【ライブレポート】前代未聞の巨大2マンフェス<エアロソニック>、灼熱の一夜
酷暑の続く日本列島。各地で過去に例のないような高気温が記録されているが、8月8日、いちばん熱かったのは間違いなく千葉・幕張のQVCマリンフィールドだろう。エアロスミスとB'zによる前代未聞の巨大ライヴ<エアロソニック>が開催されたのだ。平日の公演であるにもかかわらず会場周辺には早い時間帯から両バンドのファンが集結。午後5時30分に開演を迎える頃にはスタンド席のてっぺんまで人、人、人で埋め尽くされていた。主催者発表によれば3万4,000人もの動員があったという。
◆エアロスミス&B'z画像
まずステージに登場したのはB'z。記念すべき夜の幕開けに据えられていたのは「Q&A」。去る6月にリリースされた2作のオールシングル・ベストアルバムには各2曲の新曲がフィーチュアされていたが、この曲もそのひとつだ(『B'z The Best XXV 1999-2012』に収録)。つまりファン以外には馴染みのない曲ということになるが、それでもすぐさま場内は一体感に包まれる。その事実は最初から、B'zとエアロスミスの音楽的相性の良さを証明していたように思う。
ご存知の読者も少なくないはずだが、両者の共演は2002年6月27日、FIFA日韓ワールドカップ開催に際して東京スタジアム(現・味の素スタジアム)にて行なわれた<FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN OFFICIAL CONCERT>のときにも実現している。その際にB'zが大先輩との共演に興奮したのみならず、エアロスミスの側もまた彼らに対してある種の敬意を抱くようになったことが、今回の巨大イベント実現に繋がっていることは疑いようもない。デビュー40周年、しかも10度目のジャパン・ツアーという節目を迎えるにあたって「このツアーを特別なものにしたい」と考えたエアロスミスに対し、主催者側が提示したのは、B'zとのダブル・ヘッドライナーによるフェスに近い形式での公演。それを両者が快諾するに至ったのは、そうした過去の好感触も無関係ではないはずなのだ。
しかも2013年はB'zにとってもデビュー25周年の記念すべき年にあたる。これに伴い全国展開中の<B'z LIVE-GYM Pleasure 2013 -ENDLESS SUMMER->も、この8月下旬から各地でのドーム/スタジアム・サーキットに突入することになる。そうした公演を楽しみにしているファンのためにも、この場ではあまり具体的な演奏内容については触れずにおくが、全16曲に及んだ彼らのステージが、演奏内容、サウンド・クオリティ、演出といったすべての点について文句のつけようのないものだったことは記しておきたい。花道を疾走し、ジャンプしても揺れることのない稲葉浩志の歌声。松本孝弘のギターの激しくも甘美な特徴的トーン。これはまさに日本が誇るべき財産と言っていいだろう。
炎が噴き出し、花火が炸裂し、エアロスミスのファンをも巻き込みながらの“タオル回し”の光景も印象的だったB'zのステージが終わる頃には、ようやく空も暗くなり、海風が心地好く感じられるようになった。そしてエアロスミスが超満員のオーディエンスの前に姿を見せたのは、まもなく午後7時30分になろうかとしていた頃のこと。まず聴こえてきたのは、2012年11月にリリースされた最新オリジナル・アルバム『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』の導入部分に収められていたナレーション。するとステージ中央からまっすぐに伸びた花道の先端に白いスモークが立ち込め、そこにスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーが登場。次の瞬間に炸裂したオープニング・チューンは、1977年に発表された5thアルバムの表題曲「ドロー・ザ・ライン」だ。
エアロスミスのステージは、過去40年の歴史を縦横無尽に駆け巡りながら進み、彼らの音楽が特定の時代性に縛られたものではないことを証明していく。しかも観衆の熱は、そこで聴こえてくるのが広く世に浸透したヒット曲であろうと、1970年代のアルバムに収録されていたシングルにすらなっていない曲だろうと、極端に変わることがない。「エレヴェイター・ラヴ」や「ジェイディッド」、結果的に自己最大のヒット曲となった「ミス・ア・シング」ばかりではなく、「コンビネーション」や「戻れない(ノー・モア・ノー・モア)」といった通好みのナンバーも拍手喝采を集め、会場全体を心地好く揺らす。
そしてその中盤、誰もが期待しつつも半信半疑であったはずのサプライズが。ステージに招き入れられたのはB'zの2人。スティーヴンに促されて稲葉が紹介した次のナンバーは、エアロスミスのデビュー・アルバムに収録されている「ママ・キン」。スティーヴンと稲葉は交互にヴォーカルをとり、ときには1本のマイクを共有。松本が先陣を切りながらジョー、ブラッド・ウィットフォードへと連なっていくギター・バトルの光景も実に眩いものだった。ステージを去り際、稲葉がふと口にした「すげぇ!」の一言が、興奮状態にあったのがオーディエンスばかりではなかったことを証明していた。
その後もエアロスミスのステージは時空を超越し、大きな起伏を描きながら転がっていく。新旧を取り混ぜながらのセットリストについて敢えて難癖をつけるとするならば、前述の最新作からの披露が「オー・イェー」1曲にとどまったことが少しばかり残念ではあったが、それでも「ウォーク・ディス・ウェイ」でクライマックスを迎えた場内には笑顔ばかりが並んでいた。アンコールで披露された「ドリーム・オン」では、花道の先端でスティーヴンが弾くピアノの上でジョーがギター・ソロを弾くというお馴染みの名場面も。そして最後、スモークと紙吹雪にまみれながらの「スウィート・エモーション」を経て、愛すべき世界最強のロック・バンドがステージから姿を消したのは、午後9時を12分ほど過ぎた頃のことだった。
エアロスミス史上初の“真夏のジャパン・ツアー”はこうして幕を開けた。これから名古屋、大阪での単独公演が繰り広げられていくことになるが、彼らが同じ曲目での演奏ばかりを重ねていくことはあり得ないし、公演を重ねていくごとにセットリストが長くなっていくことをファンはよく知っていることだろう。これからのステージでさらにサプライズ・チューンが飛び出すことも考えられるし、最新アルバムから他の楽曲が披露される可能性もあるはずだ。そして、B'zの“終わりのない夏”もこれから佳境を迎えようとしている。暑い夏をさらに熱くする、両ツアーの今後に注目したいところだ。
取材・文:増田勇一
<エアロスミス単独公演JAPAN TOUR 2013公演>
8月11日(日)
@名古屋名古屋ガイシホール
8月14日(水)
@大阪市中央体育館
8月16日(金)
@大阪市中央体育館
◆チケット詳細&購入ページ
◆エアロスミス&B'z画像
まずステージに登場したのはB'z。記念すべき夜の幕開けに据えられていたのは「Q&A」。去る6月にリリースされた2作のオールシングル・ベストアルバムには各2曲の新曲がフィーチュアされていたが、この曲もそのひとつだ(『B'z The Best XXV 1999-2012』に収録)。つまりファン以外には馴染みのない曲ということになるが、それでもすぐさま場内は一体感に包まれる。その事実は最初から、B'zとエアロスミスの音楽的相性の良さを証明していたように思う。
ご存知の読者も少なくないはずだが、両者の共演は2002年6月27日、FIFA日韓ワールドカップ開催に際して東京スタジアム(現・味の素スタジアム)にて行なわれた<FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN OFFICIAL CONCERT>のときにも実現している。その際にB'zが大先輩との共演に興奮したのみならず、エアロスミスの側もまた彼らに対してある種の敬意を抱くようになったことが、今回の巨大イベント実現に繋がっていることは疑いようもない。デビュー40周年、しかも10度目のジャパン・ツアーという節目を迎えるにあたって「このツアーを特別なものにしたい」と考えたエアロスミスに対し、主催者側が提示したのは、B'zとのダブル・ヘッドライナーによるフェスに近い形式での公演。それを両者が快諾するに至ったのは、そうした過去の好感触も無関係ではないはずなのだ。
しかも2013年はB'zにとってもデビュー25周年の記念すべき年にあたる。これに伴い全国展開中の<B'z LIVE-GYM Pleasure 2013 -ENDLESS SUMMER->も、この8月下旬から各地でのドーム/スタジアム・サーキットに突入することになる。そうした公演を楽しみにしているファンのためにも、この場ではあまり具体的な演奏内容については触れずにおくが、全16曲に及んだ彼らのステージが、演奏内容、サウンド・クオリティ、演出といったすべての点について文句のつけようのないものだったことは記しておきたい。花道を疾走し、ジャンプしても揺れることのない稲葉浩志の歌声。松本孝弘のギターの激しくも甘美な特徴的トーン。これはまさに日本が誇るべき財産と言っていいだろう。
炎が噴き出し、花火が炸裂し、エアロスミスのファンをも巻き込みながらの“タオル回し”の光景も印象的だったB'zのステージが終わる頃には、ようやく空も暗くなり、海風が心地好く感じられるようになった。そしてエアロスミスが超満員のオーディエンスの前に姿を見せたのは、まもなく午後7時30分になろうかとしていた頃のこと。まず聴こえてきたのは、2012年11月にリリースされた最新オリジナル・アルバム『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』の導入部分に収められていたナレーション。するとステージ中央からまっすぐに伸びた花道の先端に白いスモークが立ち込め、そこにスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーが登場。次の瞬間に炸裂したオープニング・チューンは、1977年に発表された5thアルバムの表題曲「ドロー・ザ・ライン」だ。
エアロスミスのステージは、過去40年の歴史を縦横無尽に駆け巡りながら進み、彼らの音楽が特定の時代性に縛られたものではないことを証明していく。しかも観衆の熱は、そこで聴こえてくるのが広く世に浸透したヒット曲であろうと、1970年代のアルバムに収録されていたシングルにすらなっていない曲だろうと、極端に変わることがない。「エレヴェイター・ラヴ」や「ジェイディッド」、結果的に自己最大のヒット曲となった「ミス・ア・シング」ばかりではなく、「コンビネーション」や「戻れない(ノー・モア・ノー・モア)」といった通好みのナンバーも拍手喝采を集め、会場全体を心地好く揺らす。
そしてその中盤、誰もが期待しつつも半信半疑であったはずのサプライズが。ステージに招き入れられたのはB'zの2人。スティーヴンに促されて稲葉が紹介した次のナンバーは、エアロスミスのデビュー・アルバムに収録されている「ママ・キン」。スティーヴンと稲葉は交互にヴォーカルをとり、ときには1本のマイクを共有。松本が先陣を切りながらジョー、ブラッド・ウィットフォードへと連なっていくギター・バトルの光景も実に眩いものだった。ステージを去り際、稲葉がふと口にした「すげぇ!」の一言が、興奮状態にあったのがオーディエンスばかりではなかったことを証明していた。
その後もエアロスミスのステージは時空を超越し、大きな起伏を描きながら転がっていく。新旧を取り混ぜながらのセットリストについて敢えて難癖をつけるとするならば、前述の最新作からの披露が「オー・イェー」1曲にとどまったことが少しばかり残念ではあったが、それでも「ウォーク・ディス・ウェイ」でクライマックスを迎えた場内には笑顔ばかりが並んでいた。アンコールで披露された「ドリーム・オン」では、花道の先端でスティーヴンが弾くピアノの上でジョーがギター・ソロを弾くというお馴染みの名場面も。そして最後、スモークと紙吹雪にまみれながらの「スウィート・エモーション」を経て、愛すべき世界最強のロック・バンドがステージから姿を消したのは、午後9時を12分ほど過ぎた頃のことだった。
エアロスミス史上初の“真夏のジャパン・ツアー”はこうして幕を開けた。これから名古屋、大阪での単独公演が繰り広げられていくことになるが、彼らが同じ曲目での演奏ばかりを重ねていくことはあり得ないし、公演を重ねていくごとにセットリストが長くなっていくことをファンはよく知っていることだろう。これからのステージでさらにサプライズ・チューンが飛び出すことも考えられるし、最新アルバムから他の楽曲が披露される可能性もあるはずだ。そして、B'zの“終わりのない夏”もこれから佳境を迎えようとしている。暑い夏をさらに熱くする、両ツアーの今後に注目したいところだ。
取材・文:増田勇一
<エアロスミス単独公演JAPAN TOUR 2013公演>
8月11日(日)
@名古屋名古屋ガイシホール
8月14日(水)
@大阪市中央体育館
8月16日(金)
@大阪市中央体育館
◆チケット詳細&購入ページ
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