【インタビュー】DIV、シングル「漂流彼女」に新機軸「嘘をついている人の音楽って浅いから、僕らは正直に」
DIVが5月7日、シングル「漂流彼女」をリリースする。原曲を制作したヴォーカリストのCHISA曰く「デジタル部分にこだわった」というサウンドは、彼らの持つポテンシャルとスケール感が十二分に発揮された新機軸だ。透明度の高い音の響き、浮遊するエレクトロ、クールに疾走するビート。DIVの音楽性が急速に広がり続けていくなかで、改めて浮き彫りとなったのが個々の演奏力の高さでもある。独自の手法でヴォイシングを極めんとする弦楽器のアプローチや、最先端をひた走らんとするモダンなリズム構築は、DIV本来が持つ美しい旋律を煌めかせた。バンド結成2周年の節目となるシングル「漂流彼女」についてはもちろん、興味深い個々のプレイヤーとしてのスタンスについて、収録3曲を題材に語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。
◆「漂流彼女」ミュージックビデオshort ver.
■誰かが決めた幸せな恋愛みたいなものを求めるんじゃなくて
■自分だけのラブソングを探していこうよということを歌ってます
──新しいシングルを作るにあたって、バンドとして掲げたテーマやコンセプトなどはありましたか?
CHISA:前シングルの「you」がバンドサウンドを重視した作品だったので、今回はDIVのデジタル面を見せたいという想いがありました。デジタル・テイストは元々DIVが持っているものだけど、今まではバンドサウンドにちょっと足す程度の使い方だったんですね。なので、自分たちの新しい面を見せたくて、次のシングルはデジタル部分にこだわったものを表題曲にしようということが大雑把なコンセプトとしてありました。あとは、前シングルから今回のシングル、さらに次のシングルまで、自分たちの中では流れを考えていて。そういうことも踏まえて形にしたのが、タイトル曲の「漂流彼女」です。
──曲作りの段階からデジタルテイストを意識していたのでしょうか?
CHISA:いや、僕が作った原曲の時点ではもう少しキャッチーというか、いわゆるシングルの表題曲っぽい感じでした。でも、バンドで話した結果、変に媚びたりせずに、この曲の良さを活かそうということになって。それで、まず僕が原曲を大幅にリアレンジして。その後、4人でさらに詰めて、今の形に仕上げたんです。
satoshi:その結果、今までの曲の中でも最初のデモと完成形が一番変わった曲になったんですよ。元々はドストレートな曲で。デジタル色は薄くて、今までDIVが出してきたシングルの表題曲と同じように、サビのキャッチーさが押し出されていた。その後、CHISAがリアレンジしたら、前の曲をイメージしながら新曲を作ったのかな……と思うくらい変わってた(笑)。それがすごく良くて。リアレンジは正解だったなと。
──狙いどおり、新しいところにいけましたね。それに、デジタリックな楽曲に「漂流彼女」というタイトルを付けるのはすごくいいなと思いました。
CHISA:ありがとうございます。ワクワクするタイトルって、あるじゃないですか。たとえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか。“えっ? 未来に戻るってどういうこと?”みたいな。そういう人を惹きつけるタイトルにしたいと思っていたんです。元々の曲調に合わせて歌詞は浮遊感のあるものにしようとしていたんですね。そうしたら、“漂流彼女”という言葉が降りてきた。いい言葉が浮かんで良かったなと自分でも思っています。
──曲調が導き出したタイトルと歌詞だったわけですね。
CHISA:はい。歌詞はフラレてしまった女の子が漂流していく様子を描いてて。僕は今まで、恋愛の歌はあまり書いていないんです。なぜ自分は恋愛の歌を書かないのかなと考えてみると、聴いている人に恋愛観を押し付けるのが嫌なんですよね。“これが幸せな恋愛なんです”みたいな歌詞を書いたら、今、幸せじゃない人がこれを聴いたらどういう気持ちになるんだろうと思ってしまって。自分が恋愛を題材にした歌詞を書かない理由と、今、幸せな歌詞を聴きたくない人の気持ちを融合させた歌詞というか。誰かが決めた幸せな恋愛みたいなものを求めるんじゃなくて、自分だけのラブソングを探していこうよ、ということを歌っています。
──なるほど。歌詞も要チェックです。続いて、プレイに関する話をしましょう。それぞれDIVでプレイするうえでこだわっていることなども交えつつ、「漂流彼女」で採ったアプローチについて話していただけますか。
satoshi:DIVでドラムを叩くうえで一番意識しているのは、“モダンである”ことです。その時々でモダンとされるプレイを採り入れることに関して、日本のロックは一歩遅れている気がするんですよね。批判しているわけじゃなくて、純粋にそういう状況になっていると感じていて。なので、僕はなるべくタイムラグが出ないように、今モダンとされているロック・ドラマーのフレーズを研究して、それをDIVに活かすことをテーマにしています。「漂流彼女」はそうでもないけど、カップリングのドラムプレイはまさにそういうものになっていて、モダンなハードコア/メタルコアの要素を詰め込みました。
──たしかに。とはいえ、スタイリッシュな曲調の「漂流彼女」でも、3番のAメロでパワフルな2バスを踏むという個性的なアプローチをみせています。
satoshi:今までたくさんCDを出してきたけど、自分の中にはsatoshiらしいフレーズを叩かなければいけないという意識が常にあって。若干複雑で、そこまでテクニカルじゃないけど、簡単にはできなさそうなフレーズを叩くということを心がけているんです。前衛的でいたいというか。「漂流彼女」みたいにエレクトロテイストを活かした洗練感のある曲で、2バスを踏む人は、あまりいないと思うんですね。そこが自分の行く先なのかなと感じてて。あとは、最近自分の中で思い当たったんですけど、テクニカルで繊細さもあるフレーズをパワフルに叩くというのが理想形なんです。自分の得意とするスタイル的にも、自分の見た目的にも、そういうスタイルが一番いいなと思って、今はそこを追究しています。
ちょび:僕の中では、ベースというのは縁の下で支える役割だと捉えてて。そのうえで、たまにチラッと魅せるぜ、みたいなベースが好きなんですよ。たとえば、ギターのコードアレンジをしているときに将吾から“ベースはこういう風に動いてほしい”というリクエストも結構あるんですけど。将吾はコードに強いこだわりを持っていて、ギターとベースでコードの音を重ねることで和音を構築したりすることも多いんですよ。「漂流彼女」は、将吾の要望に忠実に応えた結果、歴代のDIVの中でも一番ベースが動いている楽曲になりました。今までの自分にはなかったアプローチでベースを弾くことになって、すごく楽しかった。それに曲調を踏まえて、いつも以上にうねりを出すことも意識しました。
将吾:俺がギタープレイヤーとして心がけていることは、音を聴けば“これはDIV将吾のギターだな”と分かるプレイをすること。それに、耳コピがしにくいギターを弾くということにもこだわっています。
──えっ? “コピーしたくなる”ではなくて、“しにくい”ですか?
将吾:そう(笑)。特にコードですね。速弾きとかは練習すれば誰でもできるじゃないですか。俺は、そういうことではないところで、耳コピした人に“あれ? なんか違うな”と感じさせたい。そうするために、かなり凝ったことをしているので……もしバンドスコアを出したとしても嘘を書きます(笑)。
一同:アハハ!! なんだ、それ?(笑)
将吾:それくらいコードワークにはこだわっています。今回の「漂流彼女」は、いつもと違ってシンプルなコードですけどね。シーケンスで広がりや浮遊感を出して、ベースがうねる。そうなると、ギターは広げないほうが音像が締まるんですよ。たとえば、レコーディングでバッキングを2本入れるときにLchとRchで別々のことをすると音像が広がるんですね。逆に、同じことを弾くと少し真ん中寄りに聴こえる。なので、この曲は敢えてLchとRchで同じフレーズを弾いています。ただ、まったく同じ音で弾くと真ん中に寄りすぎるから、LchとRchでは少し音色を変えました。
──細かく気を遣っているんですね。
将吾:はい。もっと広げたいときはテンションコードを弾いて、そのテンションノートに対してハモッたコードを入れるようにしています。もの凄く広がり感が出ますよ。いつもそうやって“広さ”を調節しています。
──やりますね。でも、バンドスコアとかでは本当のプレイを明かさない?
将吾:明かさない(笑)。
CHISA:ははは、キテるな(笑)。
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