MERRY【インタビュー】メンバー監修ベスト盤発売!活動10周年の歩みを辿る“白い羊”“黒い羊”の話
2012年、活動10周年のアニバーサリーを迎えたMERRY。“レトロック”と称する哀愁とヘヴィネスを湛えた唯一無二の世界を武器に走り続け、近年は様々なイベントやフェス出演を通して、これまで以上に幅広い層の音楽ファンに認知されることになった。そこで、9月26日にリリースされるベストアルバム『MERRY VERY BEST~白い羊/黒い羊~』を軸に、MERRYの歩みを辿り、新たにファンになった方々にもMERRYの魅力により一層触れていただきたいと思う。
ガラ(Vo):そうですね。ライヴという面で言えば、結成1年で渋谷のO-EAST(約1,300人キャパ)をやろうって自分たちの中では決めてましたし。曲に関しては、いまだにバンドのコンセプトでもある“いいメロディといい歌詞といい曲”っていう、哀愁をテーマとした楽曲を貫き通してましたし。見た目的には、ちょっと古くさい大正ロマン的なスタイルはずっと崩さずにきたんですけど。たしかに、見せ方としては、昔はアンダーグラウンドな方向性だったと思いますね。みんなに知ってもらおうと思っていなかったというか。
――え? そうなの?
ガラ:そうなんですよ。それも1つのコンセプトだったというか。MERRYを始めた頃って、周りがキラキラしたバンドが多かったのもあって、そことは対極でいたいというか。まだ当初はそこまでネットも普及していなかったこともあって、“探さないと見れないバンド”でいようっていう思いが強かったんです。どこでも見れるというより、必死で探して見に来てくれるっていうバンドになりたかったんです。口コミって一番強いと思うんですよ。
――飲食店でもそうだよね。
ガラ:そう。ホントそうなんですよ。だから、そうやって口コミで“いいバンドがいる”って思ってもらえるようなバンドになりたいって思ってましたから。アナログな方式ですけどね。
――なるほどね。ヴォーカルが喋らずMCは習字っていう、前代未聞のパフォーマンスを個性としてきたバンドでもあったけど、会場が広くなったら見えなくなっちゃうっていうことは考えなかった?
ガラ:習字は、ヴォーカルである俺が喋らずにお客さんとコミュニケーションをとって、さらにインパクトも残していくにはどうしたらいいか? っていうところを突き詰めていっての1つの案だった訳ですけど。“会場が広くなったら後ろの人が見えなくなっちゃうから止めとこう”とか、そんな秩序的なことはいっさい考えてなかったですね。ただただ、そのときに自分たちがやりたいと思ったことを、素直にやれるバンドでいたいってだけでしたから。それにやっぱ、ライヴで習字って、他にやってるバンドいなかったし。視覚的なインパクトは残せたと思っているんですよね。最初から、後ろまで見えること考えてないんですよ。ごそごそ何かしてて、“何かしてるな。何してんだろ?”って気になった人が、次のライヴのとき、それを見たさに前に来てくれたらそれでいいんです。
――さすが! そういうことね。
ネロ(Dr):そういうところを貫いてきてこその今だと思っていますからね。今は“探して見に来てくれればいい”とは思っていないというか、積極的にどこにでも出て行きたいと思ってますから。そこはこの10年で変化してきた部分ではあると思います。
――今年の夏もいろんなフェスやイベントに出ましたね。
健一(G):そうですね。前、初めてフェスに出た時は、やっぱり緊張もしましたし、アウェイな空気に気負ったりもしたんですけど。だんだん慣れてきたのもありますし、この夏のフェスは、ツアーの流れでもあって、気負わずにできたなと思いますね。
結生(G):最近は本当にいろいろな欲も出て来たので、次はメインステージでやりたいなとか、そんなことも思える余裕が出てきましたね。
ネロ:他のバンドのタオルを持った子たちが、MERRYのライヴで思いっきりノッてくれてるのを見ると、最高に嬉しいですし。ウチのファンの子たちが、他のバンドのファンも巻込む感じのノリ方をしてくれてるのを見ると、本当に嬉しくて、最近は本当にすごいフェス好きになりましたね。
ガラ:最近はフェスの出順も、トップバッターだったり、起爆剤的な位置に置かれることが多くなってきてるのが解るんですよ。そんな自分たちの在り方も楽しめるようになってますし、だんだん欲も出て来てますね。フェスの常連になれるようなバンドにもなっていきたいですし。そういう意味では、バンドとして、向かうべき場所への意識の変化は出て来たと思いますね。
テツ(B):いろんなフェスに呼んで頂いていて、いろんな経験をさせてもらっているんですけど、フェスによってまったく雰囲気も違うし、10年活動してきた今でも、本当にまだまだ学ぶことが多いですからね。そこでも成長できているので、どんどん出て行きたいですね。
――楽曲面ではどうですか? 今回のベスト盤は、作品で聴かせる楽曲を中心にまとめた“白い羊”と、ライヴでよく披露されファンにも愛されている“黒い羊”の2枚に別れていますけど。
結生:当初から“白い羊”と“黒い羊”に明確に別れていたのがMERRYでもあったと思うんですよね。今回、“黒い羊”の方に入っている「バイオレットハレンチ」と「Ve-doro」とかって、ドロドロしてるし、一般的にはマニアックと言われる楽曲なのかもしれないですけど、ウチら的には“これがMERRYだ”っていう感じで貫いてきたんですよね。一方、“白い羊”に収録した楽曲たちは、思いっきり昭和レトロで、歌謡曲チックな楽曲を集めてみたんです。その、黒と白でくっきりと別れている感じは、昔からというか。そここそがMERRYだと思ってやってきましたね。
――黒、白、それぞれ振り幅は広くなってますね。
結生:ですね。中期後期になっていくにつれて、それぞれバリエーションは多くなってきたので、幅は広がったと思いますね。“黒い羊”の方は昔以上にロックっぽくなってきているから、一般の人にも聴いてもらいやすくはなっていると思うし。“白い羊”の方もマイナーチェンジしていったりしてますからね。そういう進化や変化も含め、MERRYの10年を総括できていると思います。
テツ:黒と白、両方あってこそMERRYって感じはしますね。
――そうですね。ただただレトロなだけじゃない、ただただロックなだけじゃない、MERRYらしさって本当に色濃く存在しているからね。
結生:と思いますね。初期、MDを無料配布したことがあったんです。配布というか、CD屋さんのレジの横に、“ご自由にお持ち下さい”っていうので、無料で置かしてもらったことがあったんですよ。
――すごい! 斬新! そういう発案もすごく斬新だよね、MERRYって。本当にすごいと思う。
結生:それに収録されていた「ビニ本2丁目八千代館」「路地裏哀歌」(ろじうらあいか)だったんですけど。
ガラ:10年活動してても、いまだにタイトル間違って読んでるっていう……(笑)。「路地裏哀歌」は、“ろじうらエレジー”って読みます。
結生:あははは。そうです。哀歌と書いてエレジーと読みます(笑)。いまだに間違えます(笑)。が、そんな2曲から始まったっていう感じだったんです。
ネロ:「ビニ本2丁目八千代館」は今回のベストには入ってないんですけど、「路地裏哀歌」は“白い羊”の方に入ってますからね。MERRYを始めてめて2曲目くらいに作った曲だと思いますよ。
ガラ:そうだね。「路地裏哀歌」を結生くんに作ってもらうとき、“MERRYではこういう曲をやっていきたい”っていうのを、俺、一生懸命ギター弾いて結生くんに伝えたんですよ。“こんな感じ、こんな感じ!”って、単音で伝えたんです。ドラムもマーチ的なドラムで、メロは哀愁いっぱいで。
結生:やりたいことが明確に解ったので、形にしやすかったですね。
――健一くん的にはどうでした?
健一:自分が曲作りをする上では、そこまで黒だとか白だとか思って意識して作ってはいないんですけど、昔からバンド自体が白と黒ってはっきりと曲分けしていたバンドでもあったと思うので、自分的にも知らず知らずのうちにそうなってきたんじゃないかなって思うんですよね。ライヴでやるときも、“この曲のノリは、白か黒かどっちかな?”っていう話をしたりもしますしね。それはいまだにしてることでもあるんですけど。
ガラ:“黒い羊”は、“白い羊”の方とは違って、歌モノとは180度違う、イントロがドロドロとしてて絡みついた感じの曲でいきたいっていうね。やっぱ、曲の掴みってイントロだと思っているので。ずっと健一くんと結生くんには言ってた気がしますね。
――“黒い羊”の方で、一番古い楽曲はどの曲?
健一:「バイオレットハレンチ」ですかね。今回、曲の並び順は、白も黒も古い順なんですよ。作られた順番どおりに並んでいるんです。
結生:“黒い羊”の方の「GI・GO」はSE的に使っているから違いますけどね。
――1つ疑問。「ビニ本2丁目八千代館」は始まりの曲でもあったのに、どうして今回入れてないの?
ガラ:あははは。それは単純に、歌詞が出せなかったっていう(笑)。今回「バイオレットハレンチ」もいっぱい削られてるんですよ、歌詞。
結生:ピーッて(笑)。ガンガン放送禁止用語が入ってますからね、当時の曲は(笑)。
――メジャーデビューしてからのMERRYは、少し開けた印象を受けたけど。このベストで言うところの、中期的な時代かな。
ネロ:ですね。そのあたりは、白も黒も両方を混ぜ合わせたちょうど中間のところだったと思いますね。
――『MERRY VERY BEST~白い羊/黒い羊~』は、メンバー完全監修による全36曲ということだけど、やっぱりベストって感慨深いですね。バンドにそれなりの歴史がないと作れないアイテムだからね。
ネロ:たしかに。“白い羊”と“黒い羊”ってちゃんと分けたのは、2006年にやったライヴのときでしたからね。そう思うと、俺たちだけじゃなくて、ファンのみんなとも一緒に作り上げたベストって言えるんじゃないかなって思いますね。
――冒頭でもライヴの見せ方の話が出てたけど、ライヴの見せ方の変化とかはどう感じている?
テツ:2006年に白と黒でライヴをやったときあたりから、より白と黒がはっきりしてきたように思うんですよね。中期のあたりはそれがより強かった気がするんです。“白い羊”のときは真っ白な衣装を着てみたりして、視覚的にすごく解りやすく攻めたりもしてましたし。でも、最近では、色々削ぎ落として、楽曲の勢いだけで見せ方を変えていってる感はありますね。曲の雰囲気だけで、白と黒がはっきり見せられるようになったというか。そこもバンドの成長だと思ってますね。
――最近は作り込んだステージセットはないの?
テツ:見せたいときは、ライヴによってやるときもありますね。ステージ前にネットを張ったりとか。でも、今は音で魅せる感じに重点を置いている方向性ではありますね。“白い羊”の方とか特に、アコースティックで聴かせる見せ方が多くなってきてたりしてますし。俺で言うと、アップライトベースを弾いたり、ネロちゃんがカホーン叩いたり。前からもそういう流れはあったんですけど、最近のライヴではそこも色濃くなってますね。
ガラ:昔からMERRYを見てきてくれてる人には、ぜひ、フェスでのMERRYのライヴも見てほしいんですよね。いろいろと作り込んだコンセプチュアルなバンドが、フェスではどういうライヴをしてるかっていうとこを見てほしい。それに、やっぱフェスでいろんなバンドやアーティストのライヴを見て、いい刺激をいっぱいもらったんですよ。曲作る意欲も新たに沸いてきましたし。さっき、ベストアルバムはバンドに歴史がないと作れないって話が出ましたけど、俺たちも、結成10周年という節目でベスト盤を出したいっていうのは、ずっと思ってきたことだったんですよ。その頃からずっと、唄ものである白い部分と、ヘヴィなロックを基調とした黒い部分とを分けて2枚組にしたいっていう案も当初からあったんです。ベスト盤ってあんまりメンバーは関われないこともあるって話を聞いたりもするんですが、今回のこのアルバムに関しては、選曲も曲順もすべてメンバー監修なので、MERRYの歴史とMERRYのすべてを知ってもらうにはすごくベストな作品になったと思うので、ぜひ、多くの方に聴いてもらえたらと思いますね。
ネロ:個人的には、あんまりメンバーが関われないっていうイメージがあって、ベスト盤っていいイメージなかったんですけど、今回のは本当に名刺代わりのような作品になったと思っているので、自信作ですね。
テツ:今回ジャケットとかも、初回限定盤のブックレットも全部、細部に至るまでこだわっているので、昔からMERRYを聴いてくれていて、全曲持ってくれている人にも喜んでもらえるように作っているんです。新たな息が吹き込まれた作品になっていますので、ぜひ、手に取ってもらえたらと思います。
結生:11月21日からは、ベスト盤を引っさげてのツアーもあるので。
健一:大阪で“白い羊”と“黒い羊”をやる機会は少なかったのでぜひ、遊びに来てもらえたらと思います。
取材・文●武市尚子
BEST ALBUM
『MERRY VERY BEST ~白い羊/黒い羊~』
2012年9月26日発売
【初回限定盤】CD+DVD VIZB-32 ¥6,000(tax in)
[CD]2枚組「白い羊」盤 / 「黒い羊」盤
[DVD]「MERRY MUSIC CLIPS」 フォトブック付属
【通常盤】CD VICB-60095~96 ¥3,990(tax in)
[CD]2枚組「白い羊」盤 / 「黒い羊」盤
※「白い羊」収録楽曲
1. 六本木ジャジー喫茶
2. 黄昏レストラン
3. 路地裏哀歌
4. 躊躇いシャッフル
5. チック・タック
6. 東京テレホン
7. 想ひでサンセット
8. そして、遠い夢のまた夢
9. 哀しみブルートレイン
10. 「東京に降る雪...」
11. さよなら雨(レイン)~リバース~
12. コールing 13. 木洩れ日が僕を探してる・・・
14. 歌声喫茶『モダン』
15. 日ノ出町、街角ツンデレラ~2番ホーム篇~
16. 赤い靴
※「黒い羊」収録楽曲
1. GI・GO
2. バイオレットハレンチ
3. Ve-doro
4. イエローガール
5. ジャパニーズモダニスト
6. ハライソ
7. T.O.P
8. 首吊りロンド
9. 溺愛の水槽
10. センチメンタル・ニューポップ
11. 妄想rendez-vous
12. sweet powder
13. 最果てのパレード
14. オリエンタルBLサーカス
15. [human farm]
16. カナリア
17. 閉ざされた楽園
18. Midnight Shangrila
19. 不均衡キネマ
20. finale
※初回限定盤DVD「MERRY MUSIC CLIPS」収録曲
1. バイオレットハレンチ
2. ジャパニーズモダニスト
3. 首吊りロンド
4. 溺愛の水槽
5. さよなら雨(レイン)
6. 林檎と嘘
7. コールing
8. Blind Romance
9. 最果てのパレード
10. sweet powder
11. 木洩れ日が僕を探してる・・・
12. ひらひらとんでる。
13. 閉ざされた楽園
14. under-world
15. 激声
16. 冬のカスタネット
17. The Cry Against...
18. モノクローム
19. クライシスモメント
20. 夜光
<MERRY VERY BEST>
11月21日(水)名古屋ダイアモンドホール ~Nagoya night【白い羊】~
11月23日(金・祝)岡山IMAGE ~Okayama night【白い羊】【黒い羊】Extra~
11月25日(日)梅田CLUB QUATTRO ~Osaka night【黒い羊】~
11月30日(金)赤坂BLITZ ~Special 2night【白い羊】~
11月30日(金)赤坂BLITZ ~Special 2night【黒い羊】~
【MERRY MEMBERS’ CLUB CORE限定販売】
赤坂BLITZ~Special 2night 【白い羊】【黒い羊】~Tシャツ付き通し券 ¥12,000 ※税込/ドリンク代別
※Tシャツは公演当日会場にて引き換えになります。Mサイズのみとなります。
[チケット料金] ¥4,500 ※税込/ドリンク代別
[総合問合せ] フリップサイド 03-3466-1100
※【白い羊】公演は全席指定の着席スタイルとなります。ドレスコードがございますので正装でお越し下さい。
【イベント情報】
MERRY10周年!ベスト盤「MERRY VERY BEST ~白い羊 / 黒い羊~」発売記念アコースティックライブ&握手会 in マルイシティ渋谷
日時:2012年10月8日(月・祝)16:00~
場所:マルイシティ渋谷 1F店頭プラザ
内容:アコースティックライブ&握手会 ※アコースティックライブの観覧は無料です。
握手会参加方法:
ヴィレッジヴァンガード渋谷店にて、MERRYの9月26日発売『MERRY VERY BEST ~白い羊/黒い羊~』(初回限定盤)をお買い上げ頂いた方に整理券と参加券をお渡しします。
MERRY 10周年!ベスト盤『MERRY VERY BEST ~白い羊 / 黒い羊~』発売記念アコースティックライブ&握手会 in ラクーアガーデンステージ
日時:2012年10月13日(土)14:00~
場所:東京ドームシティ ラクーアガーデンステージ
内容:アコースティックライブ&握手会 ※アコースティックライブの観覧は無料です。
握手会参加方法:9月26日発売『MERRY VERY BEST ~白い羊/黒い羊~』(初回限定盤)の商品に添付されている参加券(ステッカー)をご持参下さい。
◆MERRY オフィシャル・サイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-ROCKチャンネル「VARKS」
この記事の関連情報
【ライヴレポート】DEZERT主催<DEZERT PARTY >1日目、武道館公演前への想いとプライドが交錯した第一夜
DEZERT主催イベント<DEZERT PARTY>2daysに、ΛrlequiΩ、deadman、メリー、RAZOR、LM.C、Royz、Verde/、vistlip
【ライヴレポート】Waive × メリー、<浅草コンプレックスルート Day2>に20年前には予想できなかったカオス「ワンマンでは得られないもの」
【ライヴレポート】メリー、8年ぶり<ラムフェス>に5バンド集結「また必ずこの場所で会いましょう」
メリー主催<ラムフェス2024 -EXTRA->にメトロノーム、heidi.、ダウト、RAZOR
【ライヴレポート】Eins:Vier主催<KATHARSIS>DAY1、メリーとH.U.Gを迎えて3マン初共演「アインス聴いて育ちました」
【ボーカル座談会:後編】Eins:Vier × Gargoyle × Valentine D.C. × メリー × H.U.G「楽しい2日間になると思う」
【ボーカル座談会:前編】Eins:Vier × Gargoyle × Valentine D.C. × メリー × H.U.G「30年ぶりの復活です」
メリー、 会場限定CD「ユーモア」発売決定+新ヴィジュアルは“変態ポップ”