34年の時を経て、神話と化した<ザイール'74>が今明らかに
熱心な音楽ファンの間では、“キンシャサの奇跡”と称されたモハメッド・アリ対ジョージ・フォアマンの対戦前に行なわれた、<ザイール'74>と題されたコンサートの存在は語られ続けていた…が、それがいったいどういったものなのか全貌を知る手だては今まで存在しなかった。
◆映画『ソウル・パワー』予告編映像&画像
“ブラック・ウッドストック”とも呼ばれた<ザイール'74>は、誇りを持ってルーツ回帰へと目指したアフリカ系アメリカ人ミュージシャンと、解放運動のために戦い続けてきたアフリカン・ミュージシャンが同じステージに立った、歴史的な転換点だ。
ソウルの帝王:ジェームス・ブラウン、ブルースの神様:B.B.キング、サルサの女王:セリア・クルースとファニア・オールスターズ、南アフリカの闘士:ミリアム・マケバ、フュージョン界のスーパーグループ:ザ・クルセイダーズ…これ以上は望めないというほどのアーティストがザイールに集結したのだ。
それが、当時のアリの試合をドキュメントした『モハメド・アリかけがえのない日々』(1997年アカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞)の編集担当だったジェフリー・レヴィー=ヒンテの手により、34年もの間お倉入りとされていた125時間にわたるフィルムが編集され2009年に蘇った。
それが6月12日(土)より公開される、映画『ソウル・パワー』だ。
ヒンテ監督は、『モハメド・アリ かけがえのない日々』の編集の時にコンサート・パートのフィルムが撮影されている事を知り、こう言っている。「この記録の存在を知っているということが、私の肩にのしかかった。もし自分がこれらの記録に日の目を見させようとしなければ、私はこれらのイベントを人々に気付かなくさせ、みんなが起こったことを見聞きする機会を奪うことに加担するような気がした」。
そしてそこからさらに10年の歳月を経て、ついに日の目を見ることとなったのだ。
最も脂が乗った時代のジェームス・ブラウンをはじめ、B.B.キング、セリア・クルース、ミリアム・マケバ、ビル・ウィザース、ザ・スピナーズ、ザ・クルセイダーズなどアフリカン・アメリカン・ミュージシャンらとアフリカのミュージシャンが競演するという歴史的コンサートが<ザイール'74>である。彼らはザイールの観衆に熱狂を与えただけではなく、自分たちのルーツであるアフリカに帰って最高のパフォーマンスをしたことは、彼らのキャリアにとっても大きく触発される出来事となった。
このドキュメンタリーは、ザ・ローリング・ストーンズの『ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター』の撮影で有名なアルバート・メイズルスをはじめ4名の撮影監督によるシネマ・ヴェリテ(ダイレクト・シネマ)の手法により撮影されている。その映像と、当時としては最先端のマルチトラック・レコーダーがアメリカから持ち込まれ、最良の音質で録音されたサウンドトラックにより、まさに生命力が溢れてくる作品となっているのだ。
『ソウル・パワー』では、ライブシーンのみならずコンサートが開催されるまでの困難なプロセス、そしてドン・キング、モハメッド・アリによるトークを巧みに編集し映画の中に織り交ぜ、このコンサートが20世紀に行なわれたアフリカン・アメリカンのミュージック・イベントとして、神話的な重要性を獲得していることを証明しているのである。
映画『ソウル・パワー』
監督:ジェフリー・レヴィ=ヒント
出演:ジェームス・ブラウン、ビル・ウィザース、B.B.キング、ザ・スピナーズ、セリア・クルース&ザ・ファニア・オール・スターズ、クルセイダーズ、モハメド・アリ、ドン・キング、スチュワート・レヴァィン 他
プロデューサー:デヴィッド・ソネンバーグ、レオン・ギャスト
原案:スチュワート・レヴァイン
音楽祭プロデューサー:ヒュー・マセケラ、スチュワート・レヴァイン
編集:デヴィッド・スミス
アメリカ/93分/2008年/カラー/ドルビーSRD/英語、フランス語 他
字幕:望月美実
字幕監修:中田亮
字幕翻訳協力:ヒルトン・ムニシ、南アフリカ大使館、上川大助
6月12日(土)よりシネセゾン渋谷、吉祥寺バウスシアター、K'sシネマ、川崎チネチッタほか、全国順次公開予定
◆映画『ソウル・パワー』オフィシャルサイト
◆映画『ソウル・パワー』公式twitter
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