【ライヴレポート】MUCC、D’ERLANGERを迎えた<ARMAGEDDON>で「よう、兄貴!」

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MUCCが2014年、全55本におよぶ壮大なライヴプロジェクト<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争->を展開中だ。8月から開催している毎公演ごとにビッグネームなゲストを迎えたツーマンライヴツアー<Episode 6.「ARMAGEDDON」>も残すところ、この川崎公演を含めて4本。壮大な計画のゴールも目前に迫ってきた。間もなく到来する長い旅路の終着点を想うに、メンバーの胸に達成感も徐々に湧き上がってきていることだろう。

◆MUCC×D’ERLANGER 拡大画像

しかし、この日のゲストはMUCCの現所属事務所にかつて在籍、その礎を創ったと言っても過言では無い大先輩、D’ERLANGERだ。MUCCが2006年に無料配布したカヴァーアルバムに「LA VIE EN ROSE」を収録したり、一方のD’ERLANGERは主催ライヴ<ABSTINENCE'S DOOR #001>にMUCCを招いたりと、縁が深い。

実はそんな彼らの初対面は、ここ川崎クラブチッタにて2002年12月29日に開催されたDANGER CRUE主催イベント<天嘉>だった。MUCCがD’ERLANGER の代表曲である「LA VIE EN ROSE」をカヴァー演奏している最中に、ステージをD’ERLANGERの4人がステージを悠然と横切っていった。1990年に解散以来、実は公に揃って姿を現したのは、この日が初めてだった。MUCCのメンバーを始め、ステージスタッフすらも唖然とする中、余裕綽々で堂々と歩く4人の姿には圧倒的な存在感があった。ただステージを歩くのみで迫力があるのである。そんな先輩を相手にして、MUCCがどんなステージを見せるのか、集ったオーディエンスも興味津々であろう。

18:40、暗転。D’ERLANGERはSEに乗せてステージに登場。その姿に既に殺気がある。しかし、本番前に楽屋で会う姿には、キャリアを重ねた彼らにしか出せない余裕も感じられた。「10年前とは会話の内容が違うね」と笑顔で話すkyoと逹瑯の姿は、ロック道の正しい先輩後輩の姿であり、そこに集まるスタッフの間にも笑顔がこぼれるシーンが数多く見受けられた。が、メイクアップをし、ステージ衣装に着替えると、もう近づきがたい雰囲気なのである。その切り替えの素早さ、そして殺気溢れるテンションへと瞬時に移行する集中力の高さはキャリアの為せる業である。「XXX for YOU」のスピード感溢れる演奏で、彼らは一気にステージ上のテンションをマックスに持っていき、オーディエンスを一気に興奮の頂点へと誘う。

D’ERLANGERの“寄らば斬る”というそのスタイルを醸し出す素因、それはCIPHERとTetsuから放たれる独特の空気感によるものかも知れない。この2人は1988年より活動を共にして以来、現在まで終始一貫バンドメンバーとしてコンビを組み続けている。スネアドラム一発で会場の空気を一変させることが出来るTetsu。一瞬の演奏ブレイクの際や、激しいドラムフレーズの最中に乾坤一擲の叫びを挟む瞬間が、彼には稀にある。その迫力は会場全体の視線が一気にそこに集まるほどのなのだ。その高い集中力が故に、彼のドラムプレイには圧倒的な説得力があり、他のドラマーの追随を許すことがない。

そして、切れ味鋭い高速カッティングワークを武器に、鋭い眼光でその場の空気を支配するCIPHERの存在感。「(自分たちの世代で)あのスタイルに憧れるバンドマン多いのは、わかるわ」と終演後に逹瑯が楽屋で思わず呟くほど、そのスタイルにはフォロワーが多い。セットリスト中盤に配された「dummy blue」は、まさにその彼らの鋭さが一気に爆発したと言えるだろう。

「心を込めて何を送ろうかな。君たちも手伝ってくれる? そういやぁ、昨日、誰か誕生日だったよね」というMCと共にkyoがハッピーバースデイを歌う大サプライズ! こんな粋な演出をさらりと出来るのも長いキャリアの為せる業だ。そして11月には東名阪のワンマンツアーが決定したことを伝えると、客席からは大きな歓声が上がる。

その祝祭ムードを一気に切り裂くかのごとく「どうせ暑いんだから、ずぶ濡れになって踊れ!」との煽りと共に放たれた「Dance naked, Under the moonlight.」からは怒涛の勢いでの演奏が続いていく。続く「Angelic Poetry」の間奏でフィーチャーされたのは、このバンドの女房役を務めるベースのSEELA。ステージ後方でバンドをどっしりと支える彼がいるからこそ、他の3人が何の抵抗感も無く破天荒なパフォーマンスを繰り広げられるのではないだろうか。

そしてこの日も川崎スペシャルが。続く「BABY I WANT YOU」にてステージセンターに登場したのは、なんと逹瑯! D’ERLANGERをバックに歌うという超貴重な機会にオーディエンスも大興奮。何せ、逹瑯にこの曲が非常に似合ったのだ。低く地を這うように歌うAメロから、大サビで一気叫ぶそのパフォーマンスまでが、まるで自身のオリジナル曲の様に聞こえたのだ。逹瑯がkyoから受けた影響の大きさを、誰もが感じた瞬間でもあった。

そしてラストには彼らの代表曲「LA VIE EN ROSE」を怒涛の勢いで叩きつける。「COME ON CIPHER!」のkyoのシャウトと共にこの日初めてステージ前方に躍り出たCIPHER。なんとギターソロパートにも関わらず両手を広げ、ハウリングノイズを響かせオーディエンスを煽っていく。こんなパフォーマンスをさらりとやってのけるから、みんなが憧れるのだ。エンディングではスティックをステージ高く放り投げ、「MUCC楽しんで!」と客席に語り掛けるなど、Tetsuの姿には、この日のライヴの満足度の高さと、先輩としての余裕も感じられた。やはりD’ERLANGERは強かった。

この後に登場しなければならないMUCC、今日も非常にやりづらいだろう。さてどんな登場を見せるかと思いきや、オーディエンスの度胆をぬいたのは逹瑯の出で立ちだ。顔面半分を包帯で覆い、黒い和服を羽織るという究極のジャパニーズゴススタイル。こういう飛び道具を全くそう感じさせないのが、彼の人格としてのキャラクターの凄味だ。

この日のMUCCはオープニングから5曲を立て続けに演奏を展開。このスピード感あふれる展開を引っ張ったのはSATOちのドラムだ。SATOち曰く、「D’ERLANGERのリハーサルを終始ドラムセットの脇で見続けていた」そうだ。感情豊かなフレーズをスピード感満載で連発するTetsuに煽られたのか、鋭く表情豊かに全体の演奏を牽引していく。かつては、ステージの上で感情の起伏をあまり見せない他のメンバーと一線を隔し、そのパフォーマンスでMUCCのステージングの激しさを担ったともいえるSATOち。この日はそんな彼のキャラクターが演奏を引っ張る瞬間も多かった。

総じて言えば、MUCCがD’ERLANGERのメンバーから受けた影響の大きさは計り知れない。ミュージシャンとして、少年期のミヤが受けた影響はとても大きい。鋭く高速なカッティングワーク、そして眼光鋭い威圧感満載のステージパフォーマンスなど、挙げて行けばきりがない。この日のステージにも登場した、CIPHERのシグネーチャーモデルを発売早々に入手したのも、その憧れを象徴している。しかし逹瑯に関していえば、少年期と言うよりも所属事務所主催イベントなどでのkyoとの共演からの影響が大きい。終演後に逹瑯は楽屋で訥々とその影響の大きさを、こう語った。

「kyoさんから受けた影響は人間的なところで。ヴォーカリストとしての在り方とか、歌い続ける中でのメンタルの使い方とか。大人になって事務所に入って、出会ってから受けた影響だから。自分の中でも、他からの影響とはちょっと違うんです。これぞDANGER CRUEって感じ」

叫びながら感情を叩きつけ、なおかつメロディーラインすらも感じさせるそのスタイルは、日本屈指のシャウトパフォーマーであるkyoから明らかに受け継いだものと言える。「BABY I WANT YOU」での共演に、何の違和感も無かったことはある種当然なのである。

そしてこの日も「自演奴」「25時の憂鬱」ではYUKKEのアップライトベースプレイがフィーチャーされる。この楽器をメジャーで活動するロックバンドシーンに持ち込んだ彼の功績は大きい。高速のスラップから粘り気の強いフレーズまで、変幻自在にフレーズを操る彼のプレイスタイルはハイブリッドな音楽性を誇るMUCCの大きな武器だ。

そして、川崎スペシャルはMUCCの演奏シーンでも再び起こったのだ。ミヤのイントロギターフレーズで大歓声の上がった「リブラ」でステージのフロントを飾ったのは、なんとkyo。この楽曲もまた驚くことにkyoに似合ったのだ。バンド全体が激しく呼応しあう箇所でのkyoの鋭いスクリーモには、激しい演奏を跳ね返す迫力と説得力に満ちていた。ミュージシャン同士の深い絆からくるこの相性の良さにはフロアも熱狂的に応える。

逹瑯の「よう、兄貴!」という、先輩への愛情溢れる雄叫びと共にスタートしたのは「LA VIE EN ROSE」。大先輩の演奏を超えるべく怒涛の勢いで疾走するMUCCに煽られ、kyoの叫びも迫力満点だ。この先輩との共演シーンに象徴されるように、この日のMUCCに総じて感じられたのは、ある意味、ミュージシャンとしての若さかもしれない。15年を優に超える活動を経ながら、常に様々な状況変化を想定してフレッシュさを保つ事、これは並大抵のことでは無い。しかし、MUCCはこの難関を堂々と乗り越えることができる。それがバンドとしての瑞々しさを保つ秘訣であることを、彼らは自然と身に着けている。世代を超えて、どんな先輩バンドにも後輩バンドにも愛されるMUCCの秘密はこんな部分にもあるのかも知れない。

ラストは「蘭鋳」、そして「大嫌い」をフロアと共に大暴走、この日のMUCCはオーディエンスに激しい傷跡を残してステージを降りた。

「蘭鋳」の間奏部分で逹瑯はこう客席に投げかけた。「初めてkyoさんと共演したのって、ここでの「天嘉」ってイベントなんだよ。そして、俺の誕生日を挟んでシドとD’ERLANGERと共演ってさ、なんかいつかの夏の幕張のあのイベント思い出すんだわ。今日、社長も来てるんだよ。社長、またやりたいっすね、あれ。みんな、また見たいよね?」と。そう、彼らが受け継いでいるのは、この日のステージに上がった全員の血の中に流れる、あの伝統なのだ。

伝統は歴史と共に受け継がれていかなければならない。また受け継がれなかった伝統は過去の遺物であり、未来では無意味なものでしかない。この日、川崎でステージの上で表現されたのもの、それは、ロックの歴史と言う、正しい伝統なのではないだろうか。

取材・文◎加藤龍一 撮影◎釘野孝宏

<Episode 6.「ARMAGEDDON」>
2014年8月22日@川崎CLUB CITTA'
D’ERLANGER セットリスト
1.XXX for YOU
2.MY BLOODY BURROUGHS POEM
3.Beast in Me
4.IS THIS LOVE
5.dummy blue
6.Dance naked, Under the moonlight.
7.Angelic Poetry
8.BABY I WANT YOU with 逹瑯
9.LULLABY
10.LA VIE EN ROSE

MUCCセットリスト
※後日掲載予定


■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 6.「ARMAGEDDON」>毎公演異なるアーティストとの2マンTour
2014年8月06日(水) Zepp Nagoya VS [Alexandros]
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月09日(土) 新木場Studio Coast VS 氣志團
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月17日(日) 京都KBS HALL VS GRANRODEO
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月19日(火) Zepp Namba VS BUCK-TICK
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月20日(水) Zepp Namba VS シド
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月22日(金) 川崎CLUB CITTA' VS D'ERLANGER
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月24日(日) 大阪城野外音楽堂 VS ゴールデンボンバー
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月26日(火) Zepp DiverCity VS MICHAEL
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月28日(木) 恵比寿LIQUIDROOM VS geek sleep sheep
OPEN 17:30 START 18:30

■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」>
2014年9月23日(火・祝) 国立代々木競技場第一体育館
前売券¥5,569(税込) 当日券¥6,500(税込)
※全席指定、3歳以上のお子様はチケットが必要です。
チケット一般発売日:2014年8月2日(土)

◆SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- 特設サイト
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◆D’ERLANGER オフィシャルサイト
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