映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』、映画化決定に至る知られざるエピソード

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マニラに住んでいたアーネル・ピネダがジャーニーのボーカリストとなるまでを描いたドキュメンタリー映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』が3月16日(土)に公開となる。

◆ジャーニー画像

素晴らしい人物像と共に、プロフェッショナルの世界を垣間見せてくれる感動のドキュメンタリー映画だが、その夢物語のようなドラマに負けず劣らず、『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』の映画化に至るエピソードがまた面白い。バンドボーカル決定までの道のりもさることながら、映画化決定もまさにおとぎ話と呼べるほど奇妙なきっかけを持っていたようだ。

監督・プロデューサーを務めたのは、ラモーナ・S・ディアス。彼女が最初にアーネルの存在を知ることになったのは、友人から送られてきた一通のメールだったという。そのメールのタイトルには、「今まで聞いた中で最高のアメリカ大使館ビザ発給物語」とあった。

「アメリカに住むフィリピン人のひとりとして、この“約束の地”への渡航を試みる者たちの話は、時に愉快なものもあるものの、ほとんどが悲惨なものであることには慣れきっていた」と彼女は話す。だが、そのメールの本文を見て、彼女は腹の皮がよじれるほど笑ったという。そこには、アーネルというひとりのフィリピン人が、いかにしてアメリカ行きのビザを手に入れたかのエピソードが書かれていたのだ。

2008年の冬、マニラに住む撮影監督の友人が送ったこのメールには、まさにマニラのアメリカ大使館の移民局職員とアーネル・ピネダとのやり取りが綴られていた。

アーネル青年は、アメリカへの渡航理由を「ジャーニーというバンドのリードボーカルのオーディションに招待されたから」と伝えた。当然のようにリアクションは「?」だ。

「ジャーニー? ロックバンドの…ジャーニー?」

アーネルは素直にうなずき、バンドからの取るに足らないメールや手紙を見せた。移民局職員は疑わしげな声で、アーネルに「Wheel In the Sky」を歌ってみろと言ったという。アーネルが大声を張り上げてその場で歌うと、待合室中の人間が、その懐かしいロックナンバーに手を止め、聞き惚れたのだった。

「いいかい、そんな話を信じるような職員はこの大使館にはいないよ。ジャーニーのオーディションを受ける…なんて話はね。」

「だけど、いいかい?僕は君にビザを発給する。君はオーディションに行くんだ。君ならやってのけるさ」

メールの終わりには、アーネルが「Faithfully」を歌うYoutubeのクリップがリンクされていたという。ラモーナ・S・ディアス監督は、その映像をみて鳥肌が立ったと語る。


監督自身は、これまでの経験から二度と有名人の映画を撮らないと誓っていたものの、彼らのマネージャー、ジョン・ボラックと話し合ってみると、自身の中の映画人魂が、この素晴らしいストーリーを手放してはいけないと直感したようだ。だが、何度もやり取りを試みたものの、ジャーニー・サイドから、「自分たちがドキュメンタリーを撮られる準備ができていない」という理由から「来年なら…」と一度断られている。「来年じゃ話にならないの。今年だから意味があるの。1日、アーネルとバンドのリハーサルを撮らせて。10分のサンプルにまとめ上げるから。それをあなたたちがダメだと判断したら、もう二度と頼まないわ」と食い下がり、やっとアーネルと直に会うことができたのだと語る。

アーネルが自分の内面をしっかりと語れる人間であり、誠実な好人物であることに加え、尋常ではない彼の経歴も知ると、これはまさにドキュメンタリーの金脈だと彼女は確信した。その後、10分に仕上げたサンプル動画をみたジョン・ボラックからの「OKだ。それでいつ撮影隊をこっちによこすんだい?」と電話を受け、多くの不安と根拠のない激しい自信を抱えながら、バンドのツアーに加わったというのが、事の顛末なのだ。

映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』
2007年12月、新しいリードボーカルを探し求めていたギタリストのニール・ショーンはYou Tubeでジャーニーの曲を歌う無名のフィリピン人シンガー、アーネル・ピネダの映像を偶然見つける。ハイトーンの声質、そして驚くべき歌唱力に衝撃を受け、すぐさまニールはアーネルに連絡を取る。まさかの電話にアーネルは悪質な悪戯だと最初はとりあわなかったが、本当にニール本人だとわかるとすぐさま渡米、オーディションを受け、正式にジャーニーの新ボーカリストとして迎えられた。そのネット時代ならではのサクセスストーリーは全米、世界中で大々的に報道された。歌うことを教えてくれた最愛の母親の死、一家離散、2年間もの路上生活…しかし彼は人生のすべてを歌に賭け、計り知れない苦労を乗り越えアメリカン・ドリームを掴んだ。これは決して夢をあきらめることをしなかったアーネルの不屈の精神とその類まれなる才能の物語でもある。
監督・脚本・プロデューサー:ラモーナ・S・ディアス
出演:ニール・ショーン(本人)/ジョナサン・ケイン(本人)/ロス・ヴァロリー(本人)/ディーン・カストロノヴォ(本人)/アーネル・ピネダ(本人)
2012年/アメリカ/ 英語/ドキュメンタリー/ 105分
提供:ファントム・フィルム/キングレコード
配給:ファントム・フィルムjourney-movie.jp
(C)2012 Everyman's Journey, LLC.
3月16日(土)新宿ピカデリー他 全国順次ロードショー
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