、Retry(もう一度挑戦する)をテーマにした<“RE:”プロジェクト>に邁進する。そして同年12月、15周年イヤーに突入すると、DVDシングル「Wake me up」や40thシングル「無敵なハート/STAND BY YOU」のリリースをはじめ、ライブハウスツアーやホールツアーで全国を駆け回るなど、活動の充実ぶりが際立ってみえた。しかしその直前、倉木麻衣はスランプに陥っていたという。現在進行中の15周年イヤーを前に横たわった障壁をいかに乗り越えたか、第九回目の対談はそこからスタートした。
【連載対談第九回:2013~2014年 <15周年へ向けて~スランプからの脱出、そして未来へ>】
■自分自身の心の再生を図りたいということでもあったんです
■歌うことに煮詰まってしまったというか、思いが深くなりすぎてしまったというか
▲<第62回伊勢神宮式年遷宮奉祝『TOKYO FM 倉木麻衣歌謡奉納』>(2013.9.14) |
倉木:この年は、9月の伊勢神宮での歌の奉納がすごく印象に残っています。ちょうどその前に、すごく気持ちが落ちてしまった時があったんですよ。
烏丸:それは以前のシングルインタビューでおっしゃっていましたね。改めて聞きますが、それはどういう事情があったんですか。
倉木:<“RE:”プロジェクト>の活動が活発になる、その少し前だったんですけど……実は、自分自身の心の再生を図りたいということでもあったんです。歌うことに煮詰まってしまったというか、思いが深くなりすぎてしまったというか。いろんな歌を歌う中で、果たしてこの歌い方でいいのか?とか、もっと違った歌が歌えるんじゃないか?とか、いろいろ考えすぎてしまったというのがあったんですよね。それで無気力になってしまって。
烏丸:もどかしい感じですか。
倉木:歌に対しての喜びが消えていたと言いますか、しっくり来ないんですよ。歌っていても心ここにあらずみたいな、そんな感じになってしまったんです。
烏丸:それは突然やってきたんですか。
倉木:そうですね。たぶん……息切れしちゃったでんしょうね、自分の中で。スタジオに行っても気持ちが乗らなくて、その時期は本当にスタッフの方には申し訳なかったんですけど、時間を延ばして何度も何度もチャレンジしたこともありました。
烏丸:単純に歌うことは、きっとできるんですよね。でも出来上がりが……。
倉木:気持ちが入ってない、という感じなんですよ。
烏丸:それはスタッフの方にもわかるんですか。
▲<Mai Kuraki COUNTDOWN LIVE 12-13 ~祭りだ!tattsu Me!~>(2012.12.31~2013.1.1) |
倉木:スタッフの方たちには申し訳なかったんですけど、日本を離れて海外で自分を見つめ直そうと思って、イギリスに行ったんですよ。3週間ぐらいの短期間ですけど。
西室:「海外に行く」と言うので、「行ってらっしゃい」と。
倉木:その中で語学もちゃんとやりたくて、勉強しながらリフレッシュもして。でもやっぱり頭の中には音楽のことがあるんですよね。ロンドンのピカデリーサーカスにミュージカルの劇場がたくさんあるんですけども、それを全部見ていく中で、歌手の方がすごく楽しそうに歌を歌っていたんです。その表情を見ていると、自分自身がすごく情けなく感じてしまって……でもすごく感動したんですよ。やっぱり自分は歌が好きなんだと改めて思って、でもまだ気持ちは半々な状態のままで日本に戻ってきたんです。
▲DVDシングル『Wake me up』(2014.2.26) |
▲40thシングル『無敵なハート/STAND BY YOU』(2014.8.27) |
倉木:そこで、このままじゃいけないと思って、プライベートで伊勢神宮を訪れてみたんです。伊勢神宮の中では、昔も今も変わらずに毎日神様へ奉納が行われていて、それを見た時に、私も頑張らなきゃと思ったんですよ。その帰りの新幹線の中で、自分の気持ちを鼓舞する曲を作ろう!と思って出来上がったのが「Wake me up」です。その曲をリリースして、ライブをして、みんなに届けていくうちに、どんどん気持ちが上がっていって、もやもやした気持ちがフッと晴れたんですね。それでやっと本来の自分に戻れたというか。
烏丸:何なんでしょうね? 何かにとりつかれていたとか?
倉木:何だったんでしょうね(笑)。伊勢神宮で見た奉納というのは、昔から毎日ずっと同じことをやっていて、それは本当にすごいことだなと改めて実感したんです。それはある意味職人さんと同じだと思うんですけど、同じことをやっていても調子がいい日もあれば、駄目な日もあったり、繰り返しじゃないですか? そこで気持ちが負けてしまいそうになる日はやっぱりあると思うんですけど、でも音楽で気持ちを持ち上げることができるんだと、改めて思ったので。それで作ったのが「無敵なハート」なんです。
烏丸:その、気持ちが落ちてしまった期間というのは、けっこう長かったんですか。1年ぐらい?
倉木:いや、それほど長くはなくて、半年ぐらいだと思います。
西室:その中でも、いろんなアップダウンがあったんですけどね。いつもの無敵な倉木麻衣じゃないという感じで(笑)。
倉木:歌に喜びを見出せないと、気持ちが伝わってしまうので、それがファンの人に申し訳なくて。ライブも、気持ちが乗ってないのに歌わなきゃいけないのはすごく嫌だし、嘘をついているようで、その間はあまり活動しないようにスケジュールを調節していただきました。
烏丸:でも普通の社会人として考えてみても、10年以上働き続けてきて、しかも普通の人は土日は休みなんですよ。だから倉木さんみたいな人は、5年間がむしゃらに働いたら2年はお休みしないといけないと駄目ですよ。半年で済んだのは、それこそ無敵だったからじゃないですか。
倉木:そうかもしれないです(笑)。
◆インタビュー(2)へ
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