【インタビュー】doa、8thアルバム『WANTED』にさりげなく10年分の感謝「人の世というものは必ず誰かが誰かを求めている」
2014年にデビュー10周年を迎えるdoaが1月22日、通算8枚目となるフルアルバム『WANTED』をリリースする。配信限定シングルの初CD化3曲を含む、全12曲を収録したアルバムは、全曲のミックスダウンを徳永暁人自らが担当。ウエストコースト・ロックのテイストを昇華した個性的かつ良質な楽曲群が実に魅力的であることに加え、キャラクターの異なるシンガー3人が織りなす華やかなボーカリゼーションも見事な聴き応えだ。楽曲制作、サウンド&プレイに一層の磨きが掛かったと同時に、アーティストとして増した円熟味がそのままパッケージされた新作について、バンドの中枢を担うボーカル&ベースの徳永暁人に聞くロングインタビューをお届けしたい。
◆doa 画像
■聴いたときにどこかへ出かけたくなるようなアルバム
■大人が聴けるロック・アルバムにしたいということを常々メンバー同士で話している
──doaは2014年にデビュー10周年を迎えます。ニュー・アルバム『WANTED』を作るにあたって、そのことは意識されましたか?
徳永:まったく意識しなかったです(笑)。人に言われて、もう10年なんだ……という感じでしたから。本当に気づいてなかったんです。
──(笑)。では、アルバムを作るにあたって掲げたテーマやコンセプトなどはありましたか?
徳永:聴いたときに、どこかに出かけたくなるようなアルバムにしたいなと思っていました。それは今回に限ったことではなくて、doaはいつもそういうところを目指しているんです。それに、大人が聴けるロック・アルバムにしたいということも常々メンバー同士で話していて。『WANTED』は、ジャケット写真とかも含めてより大人っぽくて、なおかつ男っぽいイメージのアルバムに仕上がったんじゃないかなと思います。
──同感です。良質なメロディーとストレートなアレンジを活かした王道的なアプローチながら、個性と聴き応えのある楽曲が揃っていることも要チェックです。
徳永:そう言ってもらえると嬉しいですね。2013年にアコースティック・ツアーをやったことも大きいんじゃないかな。アコギと歌だけで聴かせる機会が増えたことで、メロディーとコードという核の部分がしっかりしていることの大切さを改めて感じたので。それが今回のアルバムには反映されている気がしますね。
──いろいろな形態で楽曲を演奏することの大切さを感じます。制作には、いつ頃から入ったのでしょう?
徳永:doaは、もう常にデモ音源を作っているんです。2013年の頭にアルバム『RIDE ON』をリリースしたんですけど、その直後から曲を作り始めて。夏のアコースティック・ツアーの間も曲作りとレコーディングをしていましたから。その後、僕と大田がソロでツアーをしたんですけど、その期間中も作ってましたね。だから、もうずっと(笑)。そういう感じだったから相当な数の新曲ができていて、その中から厳選したものをパッケージしたのが『WANTED』です。
──意欲的ですね。デモを作った段階で、新しいアルバムの指針になるなと感じた曲などはありましたか?
徳永:タイトル曲になっている「WANTED」です。今回はアップテンポの曲が多くて、ライブで盛り上がる曲とか、それこそどこかにドライブへ行きたくなるような曲が多いと思うんですよ。そういう中で唯一のバラードで。と同時に、この曲が形になったことで、すごく力強いテーマができて、次のアルバムはこれを核に広げていこうと決めることができたんです。
──「WANTED」は、アメリカの広大な大地を思わせる“乾いた哀愁感”が印象的なナンバーです。
徳永:それが、いつも僕らが目指しているところなので。メンバー3人揃って、アメリカのウエストコーストの乾いた空気感が大好きなんですよ。伝統的なブルーグラスやカントリー、ウエストコースト・ロックはもちろん好きだし、ニュー・カントリーと呼ばれているようなジャンルの音楽にもインスパイアされている。だから、バラードを作っても自然と西海岸っぽい匂いのあるものになるんです。
──ウエストコーストのテイストを採り入れつつ、日本人好みの音楽に仕上げるのは意外と難しい気がしますが、doaの楽曲はそういう音楽になっていますね。
徳永:本当ですか? そこまで計算していないです(笑)。自分が好きなテイストをペタペタ貼り付けて作ったようなイメージなので。なにかを狙って作ったというよりは、好きなように作ったら、こうなったというほうが近いです。
──アメリカン・テイストと日本人らしい洗練感のバランスが絶妙です。それに、「Bring Me Back My Freedom」や「コンビニマドンナ」などで披露している独自のアッパーな味わいも要チェックです。
徳永:たしかに、「Bring Me Back My Freedom」は今回のアルバムの中で一番テンポが速いけど、決して激しい曲ではなくて。この曲は、頭から3人でずっとボーカルをハモっているんですけど、サビ・パートではもっとコーラスを分厚くしたりしているじゃないですか。最近は、3人の声の力がすごくまとまってきていることを自分達の中で感じていて。歪んだギターに頼らなくても迫力を出せるフォーメーションができてきているんです。デビューした頃だったら、もっとギターの音を歪ませていたと思うけど、今回はそれもいらないかっていうくらいな感じになりました。
──ナチュラルな歌の力ですね。
徳永:そういうところもアコースティック・ライブを重ねてきたことで培われた気がしますね。「コンビニマドンナ」は、僕の中にはコンビニにまつわることで歌詞にしたいことがいっぱいあって書き溜めていたんですよ。この曲はその中のひとつ。主人公の男がコンビニのお姉さんに恋をする歌ですけど、歌い方によってはものすごくアブナく聴こえると思う(笑)。僕が濃く歌ったら、ちょっとヤバいなと。大田がハイトーンで歌うなら、この歌詞でいけるかなと(笑)。
──徳永さんバージョンも聴いてみたい気がします(笑)。「コンビニマドンナ」もそうですが、クレジットを見るとdoaは歌詞を書いた人がメイン・ボーカルを取るというわけでもないですね。
徳永:そう、誰が歌うかということに関して決まりはないです。要は、僕ら3人がどう見えるかといったことは、どうでもいいんですよ。たとえば、夏感があって、すごく元気が出るような爽やかな曲を作りたいと思ったとするじゃないですか。リスナーにそういう感覚を味わってもらえて、しかも僕らの世代が聴いても共感できるような曲を作りたいねというところが出発点なので。そういう曲に仕上げるには誰が歌うのがベストだろうということでボーカルを決定するんです。「俺が書いたから、俺が歌うわ」とか「全体のバランスを取るために、この曲は違う人間が歌ったほうがいいんじゃないか」みたいなことは一切ない。リスナーに伝えたいことをしっかり伝えるという目的が先にあって、誰が歌うかは後から着いてくることなので。3人で揉めることはまずなくて、むしろ譲り合ってなかなか決まらないことがあったりします。
──楽曲ありきなんですね。とはいえ、それぞれが得意な歌だけを歌っているのかというと、決してそんなことはなくて。『WANTED』では3人それぞれが新境地のボーカルも披露されています。
徳永:日々精進だという心構えは、メンバー全員の中に常にあるので。同じパートが3人いるからこそ刺激を受け合うし、いい意味でライバル心みたいなものがあるんですよ。だから、1ツアー回るだけでも全員が成長するし、成長したことで、それぞれが新しいことにチャレンジしようという気持ちになるんです。
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