AUN J クラシック・オーケストラ、生音にこだわった真の和楽器の音

ポスト

2010年10月25日、浜離宮朝日ホールにてAUN J クラシック・オーケストラのモン・サン=ミシェル凱旋ライブが開催された。これは、2010年6月末にフランスの世界遺産のモン・サン=ミシェルにおいて、日本人として初のライブを行なった彼らの帰国凱旋記念公演だ。モン・サン=ミシェルに日本の国旗が掲げられた歴史的なライブだ。

◆AUN J クラシック・オーケストラ画像

会場は満員。BS日テレで放送された特別番組「和の絆 世界遺産"モン・サン・ミッシェル"に響く!」を見て来場した方も多かったようだ。

今回のライブは、生音にこだわり真の和楽器の音を楽しむライブ。モン・サン=ミシェルでのライブを再現しつつ、久し振りに大太鼓も登場する。ステージ中央に、置かれた大太鼓が偉大なパワーを放っていた。

定刻、ライブが始まる。メンバー全員での演奏。2曲を終えてメンバー紹介。「モン・サン=ミシェルに行かれたことありますか?」という言葉も。モン・サン=ミシェルは、世界遺産のなかでも最も人気のある場所。まさに「天空の城」だということで、『天空の城ラピュタ』の主題歌「君をのせて」。聴いていると、まるで空の中を旅しているよう。

続くは、一気に会場をロック色に変える男4人よる「プレイバック」。三味線がギターに見えたのは私だけではないはず。演奏しながらのパフォーマンスは、まるでEXILE。毎回新しいことを見せてくれる彼らのパワーに感謝だ!

そのパワーのまま「トンテケトン」へ。本来は別の曲を用意していたが、今日はこちらが良いという現場での判断。まさにライブは生ものだ。

そして、このライブの中での決まり事が「盛り上がってるか?」と問いかけられたら、会場は「Oui(ウィ)」と答えるということ。実際は、「盛り上がってるか?」と聴かれると「わ~」と声を出してしまうのが日本人だが、ここでは、彼らがモン・サン=ミシェルで体験した「盛り上がってるか?」「Oui」を再現。ライブ中、何度も問いかけられ、その度に叫びそうになる声を抑えて「Oui」と応えた。

そんなやりとりのあとは、フランスで大絶賛され、終了後「あの曲は?」と問い合わせが殺到したという箏二面による「鳥のように」。時に小鳥がついばむように、また激しく飛び立つように表現される音。繊細だと思っていた箏がこんなにもダイナミックな表情を見せるということに驚いた。

告知タイムでは、CMソングが決まったことを発表。第九をカバーした曲が11月1日から流れるそうだ。30秒の音を作るのに10時間近くかかったという裏話も。また、モン・サン=ミシェルの写真集を冊数限定で制作したこと、2011年にはオリジナルアルバムが発売されることも告知。

ここでAUNの曲「サンセット」を。まるで箏が打楽器のように響いた。太陽が帰る空を想像していると、「心に夕陽は沈みましたでしょうか」という言葉が。その後、客席後方から尺八が2人、まるで侍のように登場する。タイムスリップしたような気持ちになる。私が勝手に想像したの、巌流島の武蔵と小次郎だ。

会場の中を歩き、舞台に上がり袖にはける。それを待っていたかのようにAUNの2人が登場。2人の動きがコミカルでたまらないあうん三味線。そして、本日のメインイベント。大太鼓の出番! 赤い照明がまるで炎のように。離れて見ているのに、飛び散る汗が見える。音ひとつひとつが、身体に響くというよりも、身体を突き抜けていく。初めての感覚で形容詞が見つからない。約16分とのことだが、それ以上の時間、その世界にいたような気がする。

大太鼓から「グランドゼロ」へ。目が離せないというか、身体ごと持っていかれる感覚。強い衝動が身体を抜けていった。

激しさのあとには、繊細な音が待っている。客席に現れたのは鳴り物の秀。囁くような音を響かせながら、問いかけるように客席の隅々まで音を運ぶ。あまりの細やかさに空気がピンと張りつめる。

秀がステージにあがると、AUNが登場し「1969-10」。カジュアルなTシャツ姿に変わっている。3人はとてもコミカルで100%エンターテインメント。秀の側転も見事だ。本編ラストは、全員でケツメイシの「さくら」。これは箏でのラップが見物。とても明るい気持ちで終了した。

そして、アンコール。子どもたちに『和』の音を届けたいという想いのある彼ら。小学校を周り演奏し、桜の植樹を行なっている。そんな報告も。

2011年2月15日には、「アルバムリリース記念パーティ」として、六本木スイートベイジルSTB139でのライブが決定。彼らはもう、未来に向かって走り出している。これまでにない和楽器オーケストラとして、新しいジャンルを作りつつある。それが多くの人に受け入れられる日も近いだろう。

ラストは、未来に広がる明るい空をイメージさせてくれる「道~Road」。和楽器の優しい音につつまれ、ライブは終了した。終了後、ロビーでは多くの人が、彼らのCDを求めていた。メンバー全員が並び、CDにサインをするのが彼らのスタイル。長い列ができていたが、彼らはひとりずつ丁寧にコミュニケーションをとっていた。

『和』を伝える使命を持った彼ら。これからの活動が本当に楽しみだ。

<AUN J クラシック・オーケストラ@浜離宮朝日ホール 2010年10月25日>
1.ナウシカ 作曲:久石譲 / AUN J クラシック・オーケストラ
2.風の通り道 作曲:久石譲 / AUN J クラシック・オーケストラ
3.君をのせて 作曲:久石譲 / AUN J クラシック・オーケストラ
4.プレイバック 作曲:井上公平 / 井上公平 井上良平 尾上秀樹 伊藤圭祐 
5.トンテケトン 作曲:HIDE-HIDE / 尾上秀樹 石垣秀基 AUN&秀
6.鳥のように 作曲:沢井忠夫 / 市川慎 山野安珠美
7.Shepherd Moons 作曲:エンヤ / AUN J クラシック・オーケストラ
8.サンセット 作曲:井上公平 / 井上公平 山田路子 市川慎
9.あうん三味線 作曲:AUN / 井上良平 井上公平
10.大太鼓 / 井上良平 
11.グランドゼロ 作曲:井上良平 / 井上良平 井上公平
12.1969-10 作曲:井上公平 / AUN&秀
13.さくら 作曲:ケツメイシ / AUN J クラシック・オーケストラ
14.道~Road 作曲:井上公平 / AUN J クラシック・オーケストラ

<AUN J クラシック・オーケストラ・ライブ2010>
2010年11月13日(土)
@岐阜県美濃加茂市文化会館
2010年12月12日(日)
@三重県川越町あいあいホール

<アルバムリリース記念パーティ>
2011年2月15日(火)
@六本木スイートベイジルSTB139
OPEN 18:30 / START 20:00
※変更する可能性有り。Webサイトでご確認ください。
チケット代:5,250円(税込・整理番号有り)
[問]ララマハロ TEL:03-6415-8863
◆AUNオフィシャルサイト
◆AUN Jクラシック・オーケストラ・オフィシャルサイト

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
この記事をポスト

この記事の関連情報