ジェフ・ベック、神々しい来日公演を緊急レポート

ジェフ・ベックがここ最近リリースした3枚のアルバムは、いずれもテクノやダンスミュージックの影響が大きく感じられる作風だった。御大ベックの興味はもうそういう方向に行ってしまって、以前のような曲は演ってくれないのではないかと心配する声も多く聞かれた。それに、6月24日でなんと61歳になったベックに、以前のような演奏が期待できるのだろうかという不安もあり、開演前はまさに期待と不安が入り混じった雰囲気でいっぱいだった。
しかし、そんな心配はすぐに吹っ飛んだ。凝ったセットはなく、ドラムやアンプをただ並べただけのシンプルなステージに、いつものように黒でキメたベックがアイボリーのストラトを抱えて登場しただけで、会場は総立ち。第一線で40年も活躍し続けた者だけが持ちうるオーラというべきか。これには本当に圧倒された。そして1曲目は激しいビートの「Earthquake」。粗っぽく歪んだギターがすごくいい! 古いファンにはそっぽを向かれたアルバムの曲だが、こうして生で聴いてみると、どこをとってもまさにベックならではの素晴らしくカッコいいナンバーだ。この歳になってギターをこんなに激しく、こんなにカッコよく弾けるアーティストなんて、後にも先にも彼一人ではないだろうか。

高速ピッキングのテクニックもすさまじかった。第一部の最後に演奏された「Scatterbrain」では、アルバムよりかなりハイテンポだったにもかかわらず(そしてホールコンサートだったにもかかわらず)、あの難解な高速リフが明瞭に聴き取れた。これには驚いた人も多かったようで、その直後の休憩中には「あんなの弾けねーよ」といった声があちこちから聞こえてきた。

二部構成、約2時間のコンサートは、こうして“伝説のギタリスト”の本当のすごさを見せつけながら、あっという間に終わってしまった。この日はアンコールがキーボードとのデュオによる「Somewhere Over The Rainbow」のみだった(会場によって演目は異なる)ことだけが少し残念だったが、『Wired』や『Blow By Blow』など往年の名盤、最新の曲、そしてジミ・ヘンのカヴァーまで、全キャリアから満遍なく選曲されていて、どの時期のベックファンでも非常に楽しめる内容だったといえるだろう。
photo by Masayuki Noda
■ジェフ・ベック日本公演 2005/7/1 @神奈川県民ホール
●セットリスト
01.Earthquake 『You Had It Coming』['00]
02.Stratus(ビリー・コブハム)
03.You Never Know 『There And Back』['80]
04.Cause We've Ended As Lovers 『Blow By Blow』['75]
05.Rollin' And Tumblin'『You Had It Coming['00]
06.Morning Dew 『Truth』['68]
07.Behind The Veil 『Guitar Shop』['89]
08.Two Rivers 『Guitar Shop』['89]
09.Star Cycle 『There And Back』['80]
10.Big Block 『Guitar Shop』['89]
11.Scatterbrain 『Blow By Blow』['75]
- 10 minutes interval -
12.Beck's Bolero 『Truth』['68]
13.Nadia 『You Had It Coming』['00]
14.Angel (Footsteps) 『Who Else!』['99]
15.Led Boots 『Wired』['76]
16.Diamond Dust『Blow By Blow』['75]
17.Hey Joe(ジミ・ヘンドリックス)
18.Manic Depression(ジミ・ヘンドリックス)
19.Goodbye Pork Pie Hat 『Wired』['76]
20.Brush With The Blues 『Who Else!』['99]
21.Blue Wind 『Wired』['76]
22.People Get Ready 『Flash』['85]
23.Going Down 『Jeff Beck Group』['72]
- encore -
24.Somewhere Over The Rainbow
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