BUCK-TICK、夢か現実か……ゴシック様式美を見せつけたツアー、追加公演レポ

ほの暗い照明の中、ステージ後方の中央にそびえる深紅の階段、その横には燭台が並び、天井にはシャンデリアを模した巨大なセットが浮かび上がる。舞台の幕開けを告げるインスト曲「ENTER CLOWN」、ジワジワと暗黒の夢想へと誘うような「降臨」と続く、アルバムと同じ流れのオープニングで一気に現実感覚を引き剥がされる。そして、映画『IT』に登場する不気味な道化師にも似たクラウンが登場、ジャグリングを披露する横でソファに腰をかけた櫻井がニヤリとしながら「そんなもんかい?」と挑発してみせる。コートの裾をゆったりと翻し、美しい旋律の中で両手を宙に泳がせながら歌う「Tight Rope」、マイク・スタンドに妖しく指を這わせて魅せる「誘惑」など、歌声も去ることながら視線から指の先まで圧倒的な表現力を放つ櫻井の存在感を再認識させられる場面だった。

夢なのか現実なのか錯覚に陥らせ、現実のような夢を徹底した様式美で見せつける。それとともに、ヘヴィかつタイトなヤガミと樋口のリズム隊、トリッキーなサウンドを繰り出す今井と、艶やかさと攻撃性を併せ持った星野のギターとの絶妙なコントラストという、不動のメンバーによるアヴァンギャルドなバンド・アンサンブルで聴かせる。これぞBUCK-TICKの“らしさ”を見た気がするステージだった。
文●望木綾子
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