BUCK-TICK【インタビュー】「“新しい自分になりたい”という思いが常にある」
――ニュー・アルバム『夢見る宇宙』は、サウンド的にはとても軽やかで、風通しのよさを感じる作品でした。どんなイメージを持って作られたんですか?
今井寿(G):創作活動している時は、“抜けがいい”ということはイメージとしてあって。ノリが良かったりポップだったり……曲の持ち味としてのダウナー感、みたいなものはあっても、アッパーな方向、という意識は漠然とありました。
櫻井敦司(Vo):今回は歌詞じゃなくて言葉、物語がまず先にあって、それからレコーディングに入って行ったんですけれども。一番最初に出て来たのが「夢見る宇宙」という言葉で。去年(2011年)の10~11月あたりには(曲が持つ)一つ一つの物語が既に出て来ていたので、そこを核にして肉付けして、歌詞になって行った、という感じでした。
――そういった歌詞の生まれ方というのは、かつてないことなんですか?
櫻井:いつもは曲が先で、というやり方でしたので、初めてですね。「夢見る宇宙」という曲に関しては、去年の暮れということもありまして……自分の中で、震災のことを避けては通れなくて。何か一つ、自分の中でアクションを起こさないとその次に進めない、というのがあったんですね。別れ、さよならの向こう側にはまだ何かあるんだよ、という“嘘”、ですね。嘘っていうと聞こえが悪いんですけれども、さよならの向こうにまだあるから、大丈夫だっていう…そういう嘘をつく、というか。物語を一つ作らないと、その次に進めない、という感じでした。
――浄土というか、“救いの物語”を描きたかった、ということでしょうか?
櫻井:浄土というとかなり“和”な感じがしますけれども、もちろんそういうのも含めての宇宙、と言いますか。まあ、“夢”ですね。夢だったらなんでもありだよ、という。包み込むように、“そういうのがあるから、大丈夫だよ”と言いたかったんです。
――そうだったんですね。M5の「夢路」からも、レクイエムのような印象を受けたんです。亡くなった方たちだけでなく、遺された人たちの心に向けての慈しみ、というか……。命というもの全体に捧げる曲たちなんでしょうか?
櫻井:ええ。鎮魂と言う意味もありますけど、やはり、当たり前ですけど、生きてる人、遺された人に聴かせたい、というのは正直ありました。「夢路」も去年の暮れに出来上がっていたんですけど、曲調がそういうものを引き出したところもありますね。“夢でなら、なんでもありだ” “君が想えば、逢えるんだ”ということを言いたかった曲です。
――打って変わって、今井さん作詞・作曲の「ONLY YOU-WE ARE NOT ALONE-」はビックリしてしまうぐらいポジティヴな世界観ですよね。
今井:最初の“ONLY YOU”のところの譜割りが、“ONLY YOU”か“I LOVE YOU”か、そういう言葉が心地いいだろうな、というところから作り始めたんですけど。それにどんどん自分が引っ張られて、出来上がってみたらそういう詞を書いてた、という感じです。
――なるほど。「CLIMAX TOGETHER」の陽気さも、かなりインパクトが強かったです。
今井:曲を作った後、“どんな感じの詞がいいかな?”と思ったときに、25周年のフェス(<BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE>9月22、23日 千葉ポートパーク内 特設野外ステージ)があるので、それに向けての曲があったら面白いかな? ということで書きました。
――そのフェスには、トリビュート・アルバム『PARADE II ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』に参加し、対バン・ツアー<TOUR PARADE 2012>で共演もしたアーティストたちが出演します。そういった交流から得られるものって、何ですか?
今井:刺激は感じてます。対バン・ツアーのときは、各バンド会場の上から観てて、皆お客さんたちとのコミュニケーションが独特で、面白かったですね。
櫻井:フェスは野外なので、ステージからの眺めがどういう風景になるか、楽しみです。
――アニバーサリー・イヤーならではの企画が目白押しなわけですが、シーンにおける不動の地位を確立し、25周年を迎えられたことについて、今、どんな思いがありますか?
櫻井:25周年だからどう、という意識は正直、ないんですね。でもスタッフの方々をはじめ、周りのみんなが盛り上げてくれてるので……前だったら“知らない人とはどうかな……?”という思いもありましたけど、まずは“やってみよう”という気持ちなんです。アニイ(ヤガミ・トール/Dr)の言葉を借りれば“一期一会”なんでしょうね。そう硬くならずに、皆が盛り上げてくれるんで、楽しもう、という感じです。
――これまでの25年間を振り返って、メンバー間の関係に変化はありましたか?
櫻井:個人個人、生活の環境も変わって来ましたし、昔とはやっぱり違いますけども……昔は“楽しければいいや”みたいなノリも多々ありましたが(笑)、ここ何年かは、いいもの、自分たちがカッコいいと思えるものに対してすごく貪欲になってきましたね。嫉妬するぐらいカッコいいバンドや、アーティストを見たら、制作に対する原動力にもなりますし。自分の作品で、例えば“前作ではなんでこういうことを思い付かなかったんだろう?”と感じたりもしますし。“新しい自分になりたい”という思いが常にあるので。
――実際に、ライヴ会場に足を運ばれることもあるんですか?
櫻井:年に2~3回ぐらいはありますね。最近だと、アニイのお誕生会(8月19日<ヤガミ・トール 50th Birthday Live>)でAUTO-MODを観たんですけど、アマチュアの時からすっごく好きだったので、刺激を受けましたね。
――今井さんはどうですか?
今井:最近で“結構行ってるな”というのは、布袋(寅泰)さんです。やっぱり人のライヴを観ると、勝手に(自分の頭が)考える、というか、刺激は受けますね。
――櫻井さんのお話に“新しい自分”という言葉がありましたが、BUCK-TICKは、“変わらない軸の部分”と“常に新しく変わっていく部分”、その両方があるからこそ人気を得続けているのではないか、と感じているのですが、いかがでしょうか?
今井:身も蓋もないんですけど、“やりたいからやっている”というところで。それを俯瞰で観たら“音楽シーンでこういう位置”というのはあるのかもしれないですけど……人は関係ないですからね。
――全く気にならないですか?
今井:そういうところでの発想というのは、全然ないのが本来、普通じゃないですか? もちろん、アルバムごとにテーマがあったり、“変わったな”というのは自覚してることなんですけど、“変わるため”に何かを変えよう、というのはないです。それってすごく苦痛だと思うんですよね。興味を持って“あ、面白いな”と思ってそこで何かを作るのが一番いいし、それしかできないので。
櫻井:僕も一緒ですね。無理に変えようなんて思っていませんし、“新しい自分”というのは、昨日より、前作より自分の中で新鮮に感じられればいいな、ということなんですね。“やったこと”じゃなくて、自分の“やること”に納得したいんです。新しいこと、変わったことをしたい、というより、“まだ何かあるんじゃないか?”という気持ちでやりたい。本当に小さいことなんですけども、今回の歌詞にしても、“いつもと何か違うかなあ”“まだ何かあるかな?”と思えている…そういう次元でのことですね。
――では、ファンの方たちの期待に対してはいかがですか? “こういうものを見せてあげよう”といったことは、あまり意識されないですか?
今井:ないことはないですけど……勝手にやってます(笑)。
櫻井:やっぱり自分たちがやりたいことをやっていくのが、一番いいと思います。本当にいいアイディアだったら向こうから入って来ると思し、ファンの意見というものも取り入れたい、とは思ってます。(ライヴ後に回収する)アンケートとかファンメールとかを読んで、取り入れて……ます(笑)。
――では、皆さんが長く愛され続けている秘訣を一言で表現すると、どうでしょうか?
櫻井:音楽に対しては真面目ですから、そういうところですかね? よくわかりませんけど。
今井:やっぱり音楽を面白がって聴いてくれてる、というのはあると思います。それがなかったら長続きはしないだろうな、とは思うので。
――音楽以外に、もう一つ挙げていただくとすれば、何でしょうか?
櫻井:うーん…こういう存在を、面白おかしく見てるんじゃないでしょうかね? こういうキャラというものを、日常から少し離れたところで見て、楽しんでもらってるのかな?
――お茶の間に迎合することなく、謎めいた部分を保っていらっしゃるのは、今の時代において稀有なことですよね。
櫻井:(笑)。別に“謎めかしてる”わけではないんですけど、(私生活を表に出すのは)柄じゃない、というか。そういう雰囲気が好きだからこういうキャラクターをまとっているし、そういうことを本気で歌っているし、というところがあるので、私生活のことはどうでもいい、と思ってほしい。そういうことも知りたいんでしょうが……僕には関係ないっていう(笑)。
――(笑)。では、この25年間で得たもの、失ったものというと、何でしょうか?
櫻井:得たものは、やっぱり人ですよね。スタッフの方、ファンの方、巡り会えたアーティストの方……それに尽きますね。失ったものも、人になりますかね。あとは、時間とか。
今井:得たものは僕も、経験とか、コネとか(笑)。失ったものは……いろいろあると思いますけど、それは時間が25年経ってるんで、仕方のないことだと思います。
――フェスが終わるとすぐ、10月6日からはアルバムを引っ提げてのホール・ワンマン・ツアーが始まりますね。
櫻井:時間もあるようでないので、舞台のデザイナーと、“これができる”“これはどうかな?”というアイディアを出して、いろいろと話している段階ですね。
――今後のBUCK-TICKの展望、新たに目指したいことはありますか?
今井:何も変わらないですね、はい。
櫻井:目先のことで頭がいっぱいなので、まずはフェスで、皆が“よかった”と思って帰路についてくれればいいな、と。ツアーも、初めて行く場所もあるので、そこで、“今の自分たち”を観てほしいです。若い人から同年代、上の世代の人まで、全部ひっくるめて。海外だと、おじいちゃんおばあちゃんでも音楽を身体で楽しんでいる……ああいう姿がすごくいいと思うので、そんな光景を見られればいいな、と思います。
取材・文●大前多恵
TRIBUTE ALBUM
『PARADE II–RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK』
2012年7月4日発売
¥3,000(tax in)
初回プレス分 上田宏描き下ろしイラスト・スリーブケース付き
<参加アーティスト / 収録曲>
1. Acid Black Cherry / ROMANESQUE
2. BREAKERZ / JUST ONE MORE KISS
3. cali≠gari / MISTY ZONE
4. POLYSICS / Sid Vicious ON THE BEACH
5. 氣志團 / MACHINE
6. MERRY / 悪の華
7. MUCC / JUPITER
8. Pay money To my Pain / love letter
9. D'ERLANGER / ICONOCLASM
10. N'夙川BOYS / EMPTY GIRL
11. THE LOWBROWS / エリーゼのために (THE LOWBROWS REMIX)
12. acid android / SEXUAL×××××!
13. AA= / M・A・D
New Album
『夢見る宇宙』
2012年9月19日発売
【初回限定盤】CD+DVD
TKCA-73811 ¥3,990(tax in)
【通常盤】CD
TKCA-73815 ¥3,000(tax in)
[CD]初回限定盤・通常盤 共通
1. エリーゼのために -ROCK for Elise-
2. CLIMAX TOGETHER
3. LADY SKELETON
4. 人魚-mermaid-
5. 夢路
6. ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-
7. 禁じられた遊び -ADULT CHILDREN-
8. 夜想
9. INTER RAPTOR
10. MISS TAKE -I’m not miss take-
11. 夢見る宇宙 -cosmix-
[DVD]初回限定盤
MUSIC VIDEO「CLIMAX TOGETHER」
Live at 日比谷野外大音楽堂 2012.6.10-
SE
1. エリーゼのために
2. REVOLVER
3. 疾風のブレードランナー
4. 夢見る宇宙
5. MY FUCKIN’VALENTINE
<BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE>
●9月22(祝・土) 、23日(日)千葉ポートパーク内 特設野外ステージ
出演:BUCK-TICK(両日)
【22日】acid android/cali≠gari/BREAKERZ/MUCC/MERRY/THE LOWBROWS
【23日】AA=/氣志團/D'ERLANGER/Pay money To my Pain/POLYSICS/N'夙川BOYS
料金:オールスタンディング(ブロック指定) 1day¥8,919(税込) /2days¥17,000(税込)
一般発売日:7月14日(土)
お問い合せ:SOGO TOKYO 03-3405-9999
【オフィシャルweb site】http://bt-onparade2012.com
<2012年 HALL TOUR>
●10月6日(土)17:00/18:00
神奈川:よこすか芸術劇場
KM MUSIC:045-201-9999
●10月8日(月・祝)17:00/18:00
静岡:静岡市民文化会館 大ホール
サンデーフォーク静岡:054-284-9999
●10月12日(金)18:00/19:00
埼玉:川口総合文化センター リリアメインホール
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●10月13日(土)17:00/18:00
栃木:栃木県総合文化センター メインホール
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●10月20日(土)17:00/18:00
奈良:なら100年会館 大ホール
SOGO OSAKA:06-6344-3326
GREENS:06-6882-1224
●10月21日(日)17:00/18:00
滋賀:滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
ナウウエストワン:075-252-5150
●10月25日(木)18:00/19:00
岡山:倉敷市芸文館
夢番地 岡山:086-231-3531
●10月26日(金)18:00/19:00
徳島:鳴門市文化会館
デューク高松:087-822-2520
●10月28日(日)17:00/18:00
佐賀:唐津市民会館
BEA:092-712-4221
●11月3日(土・祝)17:00/18:00
兵庫:神戸国際会館 こくさいホール
SOGO OSAKA:06-6344-3326
GREENS:06-6882-1224
●11月9日(金)18:00/19:00
埼玉:大宮ソニックシティ 大ホール
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●11月11日(日)17:00/18:00
神奈川:神奈川県民ホール 大ホール
KM MUSIC:045-201-9999
●11月13日(火)18:00/19:00
東京:渋谷公会堂
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●11月14日(水)18:00/19:00
東京:渋谷公会堂
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●11月18日(日)17:00/18:00
千葉:千葉県文化会館 大ホール
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●11月22日(木)18:00/19:00
石川:金沢市文化ホール
FOB金沢:076-232-2424
●11月24日(土)17:00/18:00
新潟:新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあ 劇場
FOB新潟:025-229-5000
●11月25日(日)17:00/18:00
長野:ホクト文化ホール 中ホール(長野県県民文化会館)
FOB新潟:025-229-5000
●12月1日(土)17:00/18:00
大阪:オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
SOGO OSAKA:06-6344-3326
GREENS:06-6882-1224
●12月2日(日)17:00/18:00
大阪:オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
SOGO OSAKA:06-6344-3326
GREENS:06-6882-1224
●12月7日(金)18:00/19:00
宮城:東京エレクトロンホール宮城 大ホール
GIP:022-222-9999
●12月9日(日)17:00/18:00
北海道:札幌市教育文化会館 大ホール
マウントアライブ:011-211-5600
●12月12日(水)18:00/19:00
群馬:群馬音楽センター
SOGO TOKYO:03-3405-9999
●12月15日(土)17:00/18:00
福岡:福岡市民会館 大ホール
BEA:092-712-4221
●12月16日(日)17:00/18:00
広島:広島アステールプラザ 大ホール
夢番地 広島:082-249-3571
●12月22日(土)17:00/18:00
愛知:日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
サンデーフォークプロモーション:052-320-9100
●12月29日(日)17:00/18:00
東京:日本武道館
SOGO TOKYO:03-3405-9999
■料金 :¥6,500(税込)
■一般発売日:2012年9月1日(土)
※3歳未満入場不可/3歳以上有料
※客席を含む会場内の映像・写真が公開される場合があります。予めご了承ください。
FISH TANK会員の皆様には、 会報64号にてチケット先行予約のご案内を行っております。
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