【インタビュー】KAMIJO、全7楽章の長編交響曲完成「音楽に国境はないと言いますけど、あるんです」
KAMIJOが2014年3月5日、ミニアルバム『Symphony of The Vampire』でソロ・メジャーデビューを果たした。この作品は全7楽章、1,103小節で構成、全28分を越える長編交響曲として世に放たれる大作だ。構想から費やした制作期間は約一年。舞台は18世紀フランス革命にあり、ルイ17世の耽美派(ヴァンパイア)への目覚めがテーマとなった前シングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」のストーリーを完璧なまでに描き切ったものだ。フィクションとノンフィクションを混在させた物語は、メタルを軸に、シンフォニックあり、ヘヴィにしてラウドあり、美しきバラードありと、様々なテンポと調を行き来してドラマの起伏をなぞる。この音楽に姿を変えた壮大なスペクタクルのすべてをKAMIJO自身が解き明かすインタビューをお届けしたい。
◆『Symphony of The Vampire』トレーラー
■僕はヴァンパイアこそ耽美の極みだと思っているんですよ
■血を糧にしているヴァンパイアは美しくなければいけない
──これまでLAREINEに、Versaillesにと、ずっと耽美的世界観に貫かれたバンドをされてきたKAMIJOさんですが、その大元ってどこにあるんでしょう?
KAMIJO:始まりは薔薇が好きというところなんですが、遡ると一番大きいのは親の影響ですね。親が薔薇を育てていたり、家にクラシックが流れていたり、尊敬するポール・モーリアも親から聴かされたもの。そうやって小さい頃に見聞きしていたものの影響が、実際にバンドを始めてみたときに色濃く出ていて、それに気づいたときに初めて親に感謝できました。
──そうした家庭環境の中で、美的感覚が研ぎ澄まされていったと。
KAMIJO:いや、ごく普通の子供でしたよ。絵とかで賞を取ったことはありましたけど、音楽も本格的にやっていたわけではなかったですし。髪が少し長くて耳に引っかけてたら“女の子みたい”と言われていたくらい(笑)。
──では、バンドを始められたキッカケは?
KAMIJO:ずっとテニスをやっていたのが、先輩とケンカをしてテニス部に居づらくなってしまい。ラケットを逆さまに持ったらギターみたいだなと、ギターを始めたのがキッカケですね。そうしたら高校の同級生がMALICE MIZERさんのスタッフをやっていて、彼の紹介で僕もローディーをやらせてもらうことになったんです。MALICE MIZERさんは、とても自分好みの世界観をやられていたバンドだったので。
──そうしてご自身もバンド活動を始め、2012年12月にはVersaillesが活動休止となりましたが、どういう経緯でソロ活動をやることになったんでしょう?
KAMIJO:そもそもVersaillesを始める前に僕、ソロをやろうとしてたんですよ。そうしたところ良いメンバーに出会い、Versaillesというバンドを組んだという経緯だったので、バンドの活動休止後にソロをやるのは自然な流れでしたね。フランス語で女王、つまり僕の中ではマリー・アントワネットを指すLAREINEに、彼女が居住した宮殿であるVersaillesというバンド名で活動してきた僕が、じゃあ、次に何を描くんだろう?ということで、フランス革命のその後を調べて出会ったのが“ルイ17世”だったんです。マリー・アントワネットとルイ16世の息子であるシャルル王子のことはよく知っていたけれど、彼がルイ17世と呼ばれていたこと、フランス革命の最中に悲惨な死を遂げていたことは知らなくて。ならば、僕の曲の中で彼を王位に就けようと書いたのが、ソロ第一弾作「Louis~艶血のラヴィアンローズ~」(2013年8月発売)と、今回のメジャーデビュー作『Symphony of The Vampire』なんです。
──なるほど! しかし、その時代のフランスに何故そこまで惹かれるんでしょうね。
KAMIJO:やっぱり、フランス革命には民主主義の根源があると思うんですね。政治的なところは全く詳しくないんですけども、一人の人間として革命というもの自体に熱意というか、人の想いの塊を感じてしまう。それが僕を引き寄せてるんでしょうね。
──わかります。そんなルイ17世がヴァンパイアによって助け出され、実は生きていた……というストーリーが、まさにKAMIJOワールド。
KAMIJO:僕は、ヴァンパイアこそ耽美の極みだと思っているんですよ。血は人間のエネルギーの源であり、血がダメになると生きてはいられないわけですから、その血を糧にしているヴァンパイアは美しくなければいけない。しかも“永遠”というものに惹かれる僕にとって、永遠に生きるヴァンパイアは、とても魅力的な存在なんです。
──破壊を伴う“革命”と“永遠”は相反するものだけれど、共に極端で日常では触れる機会がないからこそ惹かれてしまう心理には共感できます。
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