【インタビュー】喜多村英梨「“アニメタル嬢だよね”って言われたい」

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アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『這いよれ!ニャル子さん』等に出演しながら、精力的にアーティスト活動をこなしている人気声優・喜多村英梨。ディープな風貌とへヴィな音楽性で、シーンの中では異彩を放っている彼女だが、その目線の先には明確な目標があった。放送中のTVアニメ『シドニアの騎士』のエンディング主題歌であり、5月14日にリリースされるシングル「掌-show-」は、その一つの完成形とも呼べるもの。作品との濃密なシンクロを声優ならではの目線で為した本作には、声優兼アーティストではなく、あくまで“声優アーティスト”という形にこだわる彼女の信念が凝縮されている。9月28日には舞浜アンフィシアターでのワンマンも決定。“白”の世界で“黒”に生きる葛藤を超えて、キタエリが羽ばたく。

◆喜多村英梨~拡大画像~

■声優というメインフィールドの王道でないこと
■むしろ人種が違うことは自分でもよくわかっているんです


――声優として、また、アーティストとしてご活躍の喜多村さんですが、このフィールドで、ご自身のポジションをどんなふうに捉えていらっしゃいますか?

喜多村英梨(以下、喜多村):もう、アバンギャルドだと思ってます! 声優というメインフィールドの王道でないこと、むしろ人種が違うことは自分でもよくわかっているんです。大人にも言われますからね。「アイメイクを落とせ」とか「白い服を着ろ」とか。もう、いろいろ(笑)。

――そういったテンプレのイメージが、何故だかありますよね。女性声優って。

喜多村:TVアニメのキャラクターだと毎週1回は聴けるのに対して、いわゆる“中の人”ってラジオ番組でもやってない限り、たまにしか触れ合えませんからね。おかげでキャラクターとリンクしやすい面もありますし、たぶん身近に感じられるとか馴染みやすいだとかっていう距離感を、とても大事にしてくださる方が多いシーンなんだと思います。だからどちらかというとカジュアルな感じを求められやすいんじゃないかな。つけまではなくナチュラルメイク推奨っていう(笑)。

――
▲「掌 -show-」初回限定盤
──ああ、なるほど。

喜多村:でも、キャラクターと混同されるというのは、声優としての芝居で……言葉は悪いですけど“騙せている”ということなので、技術者としては誇れることじゃないですか。だから役に寄り添う=演じる作業においては幾らだって良い意味での裏切りをみせられるし、むしろ、それが楽しいんです。逆に、喜多村英梨という自分の名前が全面に出る、いわゆる“アーティスト”としてのコンテンツでは、素のままありのままをみせたい。長く続けたいからこそ、自分に無い引き出しでやり抜くのは難しいなと常日頃から感じているし、「例えばここが白の世界なら、私は黒なんだろうな」っていうのは自覚してますね。

――やっぱり、昔から“黒”だったんですか?

▲「掌 -show-」通常盤
喜多村:そうですね。親からはアン・ルイスさんや大黒摩季さんを聴かされて育ったんで、ドッシリとしたバックの中に仁王立ちしてカラッカラの声でシャウトしてるような女性に、自然と憧れていったんです。そういう感じが“オンナ”というジャンルの定型をブチ壊してくれるようで、とても好きでした。じゃあ、きっとリスナーにも同じような人が一人はいるだろうし、異分子があるからこそ互いが引き立って面白いと感じてくれる人もいるだろうという希望的観測で、このアバンギャルドなスタンスを貫いてます(笑)。

――ただ、もともとアニメ自体はお好きだったんですよね?

喜多村:メッチャ好きでした! いわゆる「(美少女戦士)セーラームーン」世代で、当時から将来の夢は声優さんか、それがダメならマンガ家かアニソン歌手か、キャラクターデザイナーか……っていう感じで。母親もアニオタだったんで、洋画を観ながら「この声はあのアニメの声優さんだよ」みたいなトークも普通にしてました。その母親が「好きなことをやって生きていける人間はホンの一握り」とシビアなことを言う人間だったんで、じゃあ、私は絶対に自分の好きなことでメシ食ってやる!って、ずーっと思ってたんです。それで芝居の勉強をしたいと劇団に入った経緯があるので、そういう意味では白の世界に黒でいる今の葛藤も、嬉しい悲鳴ですよね。

――アーティスト活動でも、最初から“黒”を貫いていたわけではなく、“白”を演じていた時期もありましたもんね。

喜多村:需要と供給とタイミングって、やっぱり大事じゃないですか。最初から黒のままで飛び込むのではなく、自分の中にあった狙いの第一段階として、まずは真っ白いキャンバスに染まってみたんです。まず、今のレーベルに移籍して最初の3枚のシングルでは、それぞれの色を思いっきり出して、自分の技術の幅を見せられたらいいなと。そうすることで、“黒”を出したときに、“面白いヤツだな”って思ってもらえる伏線になるんじゃないかなと思って。そうやって段階を踏んだ上で、1stアルバムの『RE;STORY』(2012年7月発売)では白と黒の両面を見せたんです。

――さらに2ndアルバム『証×明-SHOMEI-』(2014年4月発売)では、ビビッドな和装という驚きのビジュアルを打ち出すまでになったと。

喜多村:いわゆる“声優さんっぽくない”っていうやつですね(笑)。やっぱり自分のクレジットが載るモノって、一生背負っていかなきゃいけないから、自信を持って“私はコレがやりたい”“これが私にとっての正解なんです!”と言える形でないと、喜多村英梨のパッケージには出来なかったんです。で、その制作の時点で今作のようなガッツリしたメタルをやりたい、“喜多村英梨ってアニメタル嬢だよね”って言われたい……っていうプランは提示させていただいてました。

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