【BARKS編集部レビュー】快楽物質ダダ漏れのVORZUGE VorzAMPduo

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さまざまなヘッドホンや周辺機材を手にしていると、いい音って何ぞや?という素朴な疑問にぶち当たる。テクニカルデータを追ってもそこに答はなく、結局は自問自答の中で己がどう感じるかが全ての答えだというシンプルな結論に達する。ならば、自分がどのようなコンディションであれば良い音を良いと感じ、良い音を心地よいと受け入れているかが最大の焦点なんだなと気付く。最高のオーディオライフを堪能するもうひとつの近道は、自分探しの旅でもあるのだ(←かっこいい)。

◆VORZUGE VorzAMPduo画像

▲VORZUGE VorzAMPduo(ヴォルズーゲ・ヴォルズアンプデュオ)。ドイツの新進気鋭のポータブルアンプブランドからリリースされたモデルで、徹底した品質管理と妥協なきサウンド・デザインを繰り返し、満を持して発表。そのサウンドは噂に違わぬものだった。

…いや、真面目な話、「空腹は最高の調味料」と言われるように、最高の音を堪能できる脳ミソ状態を自分でコントロールできれば…コントロールできずとも状態を把握することができれば、自分にとっての最上と思しきサウンド環境への最短ルートを辿ることができるはずだ。それこそが極上の音楽ライフを楽しむ最強の環境作りであることに疑いはない。目下私の一番の興味対象はそこにあるのだけれど、「音が美味しい!」と脳ミソががつがつと音をむさぼり食っている状態というのは、エンドルフィンやらセロトニンやらドーパミン的なものがダダ漏れしている感覚なので、「この快楽物質をドバーっとお漏らしさせてくれるポイントってなんなの?」が、私にとっての理想サウンド探しのキーワードとなっている。

前置きが長かった割には、結論は未だない。申し訳ない。ただ、現時点で思うのは、耳の食欲を加速させる謎物質分泌のトリガースイッチは意外にシンプルで、私の場合はいつでも一聴だけでポンッとスイッチONになる。あまり細かな必要条件などはなさそうで、一聴して「うわ、いい音!」とか「気持ちいい!」と思えるサウンドは、陰りや劣化なく安定して即効性がある。そんな私にとっての鉄板アイテムをひとつでも多く見つけ出し、それらに共通するポイントはいったい何なのかを探るのが【BARKS編集部レビュー】として続けている当コラムの裏テーマでもある。

▲フロントパネルは、電源スイッチとボリューム、入出力端子、トレブル・ブースト・スイッチ、ベース・ブースト・スイッチが搭載されている。音楽によって、サウンドによって各ブーストスイッチをON/OFFして遊ぶのが楽しい。

▲バックパネルのミニUSB端子は充電用。USB DAC機能は有していない。

▲iPodクラシックと組み合わせたところ。横幅はちょっとはみ出すが手に持った感じに違和感はない。電源を入れた時に光るLEDは白で強烈な高輝度。暗闇では役に立ちそうなほど明るい。

▲ソフトケース(袋)、DOC-ミニケーブル、USBケーブル、開腹用の六角レンチ、取説が付属する。

現時点で、謎物質分泌トリガースイッチを有していると確証を得た必殺アイテムは少ないが、それでも確実に存在する。オーバーイヤーヘッドホンでいえばGRADO PS1000。カスタムIEMであればHeir Audio 8.A、そして今回新たに出会ったヤバいアイテムが、このVORZUGE(ヴォルズーゲ)なのである。

ヘッドホンアンプにもこんな気持ちの良い音を垂れ流す逸品があることを、全く知らなかった。これまでも多くのポータブルヘッドホンアンプは手にしてきたが、どれも分析的な評価をもって、感性よりも理詰めで納得ポイントを整理してきた感がある。「こちらの方が音が良い、なぜならば…」といった具合だ。

でもVORZUGEは違った。「うわ、楽しい!」の一言が全てだ。あるいは「気持ちいいー」であろうか。とにかく明るくてメリハリがあり、気分をハイにさせてくれる陽のサウンドなのだ。誰が何と言おうとこれを使いたい!と思わせてくれる不思議な魅力を振りまいてくれる。

相対評価ではなく絶対評価として「いい音」と即座に言い切れるVORZUGEの音は、自分にとってどこがそんなにすごいのか。「なぜ良いのか」と考えると要素は多岐にわたり混乱を極めるが、「なぜ良いと感じるのか」と思考軸を変えると、意外と答はシンプルで「多幸感にあふれる音だから」と思う。多幸感をもよおすポイントがつかみ切れていないのだけれど、それは「感動の音」という表現が一番しっくりくるところ。期待を上回る結果が感動を呼び起こすこともあるだろうし、高い期待にそのまま応えてくれることも感銘を受ける理由のひとつだろう。

このVORZUGE、冷静に比較をすれば、様々なスペックでいろんな機種に劣るところもたくさんあるかもしれない。一般的に、この音はいわゆるバランスよくニュートラルな音質特性を持った正統派のハイクオリティ・サウンドに区分けされるものだと思うが、でも私の耳には、とにかく熱き血潮がぐりんぐりん渦巻くようなエネルギッシュで突き抜けるサウンドに聞こえる。で、どうやらこの屈託のないパワフルさが、脳汁スイッチをONにするらしい。すべての帯域においてどんな音に対しても熱き温度感を持ってプッシュしますよ、という決意のようなものを感じさせてくれるのは、GRADOが持つぶれない姿勢と合致するところでもある。GRADO PS1000がブッ叩くように低域を鳴らしお祭りのように高域を奏でる、その男気あふれる立ち振る舞いに感服するように、VORZUGEからも理屈なくかっこよく鳴らすぜ、という決意のようなものが匂い立つ。そのサウンドに身をゆだねたいと思う魔性の誘いが、脳汁スイッチONの正体である。

VORZUGEに対しては、惚れた女への視線にも似て、ニュートラルな評価ができていないかもしれない。とにかくキャッチーなサウンドで元気な出音であり、間違いなく体育系だがデリケートな要素は失われておらず、解像度は抜群に高いというくらいしか客観視できていない。圧縮音源はそれなりの再生だが、音源の品質が高ければそれに追従し、ニュアンスを壊すことなくエネルギッシュにディテールを描き出す素養が心強い。適応力が格段に広いということだと思う。

金属でできているボディは、横幅こそiPodより幅広だが、長さは短めでコンパクトなイメージがある。小さなボディーながらはじけるようにメリハリが効いている様子は、トランジスタ・グラマーとでも言いたくなる魅力を放つものだ。サウンドの定位はシャープで寝ぼけたところはない。音源の持つ音空間を適切に作り出してくれるので、高音質音源であれば「濃密ながらすっきりしている」という二律背反と思しき音空間を作り上げる。この表現の器用さは、VORZUGEが並じゃないことを知らしめるところだ。

正統派のサウンドと思われそうだが、決して無難ではなくむしろアグレッシブな表現こそVORZUGEの最大の魅力のひとつだ。実際のところ、育ちのいい中庸な上質系イヤホンを鳴らすと、見事に上機嫌で高テンションなドライブ感あふれるサウンドに一変する。一杯ひっかけちゃったような「え?そんな無礼講な表情見せるの?」みたいな、ちょっぴり破廉恥なトーンが顔を出すのだ。そんな羞恥プレイの恰好の餌食は、SONY MDR-EX1000、FitEar MH334、Westone4…といった素直ないい子たち。ここ、VORZUGE使いのツボどころである。

私が一目ぼれならぬ一聴ぼれしたのはベースとトレブルの各ブースとスイッチが付いたVorzAMPduo(ヴォルズアンプデュオ)というモデルだったが、VORZUGEにはこのスイッチがついていないシンプル&ベーシックなVorzAMPpureというモデルもラインナップされている。VorzAMPpureの音は良く知らないので無責任なことは言えないが、VorzAMPpureも同様の魅力を存分に湛えているものと思われる。ぜひ機会あらばそのサウンドを確かめてみてほしい。日本に上陸した時は「音質の天才」という直球過ぎるキャッチコピーが踊っていたのを目にしたけれど、こうやって実際にその音を使い込んだ今は、ホントのことだったんかいっ!と再認識しているところだ。

text by BARKS編集長 烏丸

●VORZUGE(ヴォルズーゲ)VorzAMPduo(ヴォルズアンプデュオ)
オフィシャルショップ販売価格:60,000円(税込)
・最上級メタルフィルム抵抗器
・最上級メタルコンデンサー
・金メッキPCB
・RoHC エコフレンドリー
・電池持続時間連続約30時間(pure)、26時間(duo)
・寸法・質量:W63,5×H30×D83(mm)、140g(pure)、150g(duo)電池含
・電源リチウムイオンバッテリー:2x1000mAh
・VorzKabelコネクターケーブル(20cm)
・ポーチ
・USBパーワーアダプター(100/230 AC)
・ミニーUSBケーブルAメスーミニーAオス
・保証:1年間

◆VORZUGEオフィシャルサイト
◆VORZUGEオフィシャルショッピングサイト
◆BARKSヘッドホンチャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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