【ライヴレポート】MUCC、シドを迎えた<ARMAGEDDON>で「怖くないから、こっちにこいよ」

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MUCCが2014年、全55本におよぶ壮大なライヴプロジェクト<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争->を展開中だ。8月からは毎公演ごとにビッグネームなゲストを迎えたツーマンライヴツアー<Episode 6.「ARMAGEDDON」>へと歩みだしたわけだが、この日のゲストバンドは同じ事務所に所属する盟友バンドであり、後輩バンドでもあるシド。知る人ぞ知る話ではあるが、シドの存在を現所属事務所に紹介したのはMUCCの逹瑯である。そんな逸話を持つMUCCがどうシドに威厳を見せつけ、シドがどの様にMUCCへ牙をむき出しに噛みつくのか、興味が尽きない大注目の一夜となる。

◆MUCC×シド 拡大画像

8月19日、Zepp Namba。MUCCとシドによる完全なツーマンのライヴは今回が初。所属事務所主催イベントを除けば、結成からここまでイベント出演に至っても2回のみの共演だったという非常にレアな組み合わせである。もちろんチケットは発売と同時にSOLDOUT。しかし、チケットを入手できなかったファンにもニコニコ生放送にて生中継と、サービス満点なところを見せる太っ腹な2バンドの共演に、会場のみならず注目が集まる。

先陣を切るのはシドだ。登場SEは、なんとMUCCの「ホムラウタ」。現在、MUCCもイベントなどで戦闘モード全開の際に使用するこのSEであえて登場するとは好戦的であり、このステージに対してシドが懸ける想いをいきなり見せつけてくる。

冒頭から興奮が頂点に向かうオーディエンスに叩きつけたのは、彼らのレパートリーの中でも最凶の殺傷力を持つ「吉開学17歳(無職)」。そして「循環」から「妄想日記」を披露するなど、結成当初から存在する攻撃的なレパートリーを並べて、満員のフロアを煽り立てる。

メジャーデビュー以降のシドのライヴをパブリックイメージで言えば、“誰もを喜ばせるポップでカラフルなエンターテインメント”と連想されるかもしれない。しかし、結成初期の彼らのイベントでのスタンスは、非常にアグレッシヴだった印象もある。

「こういう対バンって久しぶりで。メンバー全員が“さぁ、やってやろうぜ!”って興奮するじゃないですか、絶対的に。こういう時の激しいマオって、僕は凄く好きなんですよ。なんか楽しみですよね」──明希

開演前の楽屋にて嬉しそうに明希がこう語ってくれた。昨今は、メンバー全員が無意識に封印していたのかもしれない攻撃的ステージングでオーディエンスを煽り、熱狂の渦に叩き込む。

続くMCでマオは、「俺もムッカーだから愛し合おうね」と愛くるしい一面を見せつつ、「今日はいまだかつてない激しいライヴになるから」と唐突に断言する。満員の観衆を絶妙なトークで興奮の高みへと導いていく。

現在の激しいシドの姿をこの日改めて認識出来たことは、古くから彼らを知るものにとっては非常に嬉しいことでもあったはず。ここ数年の彼らのライヴイメージは、どちらかと言えば煌びやかなイメージのみが取り上げられることが多かった。しかし、実はやるときはやるのがシド。その隠された側面が出た時、彼らは天下無敵なのである。

その姿をさらに体現するかのごとく、セットリスト中盤に配された「敬礼ボウイ」と「park」。この2曲で炸裂したゆうやの怒涛のツーバス連打に導かれるように、ハードロック然として突進するバンドの姿にオーディエンスは圧倒されていった。この日の彼らは久々にそのロック然とした凶暴な姿を存分に見せつけたといえる。

セットリスト後半に差し掛かる前のMCでマオは、冒頭に触れたMUCCとの出会いのエピソードを感謝を込めてじっくりと語った。そしてMUCCへのリスペクトをバンド全員が順番に述べ、会場はアットホームな雰囲気に包まれていった。

「初披露!」とのMCに導かれて放たれた最新シングル「ENAMEL」のラウドなサウンドが、一瞬にしてフロアを熱狂的な雰囲気に引き戻した。今日の彼らは攻撃を緩めることがない。続く「dummy」でマオは“綺麗事は聞き飽きた 汚れた夢は見飽きた 頑ななまでの誇りを 頑ななまでの誇りを”と歌った。この一節に彼のロックへの意識の高さを感じた。人間の想いで何よりも強いのは、無意識なまでの意識の強さ。この日詰めかけた満員のオーディエンスも、彼らの激しいステージングの中に隠された意識の高さに触れ、より深く彼らのコアな部分に到達できたのではなかろうか。

ラストには「眩暈」を怒涛の勢いでフロアに叩きつけ、シドの歴史上、最も過激なステージの幕は閉じた。終演後に「こういうのもたまにはいいでしょ?」と楽屋にて笑顔で表情語るゆうやをはじめ、全員が満足げな表情を浮かべていた。

15分の転換の後、MUCCが登場。前日のBUCK-TICKに引き続き、完全に自分たちの色でない空気感に満たされた客席のこのムードを、彼らがどう自分たち色に染めかえるのか。そんな熱気に満ちた期待に溢れる中、実に飄々とした、ある意味とても彼ららしい佇まいで登場したMUCC。

いつでも誰の挑戦でも受ける、がモットーの彼らだが、対バンやイベントで自分たちの出番前のバンドが激しいステージを展開すると、その興奮を持続させようとするオーディエンスの期待をあえて裏切ることがある。開演前に逹瑯は楽屋でこう話していた。

「今日の趣は昨日と全く違うんですよ。昨日はステージに立ちながら、頭の中で自分が憧れている櫻井さん(BUCK-TICK)と自分を比べちゃった。“あれ、自分ってまだまだガキじゃん”って素の自分になっちゃって。今日のほうが明らかに自分たちらしい戦い方ができると思う。シドが好戦的なセットリストで来るのを知った時に、ちょっと考えて。まぁ、いったんその空気感をぶった切ってみようと。だから一曲目がちょっと乗りにくいダークな曲(THE END OF THE WORLD)にしたのもそれでなんですよね。そこを自分たちの空気感を掴んじゃえば、こっちのものだから」──逹瑯

ここで一考を巡らせてみたい。昨今のMUCCのライヴの特徴には、シンガロングでのオーディエンスとの一体感、が挙げられると強く感じている。かつてはただひたすらに自身の感情を叩きつけつつ、観衆の熱狂を誘うことが特徴とも言えた。何故、彼らは一体感を求めるように、変化・変質の境地へたどり着いたのであろうか? その変化の理由は、彼らが数多くこなしてきた100本を超える海外公演からなのではないか。日常言語が違う国でパフォーマンスをする場合は、歌詞や言葉に意味を持たせることが難しい。そこで彼らが身につけたのは、誰もが瞬時に反応できる肉体的なパフォーマンスと、一度聴いたらその場で一緒に歌えるわかりやすいメロディの必要性。シンガロングを含む楽曲が増えることは必然であり、図らずも自然にロックのダイナミズムを彼らは手に入れたのだ。この事実が、現在の彼らの最大の武器とも言えるのではないだろうか。

「シド、激しかったね。楽屋でニコ生で見てたんだよ。そしたら2曲目で“神セトリ”って出てたよ。まぁ、MUCCはのらりくらりと行きますよ」──逹瑯

と天邪鬼感全開のMCも、逹瑯が絶好調の証拠である。こうなると、このバンドの弾けっぷりはもう止められない。ライヴ中盤は「ピュアブラック」が入れ替わったのみで、セットリストに前日との変化はあまりないが、この日はライヴのニュアンスが全く違って見えた。バンド全体が歌心を伝えることに集中しているように見えたのだ。全員が飄々としながらも、やはりここはシドを意識していたのだろう。日ごとに表情を変えつつ、自分たちらしさをさらりと伝えられる彼らのパフォーマンス能力の高さを垣間見た。

そしてセットリスト後半には、MUCCの夏を感じさせる初期の名曲「家路」でノスタルジアが大炸裂。「優しくしてあげるから、怖くないから、こっちにこいよ」と、逹瑯らしく、皮肉的なまでに愛情に満ちたMCに導かれ、「MAD YACK」での暴力的なまでに激しいパフォーマンスにフロアは熱狂した。ラストは「故に、摩天楼」をプレイ。最新系のMUCCを提示して、彼らはステージを降りた。

アンコールは本編の鬼気迫る対決ムードから一転、お祭りムードへ。幕前に逹瑯とゆうやが揃って登場し、テレビでのお笑い番組を彷彿とするような爆笑トークを展開。2人の相性の良さを見せつけた。

10分以上にわたる爆笑トークの後、幕が開くとサプライズが。翌21日に誕生日を迎える逹瑯へのバースデイケーキが登場したのだ。さらにアットホームな空気に会場が包まれたが、この演出が、実は逹瑯自身によるものであることがYUKKEから明かされると、会場は生暖かくも微妙な空気感に包まれる。ロックシーンのジャイアンと称される彼の真骨頂。馬鹿馬鹿しさにも程があるとはこのことだ(笑)。しかし、メンバー全員の満面の笑みに満員のオーディエンスも破顔一笑。盟友同志ならではのアットホームな空気感は全開である。このお祭り騒ぎが実現できるのも、実は縁の深いこの2バンドならではだ。

そんな空気を引き裂くかのように、8人による演奏が始まったシドの楽曲「夏恋」に大歓声が上がる。ここからのお祭り騒ぎは愉快痛快なシーンの連続であった。ドラムセットに座るゆうや、それに対して手持無沙汰なSATOちが何故かセンターで踊り狂う。これもここしか見れない名(迷?)シーンの1つだった。

そしてラストに用意されたのはMUCCの「蘭鋳」だ。2つのバンドのメンバーがステージ上で激しく交わる。普段なら見られない名シーンの連続にオーディエンスの熱狂は頂点に達し、この日の幕が降りた。

数学の方程式上、1×1=1である。しかし、ロックの方程式では1×1が100にも1000にもなる奇跡の瞬間がある。そう、この日見た景色は奇跡そのものなのだ。

取材・文◎加藤龍一 撮影◎瀧本 JON...行秀

<Episode 6.「ARMAGEDDON」>
2014年8月20日@Zepp Namba
シド セットリスト
SE. ホムラウタ
1.吉開学17歳(無職)
2.循環
3.妄想日記
4.CANDY
5.隣人
6.capsule
7.敬礼ボウイ
8.park
9.ENAMEL
10.プロポーズ
11.dummy
12.眩暈

MUCCセットリスト
※後日掲載予定


■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 6.「ARMAGEDDON」>毎公演異なるアーティストとの2マンTour
2014年8月06日(水) Zepp Nagoya VS [Alexandros]
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月09日(土) 新木場Studio Coast VS 氣志團
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月17日(日) 京都KBS HALL VS GRANRODEO
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月19日(火) Zepp Namba VS BUCK-TICK
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月20日(水) Zepp Namba VS シド
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月22日(金) 川崎CLUB CITTA' VS D'ERLANGER
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月24日(日) 大阪城野外音楽堂 VS ゴールデンボンバー
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月26日(火) Zepp DiverCity VS MICHAEL
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月28日(木) 恵比寿LIQUIDROOM VS geek sleep sheep
OPEN 17:30 START 18:30

■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」>
2014年9月23日(火・祝) 国立代々木競技場第一体育館
前売券¥5,569(税込) 当日券¥6,500(税込)
※全席指定、3歳以上のお子様はチケットが必要です。
チケット一般発売日:2014年8月2日(土)

◆SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- 特設サイト
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◆MUCC オフィシャルサイト
◆SID オフィシャルサイト
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