――新作へのヴィジョンなどはあらかじめどのように考えていたのですか?
プレストン(Vo):僕らは常に曲を書いているんだ。新しいことに挑戦したいし、そのために次々といろんなアイディアが浮かんでくる。だからアルバムを作るということにもそれほど特別な構えみたいなのを持たないね。題材なんて身のまわりにいっぱいある。友達と会って話したことがテーマになったりするしね。
ウィリアム(G):曲を作ることはちょっとしたセラピーみたいなもんなんだ。自分にとってもそうだし、バンドにとってもなくてはならない日課みたいなものかな。
――制作中、評価の高かった1stアルバムに対する意識はなかったですか?
プレストン:もちろんあれと同じようなものを作ることは簡単だったよ。ああいう路線を求められているのもわかっていたしね。でも、僕らはレベル・アップした、まったく違うものを作りたかったんだ。僕らはいろんな文化を取り入れることが好きだから、自分たちで聴いていて楽しく刺激的と思えるものが作れたら自然といいアルバムになると信じていたよ。同じものを作ったって何より自分たちがつまらないし、自分たちがつまらないものをファンが面白いと思えるはずがないじゃないか。
――レベル・アップというのは具体的にどういう感覚なのでしょう?
プレストン:自分たちがより誇りや自信を持てるようになったってことかな。やりたいことを現実にすることができるようになったというのも一つの目安かもしれない。
ウィリアム:1stの頃も、この2ndのようなことをやってみたかったんだ。でも、まだあの頃は表現力や技術が追いついていなかった。僕らはレゲエ、モータウン、ソウルが大好きだ。でも、リスペクトしているからこそちゃんとやれるようになるまで手を出さないでおこうって思っていたんだよ。
――レゲエもモータウンもソウルも黒人音楽で、ある種の“レヴェル・ミュージック”だと思います。黒人音楽の持つそうした精神性みたいなものにも共感しているのですか?
プレストン:もちろんそうだよ。音楽は反逆の証明だとも思っているからね。僕らは音楽にファッションやトレンドがあることが大反対なんだ。多くの人には聴いてもらいたいけど、そのために自分たちがやりたいことを曲げたり押し殺して今風の音楽にするなんて言語道断。そういう意味では僕らは自分の情熱を何よりの反逆の武器にしたいと思っている。
――ただ、あなたがたは現代の2トーンを目指したいという発言もされています。2トーンは当時のイギリスの最もヒップな音楽もであったわけですが、ポップ・ミュージックである以上、時代性に左右されてこそ面白い、という部分もあるのではないですか?
プレストン:その通りだと思う。実際2トーンのバンドはお洒落だったしね。でも、2トーンは単なる流行のムーヴメントじゃなかった。それよりも勇気のある音楽を試みていたと思うんだ。'70年代のグラム・ロックやハード・ロックに対するアンチ・テーゼのようなところで、ストリートの若者が一つになろうと提示したのが2トーンだった。僕らはそういう部分を見習いたいと思ってるだ。
――一方でほとんどの黒人音楽にはグルーヴィーなダンス・ミュージックとしての側面もあります。オーディナリー・ボーイズの音楽にも、有無を言わせずリスナーを踊らせる部分があると思っていますか?
ウィリアム:もちろん。僕らの音楽は何も考えずに踊れる音楽だと思う。でも、歌詞をじっくり読んでもらえればわかるけど、深みのあるものにもなっていると思うんだ。その両方を合わせ持つ音楽が理想だから、そういう意味では今のオーディナリー・ボーイズは自分たちにとっても理想にかなり近いと思うよ。
プレストン:今の若いバンドは歌詞をないがしろにしがちだね。昔はみんな人種差別や失業問題などを歌詞にしていた。僕らもそこで勇気を持って自分らの意見として発信していきたいんだ。どんな人種も世代も最終的には人間である以上、同じなんだよ。僕らは“キミと僕がどんなに違うか”ってことよりも、“どんなにみんな同じか”ってことを伝えていきたい。世界はみんなで一つになれるんだってことをね。
――ええ。ただ、あなたがたは今もそうですがフレッド・ペリーのシャツに細身のスーツというトラディショナルなモッズ・スタイルに身を包み、洋服でも他の連中と違う一つの主張をしているように思えます。そういう指摘にはどう答えます?
プレストン:まあ、確かにそう思われても仕方ないだろうね。でも、僕らは最終的に長髪の連中やオアシスを真似たようなスカーリー・ルックの連中とかとも一つになれる自信があるんだ。大事なのは、自分の意見を相手に伝え、相手の意見を聞き入れることができるかってこと。僕らは意見の違う連中との交わりの方がずっと好きだ。同じ意見、同じ趣味の連中と傷を舐めあうより、まったく意見が異る人と熱く議論していくことの方がずっと面白いしやり甲斐があることだろう? だから、モッズっぽい格好をしてないからオーディナリー・ボーイズのライヴには行けないなんて思わないでほしいね。僕らはいろんなリスナー、ファンと意見を交換したいと思っているから。ついでに言うと、イギリスも民主党支持者と労働党支持者はもっともっと話し合いをすべきだと思っているんだ(笑)。それと同じだね。
取材・文●岡村詩野
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『ブラスバウンド』 ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-12100 \1,980(tax in) 1. ブラスバウンド 2. ボーイズ・ウィル・ビー・ボーイズ 3. ライフ・ウィル・ビー・ザ・デス・オブ・ミー 4. サンクス・トゥ・ザ・ガールズ 5. オン・アン・アイランド 6. ワン・ステップ・フォワード(ツー・ステップス・バック) 7. スカル & ボーンズ 8. ドント・リヴ・トゥー・ファスト 9. ルック・ホワット・ユー・ディド*Bonus Track 10. コール・トゥ・アームス 11. ア・フュー・ホーム・トゥルース 12. ルディーズ・イン・ラヴ 13. KKK 2005 *Bonus Track 14. レッド・レター・デイ
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▼Live In Japan 2004.6.19@Shibuya DUO(Digest)
●サイン入りTシャツ(応募締め切り:2005年7月15日)
●ジ・オーディナリー・ボーイズ オフィシャル・サイト(ワーナーミュージック・ジャパン)
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