【ライヴレポート】MUCC、<MUCC 2DAYS CIRCUIT 2013 ”Hypnos & Thanatos”>新木場COAST公演で「最高にバカになろう!」
MUCCが11月27日および28日、10月12日よりスタートさせた全国ツアー<MUCC 2DAYS CIRCUIT 2013 ”Hypnos & Thanatos”>の新木場STUDIO COAST公演を行なった。この日のライヴはファイナルの大阪を前にしたものであり、東京では追加公演の渋谷AXに続く2回目となる。
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1日目の“Hypnos”は、「ホムラウタ」をバックにメンバーが登場すると、演奏されたのは、なんと「新曲1」。ステージに歌詞が映し出されるというMUCCとしては、少し懐かしい演出で会場を盛り上げる。「サル」「ガーベラ」で、オーディエンスを一気に盛り上げた後、疾走感あふれる「新曲2」が、その熱を加速させた。
中盤では、少し懐かしいエレクトロサウンドに骨太のギターが絡み合った最新シングル「HALO」を披露。いくつものトップライトがくるくると回りながらステージを照らし、サイケデリックな印象を持つカップリングの「テリトリー」と「Monroe」が立て続けに演奏される。ここまで、言ってみればほぼ新曲で構成された内容なのにもかかわらず、会場は足元から熱気で包み込まれるような空気が作り出されていた。“聴かせる”というのが、ミディアムな曲を演奏するという意味ではなく、歌詞や音を体に染み込ませるというものなのだということが、このブロックの流れで強く感じさせられた。
「Monroe」の後半で、マイクをガツンと音を立てて落とし、踊ったヴォーカリストの逹瑯は、続く「メディアの銃声」で、6本のスポットライトを浴びながらステージ前方で叫びながら訴えかけるように歌った。最後には、不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと中指を立てた手を銃の形にして客席へと向ける。たった数秒の出来事だったが、すべての感情が凝縮されたそのパフォーマンスは、まるでモノクロのショートフィルムを観ているようだった。
優しいハーモニカが響く「君に幸あれ」から後半で一気にパワーを解放した感覚のある「YOU&I」では、モッシュの嵐へ。ギターと客席との掛け合いで盛り上がる「名も無き夢」も、オーディエンスを満足させるだけのハードなエッジさは持っていながら、どこかどっしりと悠然とした空気が漂っていた。それは、“聴かせる”というコンセプチュアルな部分がそうさせたのか、彼らの存在感をそう受け止めてしまったのか定かではないが、ラストの「遥か」が、まさに“Hypnos”を象徴するような1曲として胸に響いたのであった。
迎えた2日目の“Thanatos”。紗幕に最新シングル「World’s End」のミュージックビデオが映し出されると同時に演奏がスタートした。途中で映像がカラーになったところから、スクリーンにメンバーの姿が見えるようになるという趣向だ。演奏が終わると少し食い気味に幕の向こうでYUKKEのベースから鳴り響く低音で会場の空気が一気に変わる。スクリーンの向こうで逹瑯が「嫌い…嫌い…」と指を差しながら、まるで品定めをするように歩き、「あなたが大嫌いです!」の雄叫びと共に紗幕が一気に落ちる。と同時に客席に向かって巨大な照明が降りて、客席を煽り出した。まさに“Thanatos”。暴れろと言わんばかりの演出にオーディエンスは一気にヒートアップしていく。
続く「茫然自失」では、ブレイクタイミングでミフロントマンの3人が、中央で同時にジャンプする瞬間があった。MUCCでは、あまり見慣れない光景なのだが、それも合わせて飛んだというわけではなく、自然とそこで飛ぶものだという感じこのツアーで彼らが培ってきたもののように見えた。
5曲目の「夢死」で、逹瑯が「行くぞー!」と叫ぶまで、彼らから言葉はない。それまでの泥臭い力強さを感じさせる流れから一転、「アゲハ」で妖艶なギターソロからメタルサウンドを感じさせたかと思うと、続く「G.G.」では、ライトがくるくるとまわり、ダンサブルな装いに変化。ステージパフォーマンスも一気に軽やかになる。まるで、ここ数年のMUCCのサウンドの変化を一気に凝縮してみているかのような流れであり、その振り幅を感じさせない彼らの確固たるアイデンティティみたいなものを改めて感じる瞬間でもあった。
「今日は最後まで汗だくな感じだぜ。みんな最高にバカになろう!」
ここでやっと逹瑯が叫んだ。後半の一発目を飾るのは、前日にも演奏された「HALO」。前日、“聴かせる”曲としてその役目をしっかりと果たしたと思われたこの曲は、SATOちのドラムで一気に解放される「ハニー」「ママ」へと続く曲として、“今のMUCC”の音として、しっかり客席を暴れさせる1曲になっていた。
YUKKEがアップライトベースを掲げると、逹瑯の「いこうか」という声で3人ステージ中央で向かいあったかと思うと“ウォーッ!”という掛け事ともに「World's End」のカップリング「自演奴」へ。「死んでもらおうと思って」と演奏された「咆哮」では、リズム隊がたたき出すスラッシュ・ビートが会場を震わせる。ミヤが「声出せー!」と叫ぶと、もう頭を振らずにはいられない。
ライブも終盤。「MAD YACK」では、逹瑯がマイクをくるくるっとしたパフォーマンスを見せると、その合図を察知したオーディエンスたちが、客席にいくつものサークルを作り上げた。「いける?」の声に激しく反応し、溜めに溜めまくった勢いをギターの音と共に解放し、「GO TO FLY HIGH!」シャウトで入り乱れる。もう、はっきり言ってぐちゃぐちゃだ。楽しくてしょうがない、その高揚感のまま「蘭鋳!」と叫べることの喜びすら感じるステージだった。
アンコールでステージに呼び戻された彼らは、毎週末ライブが行われると1ヵ月があっという間だと語った。そして、その1本1本で確実にステップアップしていけたことを感じたと逹瑯が言う。その後、YUKKE、ミヤがツアーの感想を、SATOちがミュージックビデオの話をした後、2013年の東京でのワンマンはこれで最後だという話になったとき、「15周年を長く祝い過ぎて、どうやら16年目に入ってまで祝ってたらしいことが判明」したことが告げられた。現在は、すでに17年目に突入した……というところで、どこでどう計算したらそうなるのかと「今やることじゃないけど」(ミヤ)と年数を確認し始める。最終的に理解しないまま、「次やりづれぇし」と笑いながらアンコールへと突入。もちろん、そんなことにブレることはなく、東京のラストを華々しく飾ってくれた。
ツアー<2DAYS CIRCUIT 2013 ”Hypnos & Thanatos”>は、12月22(日) に大阪オリックス劇場で行われる「MUCC 2DAYS CIRCUIT 2013 FINAL“Hypnos vs Thanatos Z -神と神ドーンΣ(゜Д゜)-”」でファイナルを迎える。変幻自在なサウンドメイクを持ってしながらも、その存在感はけっしてブレることない。17年目(かどうかは、定かではないが)に突入しながらも、落ち着くどころか、さらに期待値を高めるバンドであることをこのツアーが証明した。
取材・文◎大庭利恵
撮影◎木村泰之/石井亜希
■<MUCC 2DAYS CIRCUIT 2013 FINAL "Hypnos vs Thanatos Z -神と神ドーンΣ(゜Д゜)-">
2013年12月22日(日)大阪・オリックス劇場
OPEN 16:00 START 17:00
前売券¥5,800(税込)当日券¥6,300(税込)
※全席指定、未就学児童入場不可
◇プレイガイド先行受付
楽天チケット先行:2013年11月23日(土)10:00~12月2日(月)9:59 http://r-t.jp/mucc
CNプレイガイドweb先行:2013年11月23日(土)10:00~12月3日(火)22:00 http://p.tl/O3CV
◇チケット一般発売:2013年12月7日(土)
[問]キョードーインフォメーション 06-7732-8888
◆チケット詳細&購入ページ
◆MUCC オフィシャルサイト
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