【インタビュー】DIR EN GREY「バンドの持っているパワー感だったり、メンバーそれぞれが思っていることとかが見えてくればいいかなと思うんです」

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現在、国内ツアー<TOUR2013 GHOUL>で斬新なパフォーマンスを続けているDIR EN GREYが、新たなドキュメンタリー作品『TOUR12-113 IN SITU-TABLA RASA』をリリースする。メインとなるのは、今春の日本およびヨーロッパでのライヴとそれに付随する映像。強靭なパフォーマンスそのものに説得力があるのはもちろんだが、メンバーの貴重なインタビュー・シーンなどからも、DIR EN GREYとはいかなるバンドなのかが明確に見えてくる。

■<DIR EN GREYとは何か?>を喋り倒したんですよ
■でもインタビューのシーンではほとんど使われてない(笑)


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――まず、今回の『TOUR12-113 IN SITU-TABLA RASA』は、どのような経緯でリリースすることになったのでしょう?

薫:去年、『TOUR2011 AGE QUOD AGIS』(Vol.1およびVol.2)を出しましたが、1本のライヴではなく、いろんなところの映像を押さえたものを定期的に出していこうかなぁと思ったんですよ。タイトルは違うけど、流れ的にはあれが1と2で、これが3みたいな感じなんですよ。もちろん、舞台裏というのもあるんですが、ライヴの映像ものって、ツアー・ファイナルだったり、デカ箱(規模の大きな会場)だったりのものになりがちじゃないですか。ただ、ライヴは1本1本、空気感だったり、テンション感だったりが違ったりする。もし同じ曲が入っていたとしても、いろんな表情で観られたりもしますからね。『TOUR2011 AGE QUOD AGIS』のときは京の喉のことがあったんで(声帯結節および音声障碍で活動を休止)、わりとそれがメインのようにもなってるんですが、バンドの持っているパワー感だったり、メンバーそれぞれが思っていることとかが見えてくればいいかなと思うんです。自分も映像を観たときに、メンバーの仕草だったり、話していることで、なるほどとも思うし、そういうのが見え隠れすれば、よりバンドが面白く見えてくるかなと。

――普段、メンバー同士では会話しないような話も出てきていると思うんですが、改めてDIR EN GREYらしさを自分自身でも気付かされる面もあるのでは?

薫:想定外というか、突拍子もなさすぎることは特にないですけど……メンバーと直接話しているときのほうが、突然そういうのがやってくるんですよ。たまにしか喋らないんですが、「俺はあれはこうやと思う」「え? そう思ってた!?」みたいな(笑)。だから、性格もわかってるし、やっぱりそう思うんだなとか、そういう感じではありますね。

――確かに今回の映像も、DIR EN GREYを知る人には、安心感のようなものもありますね。こういうことを言ってくれそうだという期待に応えてくれるといいますか(笑)。

薫:画面に映っているときの雰囲気で、こういうことを言いそうやなっていうのもわかりますもんね(笑)。ただね、最後のほうに出てくるインタビューのシーンでは<DIR EN GREYとは何か?>みたいな話になってますが、結構、喋り倒したんですよ。でも、そこがほとんど使われてない(笑)。

――編集すると短くなりがちですからね。

薫:そう。肝心なところのパーツだけが、ポッポっと入る感じになっててね。その話の前後がないと、どういう意味に聞こえるのかなぁとも思うんですけど、あまりに熱すぎても困るし、これでいいのかもしれないですけどね(笑)。でも、監督とかに聞くと、みんなバラバラのことを言ってるんだけど、最終的には同じ所を見ているみたいな話になったというので、なるほどなと。

――そうでしょうね。普段のインタビューでも、それぞれ言い方は異なりますが、最後は同じようなところに行き着く。そんなところからも、DIR EN GREYはこの5人が絶妙のバランスを保ちながら一体となっていることを実感しますよ。さて、5月中旬から下旬にかけての国内ツアーの模様は、特にファンの人は気になるところだと思うんです。5月15日の東京・新木場スタジオコースト公演の翌日、突然の異変が発覚する。当時の状況の詳細が初めて明らかにされたわけですが、メンバーは至って冷静に対処している。そこも百戦錬磨のバンドらしいなという印象を受けますよ。

薫:まぁ、変な言い方ですが、慌ててもしょうがないんで、やれることをやりましょうと。特に京は自分のせいでどうなってしまうことを一番嫌うんですよ。足を引っ張りたくないというかね。だから、俺らも普通にしているほうがいいかなと思うんですよ。

――5月16日のライヴだって、中止になってもおかしくはなかったわけですが、さらに1週間後には渋谷公会堂での特別なライヴも決まっていた。当日までどんな気持ちで待ち受けていたんですか?

薫:やる前提で動いてたんで、しっかりそれまでに準備して、あとは本人に委ねようと。京は絶対にやると言うんですけど、医者がNGと言ったら、やめておこうということは決めていたんですよ。無理してやって、すべてが壊れてもよくないし、せっかく来てくれた人に、自信を持ってやれていない姿を観てもらうのもよくないですから。

――その渋谷公会堂公演は、『THE UNRAVELING』の完全受注生産限定盤を買った人のみがチケットを買えるという、かなりスペシャルなライヴだったわけですが、実際にやってみてどうでした? 本作に収められているのは「鴉」のみではありますが。

薫:この流れでやってきたツアーとは、曲の並びとかを少し崩したんですよね。もちろん、新たに「MACABRE」(『THE UNRAVELING』の完全受注生産限定盤のみに収録された再構築ヴァージョン)がセットリストに入ってきたというのもあるんですけど。なので、ライヴの雰囲気自体が新鮮な感じで、面白かったですね。実際にステージに立っているときは、京のことを心配するとか、やっていけるかなぁとか不安になることはなかったですし。「MACABRE」も本番前のリハで合わせたときに、ちゃんとできてましたからね。

――映像にも告白がありますが、あの日のセットリストは京くんの案を取り入れたのではなく、彼は提示されたものをそのまま受け入れたんだそうですね。これには驚かされましたよ。むしろ、本人が望んだのかと思しきレアな選曲までありましたから。

薫:アンコールのことですよね? もともとのセットリストにも入ってなかったんですよ。なんですけど、(渋谷公会堂の)ライヴはやることになったときに、何か俺がふと差し込んじゃったんですよね。メンバー全員にメールしたけど、京から返信はなかったんです。ということは、目は通しているけど、やるってことやろうな、OKってことやろうなと。まぁ、俺もちょっと酷いヤツかなと思いながら(笑)。でも、京のああいう状態で、あの曲を歌うというふうには俺なんかはあまり見てなくて、久々の渋公でのライヴで、あの曲を歌っているというところにグッと来たというか。袖で観てたんですけどね。

――あの日は15年前の渋公の際のセットリストを踏襲して考えられていたそうですね。特別な感じを出したいという気持ちゆえだと思いますが、それをサラッと何気なくやってしまうところもDIR EN GREYらしいですよね。そういったサプライズがありながら、事前にも事後にも大々的に公言すらしていないじゃないですか。

薫:やっぱり来た人を驚かせたいというか、来た人にしかわからないものというのは大事にしたいとは思ってますからね。1本1本、その場でしか観られないものがありますから。特別な感じにはなったんじゃないかな。

――春以降のツアーは『THE UNRAVERLING』でリアレンジした楽曲をふんだんに取り込んだ、ちょっと特殊なライヴでもありましたよね。

薫:そうですね。『DUM SPIRO SPERO』の曲もそうなんですけど、やっぱリアレンジした曲は雰囲気をすごく持ったものが多いんで、より濃密にやれてた気がしますね。『DUM SPIRO SPERO』のツアーをやってきたうえで、そこに新しい曲が入り、その中で今、欲しいものだけを選りすぐって、入れ込んでやってますって感じだったんで、自分たちの向いている感じ、こういうライヴをしてますというのが、わかりやすかったかなと思います。

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