【キース・カフーン不定期連載】日本の音楽ビジネスの“ガラパゴス化”

最近日本で頻繁に使われているビジネス用語のひとつに“ガラパゴス化”というフレーズがある。日本の音楽ビジネスでもこの“ガラパゴス化”が起こっている。日本特有の側面を数多く持つ日本の音楽ビジネスは、一般的に外国人(特にニューフェイス)の参入をブロックしている他、日本企業の海外での成功を妨げている。ここでいくつかの例を挙げてみよう。
1.従業員としてのアーティスト
アメリカとヨーロッパでは、ミュージシャンは音楽を提供することで周囲にインスピレーションを与えてくれるクリエイティブな人々として認識されている。彼らは才能に恵まれているが自身の活動のビジネス面には関心が低いため、その方面のプロを雇うことが多い。その一方、日本では“アーティスト”はあくまでもマネジメント会社の従業員という扱いで、音楽の才能よりもルックスが重視される傾向にある。マネジメントはアーティストが確実に人気を集めて利益を得られる様に、リスクを伴う冒険はせずに無難な(つまり予測可能で退屈な)活動をすることを奨励する。
2.革新をもたらすインディーズ

3.いまだにCDが主流

4.iTunesは王様ではない
ビルボードによると、2011年のアメリカのiTunesの市場シェアは全体の38.23%だった。iTunesは売上げのデータを公表していないが、日本のiTunesの市場シェアがアメリカよりも格段に小さいことは一目瞭然だ。オリコン(日本のビルボード)のチャート情報にはiTunesの売上げは含まれていない。海外では、iTunesやその他のデジタルプラットフォームは効果的なディストリビューション法、そして著作権保有者に適切な著作権料が支払われることで歓迎されているが、日本ではCDの売上げに影響をおよぼす敵として見られている部分が多い。
5.ストリーミング
アメリカとヨーロッパではiTunesの絶頂期は過ぎ、今後はストリーミングが主流になると言われている。現在、このストリーミング市場を独占しているのはSpotify、続いてPandora、Rdio、Rhapsodyが競争相手として名を連ねている。また、どんな曲も無料で映像、歌詞、画像付きで聴くことのできるYouTubeがストリーミングのリーダーだという意見もある。自分の好きな音楽にいつでもアクセスできる現代では多くの若者が音楽を所有することの必要性を感じていないようだ。ところが、日本ではストリーミングは著作権保有者によって締め出しを食らっている。Napsterが主要カタログの獲得を妨害された話は有名だが、その他にも主要コンテンツの著作権保有者との交渉が難航中のSpotifyとRdioが日本でのサービス開始を延期している。
6.国際化

7.入手困難な状況
アメリカに住んでいる筆者は邦楽ファンだ。ところが、例えばキャロルの「ファンキー・モンキー・ベイビー」、SMAPの「世界に一つだけの花」、ピンク・レディーの「UFO」(アメリカでリリースされている)、山下達郎の「クリスマス・イヴ」を買いたいと思っても、アメリカの数少ないCDショップには置いていない。iTunesでも配信されていないので、あるとしたらAmazonで輸入盤を$49(アメリカの新品のCDの5倍の値段)で購入しなければならない。よって、筆者の様な消費者は手に入れるのを諦める、もしくは違法サイトからダウンロードするしかないのだ。アメリカの音楽をはじめ、60年代のブリティッシュ・バンドや韓国のボーイズ・バンドなど世界119カ国の音楽は全てiTunesで見つけることができるのに、邦楽を探すのは至難の技なのである。
8.テレビ・映画・アニメは埋もれた宝の山
それ自体がひとつの芸術である映画は、作品を通して音楽を紹介する素晴らしい方法になり得る。メイド・イン・ジャパンで世界的に知られているテレビ番組は少ないが、多数の優れた邦画や世界最高峰のアニメ作品があるのは誰もが認めるところだろう。しかし、これらの作品を海外に住む人が購入することは難しく、ライセンス契約でリリースされたDVDやiTunes、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアでは人気だが他国ではあまり知られていない映像サイトのVizやCrunchyrollで配信されているものに限られている。邦画の中にはちゃんと字幕がついていなかったり、複雑な著作権問題が絡んでいる作品が多い。残念ながら日本発のテレビ、映画、アニメは海外でなかなか観ることができないのが現状だ。音楽と同様に、ファンは諦めるか違法サイトからのダウンロードに頼るしかないのである。
9.ジャパン・オンリー

10.レッツ・ダンス!

11.クールジャパン
多くの外国人が日本のポップカルチャーはクール(かっこいい)と感じていて、憧れているのは紛れもない事実だ。日本はこのまま閉ざされた王国でいることを望んでいるのだろうか?“クールジャパン”キャンペーンがこのまま目立った結果を出せない大手企業に資金を浪費させるだけで終わらず、日本のポップカルチャーとの架け橋になってくれることを願っている。
キース・カフーン
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