【ライブレポート】アジア圏で不動の支持を持つMaydayの魅力

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台湾のモンスターバンドMayday(メイデイ/五月天)が2月16日、Zepp Tokyoにて単独ライブを開催した。この公演は、日本のトップアーティストを台湾に招聘して行われる<LIVE 直送 from 東京電台>の一環として実施されたもの。2012年11月にはASIAN KUNG-FU GENERATION、12月には一青窈、2013年1月にはSPECIAL OTHERSが台湾のライブハウスLegacyに出演したが、今回は台湾が世界に誇るMaydayを日本に招致しての特別版となる。

◆Mayday画像

Maydayは、<GLAY EXPO 2001>九州会場に出演したことをはじめ、自身の8thアルバム『第二人生(Second Round)』収録曲「三個傻瓜」にB'zの松本孝弘がギタリストとして参加したほか、flumpoolのアルバム収録曲「証明」の歌詞をMaydayボーカルのアシン(阿信)が書き下ろすなど、日本のビッグアーティストとの親交も深い。また、記憶に新しいところでは<SUMMER SONIC 2012>への出演だ。マリンスタジアムに続く広さを誇る幕張メッセのマウンテンステージを堂々と震わせた圧巻のアクトが思い出されるところだろう。

2月16日の来日公演を前に彼らは、2012年12月21日から年末にかけての4日間、台湾の高雄にてライブ<諾亞方舟(ノアの方舟)>を開催した。計20万人を動員するチケットが、現地発売開始からわずか90分で完売したという事実だけでも、その人気の凄まじさがうかがえるというものだ。ここではその初日となる12月21日の公演を振り返り、アジア圏で不動の支持を持つMaydayの魅力に迫るべくレポートしたい。

会場となった高雄世運主場館は、サッカーや陸上などの国際競技が開催される開放式競技場。日本でいえば、国立競技場や味の素スタジアムに匹敵する5万人の収容が可能な大型施設だ。幾重にもトラスが組まれたステージ上には虹のような巨大アーチが掛けられ、左右幅は100m以上あろうかというあまりにも壮大なもの。オープニングアクトである女性シンガー白安のステージを挟んで、いよいよMaydayがステージに登場する。

スモークに包まれた会場に荘厳なSEが響き渡ると、ライブは「2012」で幕を開けた。2012年12月21日はマヤ暦の終末=人類滅亡を予言したものであり、この終末論が<諾亞方舟(ノアの方舟)>のひとつのテーマとなっている。重厚なミディアムチューンによるオープニングが圧倒的な質感とスケール感を描き出して、ステージから目が離せない。

続く「愛情萬歳」では高さ10メートル以上の火柱がステージのそこかしこから一気に吹き上がり、「叫我第一名」では特大花火が何発も打ち上がるなど、とにかくステージ演出にはのっけから凄まじいものがあった。その後も、観客の掲げる無線制御ペンライトが曲の場面場面で一斉にカラーを変えて楽曲や会場をドラマティックに染め上げたほか、ステージ上のメンバーの立ち位置が数メートルもせり上がったり、ステージの上手と下手に高級外国車が登場したり、それらを効果的に照らす照明や巨大LEDスクリーンによる映像など、得も言われぬ幻想的空間が繰り広げられた。もともとイメージを喚起させるサウンドを持つ彼らだけに、こうした演出は絶大な効力を発揮して、五感を刺激する。驚きや興奮に魅せられた客席は、終始ステージに釘付け状態なのである。

そしてやはり、スペクタクル巨編とも呼べるコンセプチュアルなステージの中心には、Maydayの楽曲がある。事実、ステージから発せられるサウンドは実にリアルなものだった。いわゆるハードロックの激しさを感じさせつつも、じっくり聴かせる演奏力を併せ持ち、楽曲そのものは非常にキャッチー。ライブのダイナミズムに支えられながら、全ナンバーが口ずさめるほど覚えやすい旋律にメロディーメーカーとしての才能を実感させられる。「星空」「溫柔」といったバラードナンバーでは、5万人のシンガロングが響き渡り、ステージ中盤に披露された「笑忘歌」でのアコースティック・アレンジ、生のホーンセクションを加えた「瘋狂世界」「三個傻瓜」では、カラフルで厚みのあるバンドサウンドが堪能できた。

一気にノリのいいナンバーが続いた怒濤の後半は、クライマックスシーンの連続。方舟(航空母艦)に見立てた車の上で演奏しながらフィールド外周を廻るという一大パレードには、客席からの歓声が止むことがない。本編ラストとなった「離開地球表面+諾亞方舟」のエンディングでは、打ち上げ花火の連発、スモークの大量噴射、金の花吹雪が舞う大掛かりな演出で劇的に幕を閉じた。

興奮冷めやらぬアンコールは、それまでの熱狂を引き継ぐような激しいナンバーではない。シンプルで力強いミディアムナンバーに客席は聴き入り、歌詞のひと言ひと言を噛みしめるかのようにシンガロングの輪が広がっていた。押し出すところはこれでもかといわんばかりのパワーで圧倒しまくり、引くところではグッとメロディを聴かせることに集中するといった絶妙な流れを生み出す。さらには曲間さえも飽きさせない趣向を凝らした楽曲のつなぎ方など、ライブは途切れることのない流れを生んで、結果大きな感動を与えてくれた。

「2012年だけでも私たちのこの小さな島にいろいろなことが起こりました。もし世界の終わりを迎えることになってしまったら、アナタの大切な人を“ノアの方舟”に乗せてください」――アシン

これは2度目のアンコールでボーカリストのアシンが語った言葉だ。雄大なスケール感と美しい余韻を残しながら、メンバーがステージを去った頃、時計は23時30分を回っていた。ちなみにこの夜は、台湾新幹線の夜間臨時便運航がとりおこなわれていたので、5万人を超える観客の終電の心配はなし。つまりMaydayのライブは国が万全のバックアップ態勢を整えるという、国民的行事となっていたというわけだ。全32曲全4時間の文句なしに充実したライブ。もちろん12月22日0時0分を迎えても世界が滅亡することはなく、同日夜に開催されるライブ2日目は、前日とはまったく異なる内容でライブを構築してみせた。終末を超えて、今、Maydayは新時代への第一歩を踏み出している。そして2013年2月16日、Zepp Tokyoで開催される来日公演がいかなる内容になるのか、大きな期待を寄せずには居られなかった。結論から言えば、来日公演は母国台湾でのステージとはまた異なる面が押し出され、完成度の高いバンドとしてのタフなスタイルが露わとなっていたのだ。その模様はまた改めてお伝えしたい。

<2012 Mayday 諾亞方舟(ノアの方舟) 世界ツアーコンサート>
1.2012(邦題:2012)
2.愛情萬歳(邦題:愛情万歳)
3.叫我第一名(邦題:コール・ミー・ナンバーワン)
4.DNA(邦題:DNA)
5.星空(邦題:星空)
6.溫柔(邦題:やさしさ)
7.時光機(邦題:タイムマシン)
8.你不是真正的快樂(邦題:君は本当の幸せではない)
9.心中尚未崩壞的地方(邦題:心の中に崩壊してない場所)
10.諾亞方舟(邦題:ノアの方舟)
11.一千個世紀(邦題:一千の世紀)
12.笑忘歌(邦題:笑いながら忘れようの歌)
13.終結孤單(邦題:孤独の終わり)
14.T1213121+乾杯(邦題:T1213121+乾杯)
15.瘋狂世界(邦題:クレイジーワールド)
16.三個傻瓜(邦題:三人のおバカ)
17.春天的吶喊+OK啦+軋車(邦題:春の叫び+OKさ+モーター・ロック)
18.人生海海(邦題:人生は海のようだ)
19.如煙+如果還有明天(邦題:煙のように+もし明日があれば)
20.OAOA(邦題:OAOA)
21.第一天(邦題:First Day)
22.戀愛ing(邦題:恋愛ing)
23.讓我照顧你+最重要的小事(邦題:君の世話させて+小さなことだけど)
24.倔強(邦題:強情)
25.離開地球表面+諾亞方舟(邦題:地球表面から離れる+ノアの方舟)
encore
26.孫悟空(邦題:孫悟空)
27.突然好想你(邦題:突然君のことを思い出す
28.知足(邦題:満足な気持ち)
29.我不願讓你一個人(邦題:君を一人にさせたくない)
30.洋蔥(邦題:タマネギ)
31.憨人+心中無別人(邦題:バカ+君しかいない)
32.諾亞方舟+人生海海(邦題:ノアの方舟+人生は海のように)
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