【インタビュー】映画『Over The L'Arc-en-Ciel』監督が語る「普通のバンドじゃない」
L'Arc-en-Ciel初のドキュメンタリー映画が、12月5日より8日間限定で全国公開される。『Over The L'Arc-en-Ciel』と題された同映画は2012年3月3日の香港公演を皮切りに5月31日のハワイ公演まで、全世界14都市17公演で行われたワールドツアー<L'Arc-en-Ciel WORLD TOUR 2012>を捉えたものであり、監督を務めたRay Yoshimoto氏はその全行程に完全密着した。
◆L’Arc-en-Ciel 画像
Ray Yoshimoto氏はアメリカ出身の映像ディレクターだ。出生は1969年のサンフランシスコ。1992年にUCLAを卒業後、代理店勤務を経てオレゴン州ポートランドへ移り、1994年に広告界の世界的最大手Wieden+Kennedy Portlandへ。映像に目覚めた彼はUSCの映画学校に通い、2000年に来日する。以降、東京を拠点にアフラック、アサヒビール、コカ・コーラ、マイクロソフト、三菱自動車、MTV、ナイキ、パナソニック、トヨタをはじめとする多くの大企業CMほかショートフィルムなどを手掛けてきた。
日本語も堪能なRay監督曰く、「それまでL'Arc-en-Cielのことは知らなかった」そうだ。しかし、彼が抜擢された理由は、“ワールドワイド展開していくバンドの姿を色眼鏡なしで見つめるため”であり、結果、完成した映画はhyde、ken、tetsuya、yukihiroという4人を知らなかった人にとっても、コアなラルクファンにとっても、新鮮に映るものとなった。「600時間を超えた」という膨大な映像からRay Yoshimoto氏が切り取ったワールドツアー、そしてL'Arc-en-Cielについてじっくり語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■グローバルな目線で広く伝えるためなんじゃないかと思ったんですよ
■知らないことがむしろ武器になるのかなと
──Rayさんがどういう経緯で映画監督になられたのか、伺っていきたいのですが、映画は昔からお好きだったんですか?
Ray:僕は日系人でアメリカに生まれ育ったんですが、子供の頃からアメリカ映画を観る前に日本の映画をいっぱい観せられたんですよ。ジャパン タウンにあるジャパン シアターに行って、ポップコーンではなくて、えびせんを食べながら『寅さん』シリーズの2本立てを見せられたりしていました。家では日本語をしゃべっていたので、一応、日本語のベースはあって。ただ、日本文化の中にいたわけではないし、まわりに日本人がいたわけではないので、そんなにうまくはしゃべれない。でも日本の漫画も大好きでした。『ドラえもん』は全巻持っていたし、『こちら亀有公園前派出所』も大好き(笑)。他に日本語の読み物があまりなかったので、小学館の『小学1年生』から『小学6年生』まで読み通していたし、日本語の映像や文化は自分の感覚の軸のひとつになっています。
──映画監督になったきっかけは?
Ray:アメリカの広告代理店に勤めていたんですが、自分で映画を作りたいなと思ったのは映画監督の石井聰亙さん(現在は改名して石井岳龍)と出会ったことですね。彼の『エンジェル・ダスト』という作品を観て感銘を受けて。その後、CMの仕事で彼がアメリカに来た時に、僕が通訳をすることになり、2、3週間、一緒に過ごしたんですが、彼の人間性も含めて惹かれて、これが映画監督というものだなって思ったんですよ。彼の作品を観て感じることがたくさんあったんですが、それは自分の中に日本的な映画のセンスが植え込まれていたということも大きかったんだと思います。で、自分も映像作品を作りたくなったという。
──2000年からは日本を拠点として、CMをはじめとする映像作品を手がけるようになったわけですね。
Ray:CMやスポーツ関係のドキュメンタリーがメインなんですが、もともとスポーツが好きだったことがきっかけでNIKEの仕事が来たりして、広がっていった部分はありますね。
──映像を作る上で大切にしていることはありますか?
Ray:リアリティーを追求するということですね。CMを作る場合でも、ただ作り物を見せるだけだと臨場感がなくなってしまって、おもしろくなくなる。ドキュメンタリー的な感覚は大事だと思います。目の前に起こっていることを撮っていきながら、それをどう画として表現していくのか。ただ再現しようとするだけでは、いい表現にならない。アクションっていうのは、ただのアクションじゃなくて、リアクションなんですよ。その場その場で何かに反応して行動しているわけだから、結果がほしいなら、ふさわしい目的を与えることが大事になってくる。そういう意味ではスポーツは参考になりますね。バスケットボールの映像を撮る場合にも攻撃する選手にはゴールする目的を与えていく。ディフェンスの選手に抜かれる演技を求めるとわざとらしくなるけど、フェイントに引っかかって、左にボールを取りに行くんだと指示するとリアリティーが出てくる。そこで学んだことは大きいですね。
──L'Arc-en-Cielのワールドツアーのドキュメント映画のオファーが来た時は、どう思いましたか?
Ray:彼らは有名ではあったので、名前くらいはわかるんだけど、彼らがブレイクしていった時、僕は日本に住んでなかったので、わからないことだらけで。でもおもしろそうだなと思いました。知らないからってためらっていたら、何も前に進まないし、やりたいなって。“なぜ僕なんですか?”ってことも思ったんですが、L'Arc-en-Cielを知らない人が呼ばれたのは、グローバルな目線でL'Arc-en-Cielを知らない人も含めて、広く伝えるためなんじゃないかと思ったんですよ。知らないことがむしろ武器になるのかなと。
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