M5:バチェラレット/Bachelorette('97) 自分自身を、愛する人に踏みしだかれる灰の道や、折られてしまう木の枝にたとえたリリックが、ビョークの女としての性や熱情を想起させる濃密な曲。キャッチーとも言えるメロディックなサビが耳を惹く。ラストのアコーディオンの使われ方がクール。 |
M6:アーミー・オブ・ミー/Army of Me('95) ふがいない男への警告ともいえるメッセージが込められた、アグレッシヴなナンバー。ビート使いや、ギターを模した(?)響きを持つ電子音のリフ、そして全編に貫かれているアタック感がとてもロック的で、ビョークのヴォーカルも、どことなく挑発的に聴こえる。 |
M7:ペイガン・ポエトリー/Pagan Poetry('01) まるで琴のような音色で奏でられるオリエンタルなイントロに耳を奪われる、清らかで瑞々しい美しさを湛えたナンバー。脆さと強さを併せ持った、ビョークのエモーショナルなヴォーカルに胸を焼かれてしまう。祈りを捧げるようなエンディングは圧巻。 |
M8:ビッグ・タイム・センシュアリティ/Big Time Sensuality('93) クラブ・ミュージックのような、ビートの効いたミニマルなバック・トラックの中を、自在に泳ぐようにビョークのヴォーカルが絡んでいくダンス・チューン。耳よりも先に体が反応してしまいそうな、フィジカルな快感をもたらすフロア型の1曲だ。 |
M9:少年ヴィーナス/Venus as a Boy('93) パーカッシヴなビートを全面にフィーチャーした、リズム主体のユニークな楽曲。ここで聴けるビョークのヴォーカルは、ちょっと無邪気な少女のようでもある。歌詞でセクシャルな描写がなされていることもあり、彼女の女性性がクローズ・アップされてくる。 |
M10:ハンター/Hunter('98) この曲では、当時シーンを席巻していたドラムンベースにアプローチしていて、今聴くと逆に、とても新鮮に響く。自身を狩りを続けるハンターにたとえ、去っていった男性への想いが綴られている。ストリングスが効果的にフィーチャーされ、ドラマティックな展開に。 |
M11:ヒドゥン・プレイス/Hidden Place('01) 人間の内面の奥の奥へと潜りこんでいくような、神秘的で深遠なムードが漂うナンバー。聖歌隊のようにスピリチュアルでピュアな女性コーラスが、曲に荘厳なヴァイブを加えている。プログラミングには、マトモスというサンフランシスコのユニットが参加。 |
M12:イゾベル/Isobel('95) ホーンのイントロに導かれて、湧き出すように広がっていく大陸的でアーシーなビートが妙に心地いい。途中からは、ストリングスが伸びやかで大らかなサウンド・スケープを描き、優雅に空を舞っているようなイメージを喚起。口笛(?)のエンディングが郷愁を誘う。 |
M13:ポッシブリー・メイビー/Possibly Maybe('96) レコード盤に針が擦れるノイズのような効果音を含め、バック・トラックが極めて音響的。緩やかなリズムの隙間を埋めていくエレピが美しく、曲全体を淡いロマンティシズムが包んでいる。“POSSIBLY MAYBE PROBABLY LOVE”と繰り返す歌詞は、恋する女心を捉えている。 |
M14:プレイ・デッド/Play Dead('93) より歌に焦点が当てられたアップ・チューンで、ビョークの卓越したヴォーカリゼーションを聴くことができる。ゆっくりと高揚しながらクライマックスに達る、魂の叫びのような歌声は感動的だ。歌詞は“死を演じる”しかないという、苦しみと痛みに満ちたもの。 |
M15:イッツ・イン・アワ・ハンズ/It's In Our Hands('02) ラストは、シングルとしてもリリースされる新曲。多彩なビートを前面に押し出したナンバーで、曲間には手拍子が打ち鳴らされ、温度感を増していく。エレクトロニックなのにオーガニックという、『ヴェスパタイン』で確立された世界観を凝縮したような1曲。 文●鈴木宏和 |
ジャケットは収録アルバム(M14は日本再発盤に収録) ()内はシングル発売年 |