古内東子にみる、middle & mellowなグルーヴ
古内東子の音源の中からミドルでメロウな曲を選曲したコンピシリーズ第2弾『middle & mellow of took furuuchi』の選曲を担当した山崎二郎氏のオフィシャルレビューが到着した。
◆『middle & mellow of took furuuchi』全曲試聴
「私はなんかこう、話すテンポも割と遅いとか言われるんですけど、全体的な気持ちのトーンがそこにあってるのかな。だから聴いてて心地いい。心臓のテンポと大体似てるじゃないですか。あと、音楽はあがるためのものっていうよりは、フワッとドキドキしたいんです。そういう意味では、middle & mellowで、男性の声が一番フワッとくるかなぁ」──古内東子
「Queen of middle & mellow」の称号は、古内東子のためにある。そう断言してもいいだろう。その本人によるmiddle & mellow感が冒頭の言葉。1993年のデビュー以来、12枚のオリジナル・アルバムを通して、弾むような、ときめくような、そして、刹那くなるような感情を伴って、幾多のmiddle & mellowの名曲を届けてくれた。
2008年10月、レコード会社をエイベックス・エンタテインメントに移籍し、実に3年ぶりの素晴らし過ぎるニュー・アルバム『IN LOVE AGAIN』をリリース。シャンプーのCMでは、2005年にシングルとしてリリースされた名曲「Beautiful Days」が流れ、胸は再び高まったのはフレッシュな残像だ。2008年10月にリリースされたmiddle & mellowコンピレーション・アルバム第1弾は、クレイジーケンバンド。リーダーのcrazykenは、古内東子の大ファン。僕が主宰する雑誌「BARFOUT!」で対談をおこなった際、しきりに照れていたcrazykenが印象的だったのを憶えている。となると、第2弾に古内東子がラインアップされるのは、至極当然だと、再び言い切りたい。
今回選曲したのは、2003年から2005年までの楽曲。ポニーキャニオンに在籍し「サヨナラアイシテタヒト」「stay」「Beautiful Days」「コートを買って」の4枚のシングルと、『フツウのこと』『Cashmere Music』の2枚のアルバムの中から、middle & mellowな楽曲を選りすぐってまとめてみました。中でも、CMで使用され、2008年に発表した「IN LOVE AGAIN」に、ニュー・ヴァージョンが収められた「Beautiful Days」のオリジナル・ヴァージョンを収録。聴き比べてみるのもいかがでしょう?また、シングル「コートを買って」のみに収録された、キリンジの堀込高樹が作曲した「somewhere in TOKYO」。珍しく他人に曲を依頼したことでも、貴重なトラックと言えるでしょう。
サウンド、メロディはもちろん、古内東子の魅力に、女性の微妙な感情を見事に掬いとった歌詞にあることは、今さら言わずもがなでしょう。このアルバムに収録された曲からも、きらびやかな光を放つのではなくても、内面を映し出す輝きを魅せるパールのように、素晴らしいフレーズが散りばめています。
<巻き忘れた時計が少し遅れて やがて止まるように 大切なものはいつでも 音もなく壊れていくのね>「stay」
<声さえ聴けたら 伝えたいことたくさんあるよ あなたの描く人生に私はまだいますか?>「OK,OK」
<素顔の方が好きだと言われても 会える日はきれいでいたくて 自分に似合う口紅の色を 探して歩いた、週末の街で何時間も>「サヨナラアイシテタヒト」
<読みかけたままで部屋の隅に埋もれてた 本を読むように今だからこそ広がる世界があるの>「Beautiful Days」
<どんなに走ってもスピードをあげて 風を切ろうとしても 私は結局あの日を追い掛けようとしてるだけ?>「KISEKI」
<鮮やかに光る花びらが 一枚でもなくなりませんように 会いたいのは私だけじゃないと おしえて、おしえて>「ガーベラ」
<洗いたての髪が乾く 信号3つ分を歩く 誰もきっと こんなふうに毎日スイッチ切り替える>「ココロマド」
あ! 夢中で列記していたら、こんなにも。こんなにも素敵なリリック。だけど、言葉だけに偏らない。思わず肩が揺れる、腰が動く、リズムを刻む、middle & mellowなグルーヴがあるからこそ、センチメンタルに陥らない。刹那さに浸りたい自分がいるけど、どこかでラインを引いている。なぜなら明日もまた来るから。毎日はドラマティックじゃないけど、日常は明日も訪れるから。それは決して諦観じゃない。英語はいつだって言い当ててくれる、ブランニュー・デイと。起伏がない1日こそ無味乾燥。アガッテ、サガッテ、アッパーになって、メロウになって…。そんなアップ・ダウンを、むしろ愉しみたい。それを「オトナ」と呼ぶのは、お約束でしょうか?
文●jiro yamazaki a.k.a. jay-brown(DJ / 選曲家 / エッセイスト / インタヴュアー / エディター)
◆middle & mellowオフィシャルサイト
◆山崎二郎、編集日誌ブログ
◆iTunes Store 古内東子(※iTunesが開きます)
◆『middle & mellow of took furuuchi』全曲試聴
「私はなんかこう、話すテンポも割と遅いとか言われるんですけど、全体的な気持ちのトーンがそこにあってるのかな。だから聴いてて心地いい。心臓のテンポと大体似てるじゃないですか。あと、音楽はあがるためのものっていうよりは、フワッとドキドキしたいんです。そういう意味では、middle & mellowで、男性の声が一番フワッとくるかなぁ」──古内東子
「Queen of middle & mellow」の称号は、古内東子のためにある。そう断言してもいいだろう。その本人によるmiddle & mellow感が冒頭の言葉。1993年のデビュー以来、12枚のオリジナル・アルバムを通して、弾むような、ときめくような、そして、刹那くなるような感情を伴って、幾多のmiddle & mellowの名曲を届けてくれた。
2008年10月、レコード会社をエイベックス・エンタテインメントに移籍し、実に3年ぶりの素晴らし過ぎるニュー・アルバム『IN LOVE AGAIN』をリリース。シャンプーのCMでは、2005年にシングルとしてリリースされた名曲「Beautiful Days」が流れ、胸は再び高まったのはフレッシュな残像だ。2008年10月にリリースされたmiddle & mellowコンピレーション・アルバム第1弾は、クレイジーケンバンド。リーダーのcrazykenは、古内東子の大ファン。僕が主宰する雑誌「BARFOUT!」で対談をおこなった際、しきりに照れていたcrazykenが印象的だったのを憶えている。となると、第2弾に古内東子がラインアップされるのは、至極当然だと、再び言い切りたい。
今回選曲したのは、2003年から2005年までの楽曲。ポニーキャニオンに在籍し「サヨナラアイシテタヒト」「stay」「Beautiful Days」「コートを買って」の4枚のシングルと、『フツウのこと』『Cashmere Music』の2枚のアルバムの中から、middle & mellowな楽曲を選りすぐってまとめてみました。中でも、CMで使用され、2008年に発表した「IN LOVE AGAIN」に、ニュー・ヴァージョンが収められた「Beautiful Days」のオリジナル・ヴァージョンを収録。聴き比べてみるのもいかがでしょう?また、シングル「コートを買って」のみに収録された、キリンジの堀込高樹が作曲した「somewhere in TOKYO」。珍しく他人に曲を依頼したことでも、貴重なトラックと言えるでしょう。
サウンド、メロディはもちろん、古内東子の魅力に、女性の微妙な感情を見事に掬いとった歌詞にあることは、今さら言わずもがなでしょう。このアルバムに収録された曲からも、きらびやかな光を放つのではなくても、内面を映し出す輝きを魅せるパールのように、素晴らしいフレーズが散りばめています。
<巻き忘れた時計が少し遅れて やがて止まるように 大切なものはいつでも 音もなく壊れていくのね>「stay」
<声さえ聴けたら 伝えたいことたくさんあるよ あなたの描く人生に私はまだいますか?>「OK,OK」
<素顔の方が好きだと言われても 会える日はきれいでいたくて 自分に似合う口紅の色を 探して歩いた、週末の街で何時間も>「サヨナラアイシテタヒト」
<読みかけたままで部屋の隅に埋もれてた 本を読むように今だからこそ広がる世界があるの>「Beautiful Days」
<どんなに走ってもスピードをあげて 風を切ろうとしても 私は結局あの日を追い掛けようとしてるだけ?>「KISEKI」
<鮮やかに光る花びらが 一枚でもなくなりませんように 会いたいのは私だけじゃないと おしえて、おしえて>「ガーベラ」
<洗いたての髪が乾く 信号3つ分を歩く 誰もきっと こんなふうに毎日スイッチ切り替える>「ココロマド」
あ! 夢中で列記していたら、こんなにも。こんなにも素敵なリリック。だけど、言葉だけに偏らない。思わず肩が揺れる、腰が動く、リズムを刻む、middle & mellowなグルーヴがあるからこそ、センチメンタルに陥らない。刹那さに浸りたい自分がいるけど、どこかでラインを引いている。なぜなら明日もまた来るから。毎日はドラマティックじゃないけど、日常は明日も訪れるから。それは決して諦観じゃない。英語はいつだって言い当ててくれる、ブランニュー・デイと。起伏がない1日こそ無味乾燥。アガッテ、サガッテ、アッパーになって、メロウになって…。そんなアップ・ダウンを、むしろ愉しみたい。それを「オトナ」と呼ぶのは、お約束でしょうか?
文●jiro yamazaki a.k.a. jay-brown(DJ / 選曲家 / エッセイスト / インタヴュアー / エディター)
◆middle & mellowオフィシャルサイト
◆山崎二郎、編集日誌ブログ
◆iTunes Store 古内東子(※iTunesが開きます)
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