世界遺産の町ベトナム、ホイアンに響くGYPSY QUEENのロック
2009年8月14日から16日まで、ベトナム中部にある世界遺産の町ホイアンで<HOIAN-JAPAN FESTIVAL 2009>が開催された。
スペシャル野外ステージSong Hoai Squareで行なわれた<The Opening ceremony>と<Japan Festival 2009>に出演したのが、GYPSY QUEENとベトナムを代表する国民的シンガーであるMy Linh(ミーリン)だ。GYPSY QUEENとMy Linhは、2008年9月に日本で開催されたベトナム・フェスティバルで出会っており、今回は、GYPSY QUEENから出演のオファーをした。
14日の<The Opening ceremony>では、GYPSY QUEENが2曲、My Linhがイベントのテーマソングでもある「Paradise in your soul」を披露した。
そして、15日の<Japan Festival 2009>では、GYPSY QUEENが6曲、My Linhが3曲を歌った。15日は本番直前に街全体の停電もあり、スケジュールよりも約1時間押しの状態。22時近くになっての出演に、お客さんが帰ってしまうのではないかという不安をよそに、会場は超満員。街全体が、このイベントを、GYPSY QUEENのロックを、そしてMy Linhを待っていたことが伝わる。
GYPSY QUEENのヴォーカルShinonは、14日は青い衣装、そして15日は着物風ドレスで登場した。15日、1曲目はベトナムらしく「Saigon City」。そしてベトナム語と日本語でのMCをはさみ、ベトナム語で「Bon Phuon Trio」。GYPSY QUEENは、海外でライヴをする際に、MCをその国の言葉で行なうことのほかに、必ずその国の言葉で歌う。それにより観客との距離が一気に縮まる。そして、今回初めて海外での彼らのライヴを目の当たりにした私が感じたのは、GYPSY QUEENは海外で化けるということだ。国内でのライヴは、正直あまり広い会場で行なわれない。そこでも、もちろんアジアを感じてはいたのだが、それはあくまでアジアな感じだったことに気づく。実際に国へいくことで、彼らは日本語で歌いながらも、アウェイであるその国のなかに飛び込み、会場をホームに変えてしまう。そういう意味で、GYPSY QUEENは化けると表現したい。
屋外という開放的な空間。Festival、お祭りという解放感。人で埋め尽くされた会場は、昼間のリハの暑さを超えるほどの熱さとなる。「mot minh」では、会場から自然に手拍子がわき上がり、いっそう盛り上がる。ヴォーカルShinonは、ベトナム語と英語、日本語を駆使してMCを行ない、ベトナム語で補いきれない分は「日本語を習っている人、ベトナム語で伝えてください」とコメント。ホイアンは、日本橋(来遠橋)と呼ばれる屋根付きの橋があり、日本と縁が深い土地なのだ。そして、アップテンポな「Alfred&Julia」「フロイト」へ繋ぐ。そして、GYPSY QUEENのラストソングは「Sea line」。言葉は伝わっていないはずなのに、会場はまるで彼らを見に来たよう。音楽という共通言語を感じざるを得ない。
6曲を歌い終えた、Shinonはベトナムの国民的シンガーMy Linhへマイクを繋ぐ。彼女の声には、低音から高音までさまざまな表情がある。深みがあるとか、迫力があるとか、声量があるとかなんて言葉では、表現できない鳥肌感。ベトナムのシンガーは毎日のようにステージに出るという。そういうことからも、鍛えられた声。いや、それ以上に持って生まれた天性のものと言っても良い、聴く者をアクティブにさせながらも恍惚とさせる力がある。会場は自国の国民的シンガーを200%以上の気持ちで歓迎している。
My Linhが最後に歌うのは、GYPSY QUEENのAKIが書いた今回のイベントテーマソングである「Paradise in your soul」。自分の心のなかにこそ、大切なものはある。それに今こそ、気づこうというメッセージソングだ。彼女が歌う際に、バックをつとめるのはGYPSY QUEENのメンバー。彼女は曲を通して、演奏を通して、GYPSY QUEENのコラボレートを楽しむように歌う。そして、それが強い強いメッセージとなる。
ベトナムでの2日間にわたってのライヴはここで終わるが、ベトナムと日本のイベントは、9月19日、20日に代々木公園で開催される<ベトナムフェスティバル>に繋がる。今回は残念ながらMy Linhは来日できないが、GYPSY QUEENのオファーにより、ベトナムを代表するアーティストが日本で歌う。
今回、GYPSY QUEENと共に旅をし、日本では見られない彼らの姿を見た。なぜ、彼らは海を越えて歌うのか、さまざまな正直めんどくさいことを乗り越えて新しい土地で歌を歌うのか? そして、なぜそれを繰り返すのか? といくつかの疑問が、旅を終えた今、ほんの少しだけ分かった気がする。そのひとつが、音楽に国境はないというが、多くの場合「事情」という言葉で作られる国境。それを彼らは、ひとつずつ壊していく。自分たちの手で、アーティストに直接オファーをすることで、仕事というビジネスライクではない、人と人との繋がりを作っていく。それは、ライヴ後ホーチミンで行なった9月の<ベトナム フェスティバル 2009>に向けての現地シンガーHien ThucやMinh Thuとのミーティングでも感じたことだ。
アウェイをホームに変えて、彼らはアジアで化け続けるだろう。そして今は、その姿を日本へ逆輸入してほしいと切に願う。
Photo by Naomichi Seki
14日セットリスト
GYPSY QUEEN
・Bon Phuon Trio
・Blue sky
My Linh
・Paradise in your soul
15日セットリスト
GYPSY QUEEN
・Saigon City
・Bon Phuon Trio
・mot minh
・Alfred&Julia
・フロイト
・Sea line
My Linh
・Sang chu nhat diu dang
・De mai duoc dan anh
・Paradise in your soul
◆<シンチャオ! ベトナム フェスティバル 2009>オフィシャルサイト
◆GYPSY QUEENオフィシャルサイト
◆GYPSY QUEENマネージャーブログ
[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
スペシャル野外ステージSong Hoai Squareで行なわれた<The Opening ceremony>と<Japan Festival 2009>に出演したのが、GYPSY QUEENとベトナムを代表する国民的シンガーであるMy Linh(ミーリン)だ。GYPSY QUEENとMy Linhは、2008年9月に日本で開催されたベトナム・フェスティバルで出会っており、今回は、GYPSY QUEENから出演のオファーをした。
そして、15日の<Japan Festival 2009>では、GYPSY QUEENが6曲、My Linhが3曲を歌った。15日は本番直前に街全体の停電もあり、スケジュールよりも約1時間押しの状態。22時近くになっての出演に、お客さんが帰ってしまうのではないかという不安をよそに、会場は超満員。街全体が、このイベントを、GYPSY QUEENのロックを、そしてMy Linhを待っていたことが伝わる。
GYPSY QUEENのヴォーカルShinonは、14日は青い衣装、そして15日は着物風ドレスで登場した。15日、1曲目はベトナムらしく「Saigon City」。そしてベトナム語と日本語でのMCをはさみ、ベトナム語で「Bon Phuon Trio」。GYPSY QUEENは、海外でライヴをする際に、MCをその国の言葉で行なうことのほかに、必ずその国の言葉で歌う。それにより観客との距離が一気に縮まる。そして、今回初めて海外での彼らのライヴを目の当たりにした私が感じたのは、GYPSY QUEENは海外で化けるということだ。国内でのライヴは、正直あまり広い会場で行なわれない。そこでも、もちろんアジアを感じてはいたのだが、それはあくまでアジアな感じだったことに気づく。実際に国へいくことで、彼らは日本語で歌いながらも、アウェイであるその国のなかに飛び込み、会場をホームに変えてしまう。そういう意味で、GYPSY QUEENは化けると表現したい。
屋外という開放的な空間。Festival、お祭りという解放感。人で埋め尽くされた会場は、昼間のリハの暑さを超えるほどの熱さとなる。「mot minh」では、会場から自然に手拍子がわき上がり、いっそう盛り上がる。ヴォーカルShinonは、ベトナム語と英語、日本語を駆使してMCを行ない、ベトナム語で補いきれない分は「日本語を習っている人、ベトナム語で伝えてください」とコメント。ホイアンは、日本橋(来遠橋)と呼ばれる屋根付きの橋があり、日本と縁が深い土地なのだ。そして、アップテンポな「Alfred&Julia」「フロイト」へ繋ぐ。そして、GYPSY QUEENのラストソングは「Sea line」。言葉は伝わっていないはずなのに、会場はまるで彼らを見に来たよう。音楽という共通言語を感じざるを得ない。
6曲を歌い終えた、Shinonはベトナムの国民的シンガーMy Linhへマイクを繋ぐ。彼女の声には、低音から高音までさまざまな表情がある。深みがあるとか、迫力があるとか、声量があるとかなんて言葉では、表現できない鳥肌感。ベトナムのシンガーは毎日のようにステージに出るという。そういうことからも、鍛えられた声。いや、それ以上に持って生まれた天性のものと言っても良い、聴く者をアクティブにさせながらも恍惚とさせる力がある。会場は自国の国民的シンガーを200%以上の気持ちで歓迎している。
ベトナムでの2日間にわたってのライヴはここで終わるが、ベトナムと日本のイベントは、9月19日、20日に代々木公園で開催される<ベトナムフェスティバル>に繋がる。今回は残念ながらMy Linhは来日できないが、GYPSY QUEENのオファーにより、ベトナムを代表するアーティストが日本で歌う。
今回、GYPSY QUEENと共に旅をし、日本では見られない彼らの姿を見た。なぜ、彼らは海を越えて歌うのか、さまざまな正直めんどくさいことを乗り越えて新しい土地で歌を歌うのか? そして、なぜそれを繰り返すのか? といくつかの疑問が、旅を終えた今、ほんの少しだけ分かった気がする。そのひとつが、音楽に国境はないというが、多くの場合「事情」という言葉で作られる国境。それを彼らは、ひとつずつ壊していく。自分たちの手で、アーティストに直接オファーをすることで、仕事というビジネスライクではない、人と人との繋がりを作っていく。それは、ライヴ後ホーチミンで行なった9月の<ベトナム フェスティバル 2009>に向けての現地シンガーHien ThucやMinh Thuとのミーティングでも感じたことだ。
アウェイをホームに変えて、彼らはアジアで化け続けるだろう。そして今は、その姿を日本へ逆輸入してほしいと切に願う。
Photo by Naomichi Seki
14日セットリスト
GYPSY QUEEN
・Bon Phuon Trio
・Blue sky
My Linh
・Paradise in your soul
15日セットリスト
GYPSY QUEEN
・Saigon City
・Bon Phuon Trio
・mot minh
・Alfred&Julia
・フロイト
・Sea line
My Linh
・Sang chu nhat diu dang
・De mai duoc dan anh
・Paradise in your soul
◆<シンチャオ! ベトナム フェスティバル 2009>オフィシャルサイト
◆GYPSY QUEENオフィシャルサイト
◆GYPSY QUEENマネージャーブログ
[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/