死霊復活!THE SLUT BANKS、12年ぶりの新作『チクロ』登場に寄せて
3月7日、THE SLUT BANKSのニュー・アルバム『チクロ』がついに発売を迎えた。この作品に触れた誰もが、紆余曲折を経ながらこのバンドが辿り着いた“今”がいかに刺激的で充実したものであるかを実感することになるに違いない。とはいえ、もはや多くの読者はこの“死霊バンド”の素性や過去の歩みについてお忘れかもしれない。この場で改めて、あれこれと振り返っておくことにしたい。
◆THE SLUT BANKS画像
こんなバンド、他に絶対いない――THE SLUT BANKSの第一印象がコレだった。
2000年の師走に発売されたこのバンドのベスト・アルバム『EVIL THE END〈死霊終了〉』のライナーノーツ原稿の冒頭に、僕はそんな一文を綴っている。そして実際、2012年となった現在もその印象は少しも変わっていない。とはいえ、まさか彼らがふたたび地表へと蘇り、こうして実に12年ぶりとなるニュー・アルバムを届けてくれることになろうとは思ってもみなかったが。
バンドの誕生は1996年に遡る。地獄から死霊として生還したロックスターたちにより結成、というどこまで本気なのかがわかりにくいコンセプトに基づきながらその歴史は幕を開けた。当初のラインナップはTUSK(Vo)、DUCK-T(B:のちにDUCK LEEと改名)、Dr.SKELTON(G)、SMOKIN' STAR(Dr)という顔ぶれ。各々の正体は……という話は勝手ながら省略させていただく。
都内のライヴハウスを中心にフットワークのいい活動を展開していた4人は、1997年5月には『死霊の悪知恵』と題されたミニ・アルバムをインディーズで発表。同年10月には『死霊の激愛』でメジャー・デビューを果たし、世紀末が迫りつつあったこの世で勢力を拡大。1998年には名盤との誉れ高い『PIKA-BANG!』、かのNIRVANAとの仕事でも知られる鬼才スティーヴ・アルビニをプロデューサーに起用して米国はシカゴで録音された『I'LL GO AROUND』といった画期的マキシ・シングルを発表し、1999年4月には2枚目のフル・アルバム『死霊光線~Evil Beam』を生み落している。
その後、メンバー交代劇を経て2000年3月には『死霊遊戯~EVIL THE DRAGON』をリリース。二代目ギタリスト、その名もSTONE STOMAC弐代目を擁する顔ぶれでの快進撃はさらに続くものと思われたが、バンドは同年夏、発展的分裂へ。そうしたさほど長くない歴史のなかで彼らが体現していたのは、まさに掟破りなロックンロールだった。怒濤のごとき轟音と、際立つメロディ。ウタゴコロと、高度な技術に裏付けられた超人的演奏。ハードコア・パンクも震え上がる暴力性と、伝統的メタルも霞む独自の様式美。解読不能だけど痛快な歌詞と、涙を誘う美旋律。THE SLUT BANKSの音楽はそれらすべてを併せ持っていた。
ものすごくシンプルに言えば、えらくマニアックでありながら非常にポピュラリティの高い音楽を創造していた、ということにもなるだろう。だから実際、彼らにはいわゆるメガ・ヒット作品などひとつもないが、過去のアルバムはいずれも、死霊のくせに図々しいくらいのセールスを記録していたりもする。
そして音楽業界に冷たい風が吹きすさぶ2012年、死霊たちの逆襲がいよいよ本格的に始まった。ひとたび解散を経ているとはいえ、あの世から蘇ったゾンビたちは二度と死ぬことがないし、彼らにとっては再結成などお安い御用。2007年の大晦日に一時的な復活を遂げたのち、徐々にライヴハウス・シーンを騒がせ始め、2009年以降には会場限定ミニ・アルバムなどの発売も重ねてきた。
2012年に入り、バンドは満を持してフル・アルバム制作を開始。しかも今回は、歴代ギタリスト双方を含む5人編成となっており、さらには新ドラマー、HONEY bee GARDEN弐代目を迎えていたりもする。過去最強の布陣による死霊史上最強のロックンロールが凝縮されたこの最新音源は、『チクロ』と命名されている。
有害とされる人工甘味料チクロは、当然ながらとうの昔に使用が禁じられているものだ。が、砂糖の何十倍も甘みが強いとされるその“甘い毒”と同様に、THE SLUT BANKSのロックンロールには、世間一般のそれと比べて過度に濃厚で刺激的なところがある。しかもこっちの『チクロ』は、何の制限もなく世の中に解き放たれることになる。もちろんそれが人畜無害であるという保証など、どこにもありはしない。
ちなみに3月10日にシンコーミュージック・エンタテイメントより発売される『MASSIVE vol.5』には、今作完成に際しての、DUCK-LEEこと戸城憲夫のロング・インタビューも掲載されている。さらにバンドは3月下旬より全国ツアーも開始。こちらも当然ながら要チェックだ。
死霊たちの仕掛けた甘い罠に、ご注意あれ。
増田勇一
『チクロ』
2012年3月7日発売
LBSB-0022 3,000円(税込)
<THE SLUT BANKSライブ>
3月27日(火)東京代々木labo
3月31日(土)新横浜SUNPHONIX HALL
4月2月)稲毛K'S DREAM
4月6日(金)郡山club#9
4月7日(土)仙台MACANA
4月8日(日)宇都宮KENT
4月10日(火)浜松FORCE
4月11日(水)大阪KING COBRA
4月14日(土)札幌VIYATTO〈unplugged gig〉
4月15日(日)札幌COLONY
4月18日(水)広島ナミキジャンクション
4月20日(金)大阪club★jungle〈unplugged gig〉
4月21日(土)神戸STAR CLUB
4月22日(日)岐阜柳ケ瀬ANTS
4月26日(木)東京新宿LOFT
4月28日(土)岡山Desperado
4月29日(日)福岡DRUMSON
4月30日(月/祝)大阪club DROP
5月3日(木/祝)西川口Hearts
5月4日(金/祝)横浜BAYSIS
5月5日(土/祝)東京代々木labo〈unplugged gig〉
5月10日(木)新潟club RIVERST
5月11日(金)金沢vanvan V4
5月13日(日)名古屋UPSET
5月19日(土)東京吉祥寺ROCK JOINT GB
◆THE SLUT BANKSオフィシャルサイト
◆THE SLUT BANKS画像
こんなバンド、他に絶対いない――THE SLUT BANKSの第一印象がコレだった。
2000年の師走に発売されたこのバンドのベスト・アルバム『EVIL THE END〈死霊終了〉』のライナーノーツ原稿の冒頭に、僕はそんな一文を綴っている。そして実際、2012年となった現在もその印象は少しも変わっていない。とはいえ、まさか彼らがふたたび地表へと蘇り、こうして実に12年ぶりとなるニュー・アルバムを届けてくれることになろうとは思ってもみなかったが。
バンドの誕生は1996年に遡る。地獄から死霊として生還したロックスターたちにより結成、というどこまで本気なのかがわかりにくいコンセプトに基づきながらその歴史は幕を開けた。当初のラインナップはTUSK(Vo)、DUCK-T(B:のちにDUCK LEEと改名)、Dr.SKELTON(G)、SMOKIN' STAR(Dr)という顔ぶれ。各々の正体は……という話は勝手ながら省略させていただく。
都内のライヴハウスを中心にフットワークのいい活動を展開していた4人は、1997年5月には『死霊の悪知恵』と題されたミニ・アルバムをインディーズで発表。同年10月には『死霊の激愛』でメジャー・デビューを果たし、世紀末が迫りつつあったこの世で勢力を拡大。1998年には名盤との誉れ高い『PIKA-BANG!』、かのNIRVANAとの仕事でも知られる鬼才スティーヴ・アルビニをプロデューサーに起用して米国はシカゴで録音された『I'LL GO AROUND』といった画期的マキシ・シングルを発表し、1999年4月には2枚目のフル・アルバム『死霊光線~Evil Beam』を生み落している。
その後、メンバー交代劇を経て2000年3月には『死霊遊戯~EVIL THE DRAGON』をリリース。二代目ギタリスト、その名もSTONE STOMAC弐代目を擁する顔ぶれでの快進撃はさらに続くものと思われたが、バンドは同年夏、発展的分裂へ。そうしたさほど長くない歴史のなかで彼らが体現していたのは、まさに掟破りなロックンロールだった。怒濤のごとき轟音と、際立つメロディ。ウタゴコロと、高度な技術に裏付けられた超人的演奏。ハードコア・パンクも震え上がる暴力性と、伝統的メタルも霞む独自の様式美。解読不能だけど痛快な歌詞と、涙を誘う美旋律。THE SLUT BANKSの音楽はそれらすべてを併せ持っていた。
ものすごくシンプルに言えば、えらくマニアックでありながら非常にポピュラリティの高い音楽を創造していた、ということにもなるだろう。だから実際、彼らにはいわゆるメガ・ヒット作品などひとつもないが、過去のアルバムはいずれも、死霊のくせに図々しいくらいのセールスを記録していたりもする。
そして音楽業界に冷たい風が吹きすさぶ2012年、死霊たちの逆襲がいよいよ本格的に始まった。ひとたび解散を経ているとはいえ、あの世から蘇ったゾンビたちは二度と死ぬことがないし、彼らにとっては再結成などお安い御用。2007年の大晦日に一時的な復活を遂げたのち、徐々にライヴハウス・シーンを騒がせ始め、2009年以降には会場限定ミニ・アルバムなどの発売も重ねてきた。
2012年に入り、バンドは満を持してフル・アルバム制作を開始。しかも今回は、歴代ギタリスト双方を含む5人編成となっており、さらには新ドラマー、HONEY bee GARDEN弐代目を迎えていたりもする。過去最強の布陣による死霊史上最強のロックンロールが凝縮されたこの最新音源は、『チクロ』と命名されている。
有害とされる人工甘味料チクロは、当然ながらとうの昔に使用が禁じられているものだ。が、砂糖の何十倍も甘みが強いとされるその“甘い毒”と同様に、THE SLUT BANKSのロックンロールには、世間一般のそれと比べて過度に濃厚で刺激的なところがある。しかもこっちの『チクロ』は、何の制限もなく世の中に解き放たれることになる。もちろんそれが人畜無害であるという保証など、どこにもありはしない。
ちなみに3月10日にシンコーミュージック・エンタテイメントより発売される『MASSIVE vol.5』には、今作完成に際しての、DUCK-LEEこと戸城憲夫のロング・インタビューも掲載されている。さらにバンドは3月下旬より全国ツアーも開始。こちらも当然ながら要チェックだ。
死霊たちの仕掛けた甘い罠に、ご注意あれ。
増田勇一
『チクロ』
2012年3月7日発売
LBSB-0022 3,000円(税込)
<THE SLUT BANKSライブ>
3月27日(火)東京代々木labo
3月31日(土)新横浜SUNPHONIX HALL
4月2月)稲毛K'S DREAM
4月6日(金)郡山club#9
4月7日(土)仙台MACANA
4月8日(日)宇都宮KENT
4月10日(火)浜松FORCE
4月11日(水)大阪KING COBRA
4月14日(土)札幌VIYATTO〈unplugged gig〉
4月15日(日)札幌COLONY
4月18日(水)広島ナミキジャンクション
4月20日(金)大阪club★jungle〈unplugged gig〉
4月21日(土)神戸STAR CLUB
4月22日(日)岐阜柳ケ瀬ANTS
4月26日(木)東京新宿LOFT
4月28日(土)岡山Desperado
4月29日(日)福岡DRUMSON
4月30日(月/祝)大阪club DROP
5月3日(木/祝)西川口Hearts
5月4日(金/祝)横浜BAYSIS
5月5日(土/祝)東京代々木labo〈unplugged gig〉
5月10日(木)新潟club RIVERST
5月11日(金)金沢vanvan V4
5月13日(日)名古屋UPSET
5月19日(土)東京吉祥寺ROCK JOINT GB
◆THE SLUT BANKSオフィシャルサイト
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