【ライブレポート】[Alexandros]、サカナクション、VAMPSが<JAPAN NIGHT in TIMM>で証した異彩放つ日本の音楽

ポスト

世界に向けて日本の音楽を発信することを目的として2014年5月28日と29日、国立競技場最後の音楽イベントとして幕を開けた日本の音楽の祭典<JAPAN NIGHT>。その第2弾が10月23日、世界の音楽関係者が集まるイベント「第11回東京国際ミュージックマーケット(11th TIMM)」のプレミアライブ<JAPAN NIGHT in TIMM>として、今回は場所をZepp DiverCityに移し、開催された。

◆<JAPAN NIGHT in TIMM> Zepp DiverCity 画像

1階のフロアはもちろん、2階の立ち見スペースまでお客さんが何重にも重なるほどのオーディエンスで埋め尽くされたこの日のZepp DiverCity。客電が落ち、激しいEDMが鳴り響くなか、オープニング映像がこの日の出演者であるVAMPS、[Alexandros]、サカナクションを次々と紹介していくと、オーディエンスのテンションは瞬く間に上昇する。そして、本日のトップバッターがVAMPSであることがアナウンスされた瞬間、フロアからものすごい歓声が沸き上がった。照明で真っ赤に染まったステージ、怪しげなSEが流れるなか、サポートメンバー3人とともにサングラスをしたK.A.Z(G)、続いてHYDE(Vo,G)が大きなフラッグを振り回しながら登場。

ライブは「THE JOLLY ROGER」からスタートした。K.A.Zがディレイがかったギターの音像で、さっそくフロアを開放感いっぱいの広大な大地のようにぬり変えていくと、HYDEは何度も「スクリーム」と叫び、オーディエンスの心を開放していく。そこに、HYDEの甘く危険な香りをふりまく歌声と楽器隊のユニゾンでじりじり攻めたてる「DEVIL SIDE」を投入すると、フロアはたちまち昇天した。

HYDEが「VAMPSです。今日は穴という穴から全部出していって!」とVAMPS流の挨拶を告げたあとは「HUNTING」が始まった。HYDEが「僕の子羊ちゃんはどこにいるの?」と獲物探しを始めると、オイコールが沸き上がるフロアのあちらこちらから肩車をされた女の子が現れた。K.A.Zの乾いたギターが夏空を連れくるポップチューン「ANGEL TRIP」ではフロアからタオルが舞い上がり、「REVOLUTION II」ではストンプをしながら観客が大合唱するなど、VAMPSならではのパーティーを見せつける。

「このイベントは日本のカルチャーを海外に発信するものらしいんですが。日本の音楽には美しいメロディの曲がいっぱいあって。VAMPSもずっと海外で戦っているから、こういうイベントをやられると背中を押されているみたいで嬉しいです」

HYDEが海外ツアー体験者ならではの言葉を伝えた後は、美しいピアノの旋律から哀愁をたっぷり含んだ「VAMPIRE’S LOVE」を披露。そして「GET AWAY」で再びオーディエンスを奮起させた後、ラストはVAMPSのライブアンセム「SEX BLOOD R N’R」へ。ダイブに大歓声、シンガロングが咲き乱れたオーディエンスに向けて、HYDEがキスを投げ、VAMPSのステージは終了した。

2番手に登場したのは[Alexandros]。メンバーが定位置につき「最高の夜にしましょう」と川上洋平(Vo&G)がひと言挨拶をして1曲目の「Run Away」が鳴り出す。オープニングから川上のハイトーンヴォイスが響き渡ると、全楽器が音圧、音量ともにフルボリュームでソリッドなダンスビートを生み出し、観客を踊らせていく。「Waitress,Waitress!」では庄村聡泰(Dr)が繰り出すトライバルなビートから、中間パートでは白井眞輝(G)と磯部寛之(Ba&Cho)がフリ―キーなジャズを奏でる。さらに「Kick&Spin」ではソリッドなメタルグルーヴまで披露するなど、曲ごとに高度な演奏スキルを見せつけ、プレイでもオーディエンスを圧倒していった。

「今日は豪華なメンツに挟まれ、光栄です」、「海外のメディアの方が来てるので、世界に向けて歌います」と川上が話した後、美しいメロディーが何度もリフレインする「You’re So Sweet & I Love You」を。そして「city」からは会場が再びヒートアップしていく。熱狂してダイブを繰り返すオーディエンスに負けじと、間奏では白井のギターもエモーショナルに炸裂。その勢いにのせて川上が「Starrrrrrr」と彼らの必殺ナンバーをタイトルコールすると、フロアからは大歓声が上がり、オーディエンスはここぞとばかりシンガロングとジャンプを繰り返した。最後に「Adventure」を届けてライヴは終了。舞台にひとり残った川上は、「Adventure」のコーラスをいつまでも歌う観客に「愛してるぜ東京」と最後に言葉をかけ、名残惜しそうにステージを後にした。

この日のトリを飾ったのはサカナクションだった。オープニングはヘッドフォン&サングラスをした山口一郎(Vo&G)、岩寺基春(G)、草刈愛美(B)、岡崎英美(Key)、江島啓一(Ds)のメンバー5人がフロントに横並びになって、目の前のラップトップやサンプラーを操る、最近の彼らのライブでは恒例のスタイルを見せ、スタートする。「Ame(B)―SAKANATRIBE MIX―」の演奏が始まると、レーザー光線が雨のように降り注ぎ、目の前に異次元空間が広がっていった。「ミュージック」の途中からは、通常のバンド形態へと演奏をスイッチし、今度はロックバンドとしての表現力をフルに使って、人間味溢れる音のダイナミズムで観客を狂喜乱舞させていく。「アルクアラウンド」では変拍子のハンドクラップで、舞妓のダンサー2人が山口を挟んでシンメトリーで踊る「夜の踊り子」では、曲に合わせて、大合唱が。さらに「アイデンティティ」ではハンドウェーブを起こすなど、人気ナンバーを連発。オーディエンスの熱量と一体感を限界まで高め、熱狂のダンス空間を生み出していった。ここまで白熱した空気を、無数のレーザー光線の軌道で幻想的な空間へと塗り替えていったのが次の「ルーキー」だった。江島とともに岩寺と草刈がドラムを叩くなか、山口のエフェクトされた声の残像が天空へとフワフワ浮かんでいき、そのままパフォーマンスは「Aoi」でクライマックスを迎えた。アンコールの声に応えて、再びステージに登場したサカナクション。

「先ほどまでみなさんを上で拝見していたんですけど、こうして音楽のジャンル分け隔てなくお客さんがひとつになって楽しめるのは……みなさん“才能”があると思います。こういうところを海外に向けて発信しましょう」

最後にそう山口が言葉にした後、「蓮の華」をプレイしてこの日の<JAPAN NIGHT>は幕を閉じた。

VAMPS、[Alexandros]、サカナクションという日本の音楽シーンのなかでもそれぞれ異なった強い個性を発揮しながら、独自のライブスタイルを作り上げてきた3組の出演者たち。今回の<JAPAN NIGHT>は、海外メディアに彼らが作る日本の音楽を発信するとともに、ライヴハウスという場所で開催したことで、アーティストとともにライブ空間を作り上げていく日本のオーディエンスの素晴らしさ、熱気ぶりをダイレクトに伝えるイベントにもなった。

Text by 東條祥恵
Photo by 今元秀明

◆JAPAN NIGHT オフィシャルサイト
◆BARKS JAPAN NIGHT 特設ページ
この記事をポスト

この記事の関連情報