【レポート】MUCC『SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~』、第1章:MUCCというバンドの成り立ち
MUCCとは、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)、SATOち(Dr)からなる幅広い層のファンを持つロックバンドである。彼らの音は、ヘヴィながらも、エレクトロな要素との融合を含んでいることから実にリズミックであり、根底にはフォークを感じさせる歌謡曲的なメロディを宿していることから、実に叙情的かつ感情的なのである。まさしく、それこそがMUCCというバンドの他にない特徴的な個性と言える。結成17年という歴史を持つMUCCは、来たる9月23日、国立代々木競技場第一体育館のステージに立つ。彼らにとってこの地は、バンド史上最大キャパ。これは、更なる高見を目指した大きな挑戦なのである。
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そして、この場所でのライヴは彼らが3月6日からスタートさせた『SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~』のファイナルでもあるのだ。彼らは、このツアーで7ヶ月間に毎月異なる全6種類の形の違う様々な闘いを9公演置き、そのツアーのグランドファイナルに国立代々木競技場第一体育館を置いたのだ。ツアー総数は実に55本。ここでは、そんな200日を超した戦いの日々を3章に分け、総括していこうと思う。まず、第1章では、MUCCというバンドの歴史から、<SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~Episode1.『ムッP LIVES』>を振り返っていくとしよう。
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1997年。ボーカルの逹瑯とギターのミヤが中心となり、彼らの地元である茨城県水戸市にてMUCCは産声を上げた。そして、彼らは1997年5月4日の水戸マイチカの結成ライヴから、自らの肺で呼吸を始め、MUCCという1つの人生の運命を背負って歩き始めたのである。結成当初のベーシストが1999年の2月で脱退したことから、現在のベーシストであるYUKKEが加入。そこからは、逹瑯、ミヤ、YUKKE、SATOちの現メンバーとなったのだ(※【対談】逹瑯(MUCC) × 松岡充(MICHAEL)参照)。
当初MUCCは、暗く重いサウンドと、切なさと闇が漂うメロウな旋律の上に人間の内面の感情を乗せて唄うことを軸とするバンドであったが、その軸はバンドの基盤としてしっかりと残しつつも、バンドサウンドのみで構成されていた音楽性は、メインコンポーザーであるミヤの貪欲なまでのインプットとの融合により、大きく変化していった(※【対談】逹瑯(MUCC) × 櫻井敦司(BUCK-TICK)参照)。
彼らは、2005年にドイツのメタルフェスティバル<Wacken Open Air>に出演し、同地で海外初のワンマンライヴを行い、翌年には初の日本武道館の単独公演を成功させた。この頃のMUCCは、「雨のオーケストラ」(2005年6月8日リリース)「最終列車」(2005年10月19日リリース)「ガーベラ」(2006年2月15日リリース)などのシングルをリリースしていたのだが、歌謡テイストなメロディを宿すこれらの楽曲たちは、ラジオなどで流されると、必ずと言っていいほど、普段MUCCの音には触れることがないであろう50代以上の男性リスナーから、“今かかった曲は誰の何という曲ですか?”という問い合わせがあったと言う。ロックは若者の音楽。そんな概念を、MUCCというバンドは覆す力を持ったバンドなのである。
2007年には<GUNS N’ ROSES WORLD TOUR 2007>のオープニングアクトを務め、2008年には北米、ヨーロッパ諸国(計52本+同年12月にはアメリカ単独公演2本)、そして日本を縦断する大規模なツアーを経験し、海外からも注目を集め、2009年には再びヨーロッパツアーを決行し、さらに同年12月には<GUNS N’ ROSES ‘Chinese Democracy World Tour’ 日本公演>の2度目のオープニングアクトを務めたのである。この頃のMUCCの音はメタル要素をも含む、ラウドロック寄りの重く激しいモノが中心となっていた。
2007年の10月にリリースしたシングル「ファズ」から、徐々に同期を前面に押出した4つ打ちナンバーが多くなり、確実にMUCCというバンドの音に変化をもたらしたのだが、改めて2007年という1年を振り返ってみると、曲中で精一杯の光を含み、大きく開けるサビを持ちながらも、最高にヘヴィな音を放つ闇の印象が強い「リブラ」(2007年3月21日リリース)、“ここまで明るくなって大丈夫!?”と懸念したほどに突き抜けた明るさを持った「フライト」(2007年5月2日リリース)、クラブ系の同期を取り入れたエレクトロな「ファズ」(2007年10月31日リリース)や「アゲハ」(2008年8月27日リリース)、という様々な表情が同居していた最もムックが変化した時期であったのがわかる。
そして2014年。彼らはテレビアニメ『メガネブ!』のオープニングテーマでもあった「World’s End」(2013年10月30日リリース)や、テレビ朝日系『BREAK OUT』の5月度オープニングテーマだった「ENDER ENDER」(2014年5月28日リリース)というバンドサウンドが中心となったヘヴィかつメロウなMUCCの音楽性の原点といえるシングルたちを収録した、通算12枚目のアルバム『THE END OF THE WORLD』を6月25日にリリースしたのである。“終わり”“終末”という言葉がテーマとして置かれていた中で構築されていった『THE END OF THE WORLD』には、彼らの音楽の原点を感じさせるメロウな旋律の楽曲も存在すれば、フォークと70年代を思わすファンクなノリとヘヴィロックが融合した新たなアプローチの楽曲も存在すれば、ニューミュージックを彷彿させる邦楽のメロを感じさせる楽曲もあった。まさに、ジャンルレス。しかし。そのどれもがMUCCというバンドの音として貫かれた個性を宿したモノだった。そう。彼らは通算12枚目にして、“MUCCというバンドはこういうバンドです”と提示するべく、わかりやすく焦点を絞った、実にMUCCらしいアルバムを作り上げたのだ。また、リーダーでありメインコンポーザーであるミヤは、このアルバムを、“自分が音楽というモノに感銘を受けた井上陽水の「氷の世界」のようなアルバムにしたかった”と語っている。
結成から17年。様々な節目を乗り越え、さらに日々進化を遂げ続ける彼らは、結成20周年に向かうため、自らに大きな試練を与えた。それこそが、『SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~』なのである。この戦いの終着点は、来たる9月23日。国立代々木競技場第一体育館。バンド史上最大のキャパでのライヴとなる。彼らは、7ヶ月間に毎月異なる全6種類の様々な闘いを9公演置き、グランドファイナルとされる国立代々木競技場第一体育館へと向ったのだ。その総数は実に55本。ここからは、総日数200日に及んだEpisode1.からEpisode6.までを振り返り、彼らが代々木に懸ける想いの全てを記していこうと思う。
2014年3月6日。この日、MUCCは『SIX NINE WARS~ぼくらの七ヶ月間戦争~』の幕を開けた。彼らはここから始まる長い闘いの初日を朱ゥノ吐限定ライヴ(ファンクラブ限定ライヴ)とし、馴染みのハコでもある恵比寿LIQUIDROOMを選んでいたのである。彼らが、初日を朱ゥノ吐限定ライヴとしていたのは、日頃一番近くでMUCCのことを応援してくれるコアな夢鳥(ムッカー)と共に、ここから始まる七ヶ月間戦争の門出を祝いたかったからであろう。そして彼らは、この日から長いツアーを共に過ごすことになるスタッフたちと、リハーサルでいつも以上の時間をかけ、納得のいくまで音色や音質のチェックを重ね、大航海へと向うため、碇を上げたのだ。
「葬ラ謳」をSEに登場した彼らが、この日1曲目に選んでいたのは、6月25日にリリースを控えたニューアルバム『THE END OF THE WORLD』から、いきなりのタイトルチューン「THE END OF THE WORLD」。この時点ではまっさらな新曲とあって、オーディエンスは初めてこの曲を聴くこととなったのだが、SATOちの叩き出す太く響きのあるスネアの音から幕を開けたこの曲は、一瞬にしてその心を掴み取り、そこから一気に新旧を織り交ぜた流れで畳み掛けて行ったのだった。マニアックとも思えるコア層に向けた納得の選曲は、援軍である夢鳥への強い絆を誓ったモノでもあったのではないかと感じた。
そんな幕開けとなった<Episode1.「ムッP LIVES」>と題された最初の1ヶ月は、各メンバーをプロデューサーに置いた、個性の異なるライヴとして届けられた。通常MUCCのライヴは、リーダーであるミヤがイニシアティブを取り、セットリストを組んでいることもあり、逹瑯、YUKKE、SATOちがセットリストを組むということはまれなことなのだ。それ故に、他のメンバーがセットリストを組むというだけで、普段は観ることの出来ない個々の感性が浮き彫りになる、“いつもとは違うMUCCのライヴ”が完成するというわけだ。
しかし、アルバムツアーとは異なり、ここに至るまでのすべての曲をシャッフルした中での選曲であったことから、セットリストに上がった楽曲は総数60曲以上となった。彼らは、それらを、改めて体に入れなおしたというから半端ない。そして彼らは、自らが作り上げたセットリストをそれぞれの個性に染め上げ、いつもとは違うMUCCのライヴを演出したのだった。
ムックの曲を手放しで楽しませた“イケイケゴーゴー!”がテーマだったというSATOちPのライヴと、“我が路を行く”をテーマに、ステージの天井から裸電球を数個ぶら下げ、場末な雰囲気を漂せた空間を作り上げた中で、逹瑯作詞曲のみの歌モノとハッチャケ曲とをバランス良くミックスさせた、“逹瑯らしさ”を追求した逹瑯Pライヴと、視覚的な要素と“YUKKEフェスティバル風”な演出を取り入れたエンタテイメント性を重視した“お客さんが思うYUKKEな感じ”をテーマとしたYUKKEPライヴと、他の3人がセットリストを組んでから、選ばれなかった曲でセットリスト組んだことから、“テーマを付けるなら「あまりモン」”だと言っていたミヤPライヴ。しかしミヤは、そんな中でも、歌詞の世界観が定まってきてからの曲を選んで構成したという。横溝正史的な世界観を含む「盲目であるが故の疎外感」や「廃」といった、心理的に抉られる深い意味を含んだ歌詞たちの並びは、夢鳥たちが愛して止まないザッツ・ムックな世界観と言えたものであったに違いない。
MUCCというバンドの根源の部分に直に触れた気がした「ムッP LIVES」を<Episode1.>とし、彼らはその翌月、「VS 異種格闘2マンTour」と題した<Episode2.>へと進んだ。
取材・文◎武市尚子
■SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」
2014年9月23日(火・祝)国立代々木競技場第一体育館
OPEN 16:00 START 17:00
前売券¥5,569(税込) 当日券¥6,500(税込)
※全席指定、3歳以上のお子様はチケットが必要です。
チケットぴあ http://bit.ly/UXHMR1
イープラス http://bit.ly/1sWeGhW
ローソンチケット http://bit.ly/1mhghcC
◆チケット詳細&購入ページ
◆MUCC オフィシャルサイト
◆SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- 特設サイト
◆第2章:<Episode2.> to <Episode5.>へ
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