| ――ニュー・シングル「イッサイガッサイ」と“くLabel”のスタートがほぼ同時というわけで、新たなタームの始まりを感じさせますが。
KREVA:そうですね、まさしく2ndシーズンって感じです。ただ、レーベルに関してはまったくヴィジョンなんて考えてなかったですね。SONOMIをやりてぇな、彼女のアルバムを作りてぇな、と思ったのがきっかけではあったんですけど、俺としてはそんなに興味があったわけじゃないんです。スタッフからも“自分のレーベルっていいんじゃない?”って勧められてたんですけど、これまではやりたいことはやれてるしって思ってたんです。でも、ちょうどSONOMIのアルバムを出したいって思っていた頃に、じゃあ、レーベルもやる?みたいな感じになって。それでスタートしました。でも、もうSONOMIの次の作品も出るんですよ。レーベル・コンピなんですけどね。俺も参加するし、竹内朋康のマボロシとかアルファとかが入るかな。6月20日の“くLabel”祭ってイベントがあるんで、そこで先行で売ります。なるべく直接お客さんに届かせたいんですよ。
――レーベル運営についてはどの程度かかわっているんですか?
KREVA:スタッフや仲間みんなでやってる感じですね。まあ、俺自身はCDが出る過程の8割までが関わってますけど。ただ、やっぱりもう少し前で(ミュージシャンとして)張っている部分もないとなっていうのは思っています。そこらへんのバランスは十分考えていきたいですね。ただ、俺としては、今普通に自分の作品をメーカーからいい形で発表出来ているわけで、そこにおいては満足しているんですよ。“お宅の娘さんにはちょっと聴かせられないです~”みたいなものを“くLabel”でやろうかな、みたいな気持ち。まあ、“くLabel”は特上寿司、KREVAはトロづくしみたいなもんですね(笑)。
――明確に分けていく、と?
KREVA:いや、それは自然に任せて。でも、こないだ俺のイトコが“ウチの子供が、マネして<なめさせたい>とかって言うんだよ”って言ってきたんですよ。こっちは“しまった~”みたいな(笑)。毒を吐いちゃったか~って。そういう毒の部分が自然と“くLabel”の方に向かえばいいなって思いますね。ただ、俺は社会には毒を吐いてない。社会に向けて怒りを、みたいな気持ちにもならない。どちらかと言えば音楽は最終的にハッピーなものの方がいいと思ってるんで。みんながピース!するような感じですね。
――「イッサイガッサイ」は、まさにKREVAさんの音楽ハッピー指向が出たチューンですよね。
KREVA:そうなんですよ。『新人クレバ』(前作の1stソロアルバム)は毒:半分、ピース:半分って感じでしたけど、この曲は毒なんてないですよ、ゼロ! 本気で考えていることなんですけど、10年後くらいにスタジオ・ジブリの映画のテーマ・ソングを頼まれるくらいなところに行ければいいなって思ってるんですよ。
――ええっ? それは意外。
KREVA:いや、俺、本気で久石譲とか大好きだもん。ああいう音楽っていいなって思いますよ。そこが2ndシーズンの前に気づいたところですね。あとは、音色部分に自覚的になってきたってことも大きいですね。『新人クレバ』を作った後、次々と“この感じ、いいなあ”って思える曲が出来てたんですよ。で、それらを聴いてみると、一つの統一感があったんですよね。毒がなくて、ずーっとピースな感じで聴ける音っていうか。それがセカンド・シーズンですね。ただ、この「イッサイガッサイ」に関して言えば、まさに去年の真夏に録ったんですよ。これから夏をイメージした曲とか夏向けな曲とかがいっぱい出てくると思うんですけど、この曲は実際に夏に書いて、夏に録った曲。そこが他と一線を画していますから(笑)。
――歌詞もかなり実生活に則した内容ですね。
KREVA:そうです。全部が全部そのままじゃないけど、リアルとリアリティとの境目はあってドアもあるけど、ドアは開いてる感じ。行き来自由って感じですね。それに去年の 夏、この曲を作っている時に気づきました。
――じゃあ、去年の夏には既に2ndシーズンの第一歩が何となく始まっていたことになりますね。
KREVA:そうですね。あくまで無意識ですけど。……あ、今すっげえいい発言思いついた。なぜ去年の夏にそう気づいたか。“夏が俺にそうさせたんですよ”(笑)。まあ、冷静に考えたら、1stアルバムで自己紹介がすんで、それで次に外に気持ちが向いたんでしょうね。これも無意識ですけど。あと、ヒップホップのリスナーがちゃんと俺の作品を聴いてくれてた、というのが『新人クレバ』でわかったっていうのが大きいですね。すっげぇ嬉しかったんですよ、それが。そういうのが一つの自信になったり、次に進ませてくれたのかもしれないです。
――でも、「イッサイガッサイ」はヒップホップ・マナーな方には向かってないですね。
KREVA:2ndシーズンの方が、サウンド面でドラマティック5割増しって感じですね(笑)。まあ、「イッサイガッサイ」は最初の最初なんでまだ何とも言えないですけど、(カップリングの)「all day, all night」が一番新しい曲で録音も最近なんですよ。やっぱりドラマティック路線になってきてるでしょ。あと、そうだなあ、今年1月にSONOMIのアルバム(『S.O.N』)と俺の作品を同時にレコーディングしてたっていうのも大きかったのかも。歌モノを自然な展開の中で出てきて、俺の作品にもフィードバックされてきたのかもしれないですね。
――歌モノを許容できるようになってきたと。
KREVA:いや、もともと持ってたんでしょうね。俺の引き出しの一つとして。これから自分でも気づいてなかった引き出しが開かれていく可能性いっぱいありますから。次のア ルバムではそのあたりがきっと出てくると思いますよ。
インタヴュー・文●岡村詩野 |
|