青い血流が迸るX JAPANが生み出した「愛」のちから
◆青い血流が迸るX JAPANが生み出した「愛」のちから ~写真編~

「“X”って“無限の可能性”って意味なんだよ。YOSHIKIがつけたんだ…。」
オープニングの映像は97年のLAST LIVEだった。TOSHIの言葉が静かにサーキットに響く。スクリーンにはそれぞれのメンバーがそれぞれの想いを胸に秘め、静かな微笑みをたたえていた。「編集しながら泣いてしまった」とYOSHIKIも後に語ったが、ここから10年後、X JAPANは奇跡の再結成を果たすことになる。これが本当にどれだけ奇跡的なことだったか、その軌跡がこのFILM GIGの映像にしっかりと刻まれていた。

「Tears」のしっとり切ないメロディーが夜空に溶け込むと、思わずぐっと涙がこみあげてきそうになる。X JAPANがくれたたくさんの思い出のアルバムを1枚1枚たどっているようだ。その後も各公演の映像で、「紅」「Without You」「I.V.」では台湾公演でのウェディングドレス姿のYOSHIKIが、そして「X」が流れるとサーキットもX JUMPで大きく揺れた。
台湾公演での「X」、台湾コールが響く中、それにかぶさるようになぜか「鈴鹿コール」が聞こえてくる。ゆっくりステージに現れたのはTOSHIだ。「今日はお前たちのエネルギーを感じたぜー!もう1発一緒にやろうぜー!」という掛け声を合図にラスト「ENDLESS RAIN」がスタートした。
「ENDLESS RAIN」の合唱が響く中、もう一度ラストライヴの映像にもどりFILM GIGの終わりを感じていると、上空に一際まぶしい光を放つ星がひとつ。サーキットに近づくとともにプロペラ音が聞こえてくる。ヘリだ。どんどん高度をさげながらサーキットに近づき上空をくるりと旋回すると、そのままサーキットの敷地に着陸していく。ビジョンは突然切り替わり、ヘリの映像が中継される。息を飲み見守る観客。ヘリの扉が開き、期待で空気がピンと張り詰める中、ヘリから出てきたのはもちろんYOSHIKIだ。会場は大熱狂に包まれた。

YOSHIKIの体調をずっと心配していたファンたちの興奮はもうおさまらない。「YOSHIKIコール」が鳴り止まない中、首にはコルセット、左手にはサポーターを巻いた、少し痛々しい様子のYOSHIKIは、ゆっくりと話を始めた。
「首の手術をしたんですけど、そのときに…」
声が震え、YOSHIKIは言葉を詰まらせた。その様子に観客も泣き叫ぶかのように、YOSHIKIの名前を呼び続ける。「一人じゃ喋れないや。」と再びTOSHIをステージ呼び、再び手術のあとの体調について語り始めた。
「手術のときにみなさんからもらったメッセージを読んですごく心強かったというか…」
再び詰まらせた言葉をYOSHIKIは、そのまま言葉を続けた。

TOSHIも体調に気遣い「LAから来るのはやめといた方がいいんじゃないの?」とYOSHIKIに話したが、「いや、どうしても(みんなに)会いに行く!」とYOSHIKIが今回のサプライズ出演の決行に至る経緯を語った。
手術は成功したものの、術部の炎症が6週間程度は続くという。術前より状態が悪く手のしびれが強く出ている状況だが、炎症が治まれば症状も軽減していくとのことだ。「身体を動かした方が回復は早いと言われていて、病院や自宅に引きこもる生活より、今回鈴鹿に来たことで劇的に回復した気がする」と23日のレース観戦時にYOSHIKIは語った。「みんなの顔を見たら感極まっちゃって、ジーンときちゃって。TOSHIが居なかったらたぶん何も喋れなかった。」と吐露するYOSHIKI。TOSHIはそんなYOSHIKIの心中を察して、YOSHIKIが言葉がつまるたび、すかさずフォローをしていた。

「本当にみんな我慢強く待ってくれてどうもありがとう。首が曲げられないのでお辞儀ができないけど、頭のなかでお辞儀しています。」と冗談を含ませながらも、張り裂けんばかりのファンへの感謝は、会場のみんなにひしひしと伝わったはずだ。
「コンサートは延期になってしまったけど、今も活動を止めてるわけじゃありません。こないだレコーディングもしたし、新曲もできました。一日も早くアルバムをリリースしたいし、一日も早くツアーも再開したいのでこれからリハビリ一生懸命がんばりますし、みんなに夢を与えるようなバンドになりたいと思います。今日は本当にありがとうございました。」
幾度となくX JAPANに降りかかってきた試練。「X を解散したときと、HIDEがいなくなったときの痛みに比べたら100分の1です。こんなの耐えられます。」とのYOSHIKIのセリフは、取材陣から「今回のハードルの高さはどれくらいだと思うか」という問いに答えたものだった。
「今はX JAPANという戻る場所があるからそこに向かって頑張っていける。もしX JAPANが無いときにこういうことがあったら、もう生きる希望を無くしてたと思う。でも今は行かなきゃいけない場所があるから。何もない暗闇をただ彷徨ってた時期もある。今は光が見えてるんだから、ただそこに向かって歩いていけばいいだけです。」と笑顔で語るYOSHIKIのその表情にも口調にも、一切の迷いは無い。
YOSHIKIが命をかけて攻め、守り続けているものが、X JAPANというモンスター。X JAPANの鼓動はYOSHIKIであり、モンスターの四肢は頑強なメンバーで形作られている。だがそのモンスターに流れている青い血は、世界中のX JAPANを愛するオーディエンスが流す血流だ。
強靭な精神力、常識を逸脱する酷使された肉体。そして、それに反比例するかの繊細で傷つきやすいデリケートな魂。痛みを知り、絶望を知り、希望を知り、夢を知り、愛を知る。進むべき先はひとつ。X JAPANを包む巨大な愛の存在は、YOSHIKIを真っ直ぐに真っ直ぐに突き進ませる。
絶対にあきらめないという、シンプルな強さ。それが、青い血流がほとばしるX JAPANが生み出した「愛」のちからなのである。
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